5.

「えっと、つまりは何かもよく分からず連れてこられたってことだよね?小坂に」


「はい」


目の前の異色の光景に戸惑いを隠せない。

オレンジ色のつなぎを着た人が10人いるかいないかくらいいて、

段ボールの山とペンキの山で溢れている。

掃除が大変そうなくらいに段ボールの切りくずが落ちていて、部活動なのかはたまた遊びか何かなのか全く状況が追い付かない。


「私たちは学園祭の有志隊、私は副責任者の渡瀬千奈。聞いたことない?学園祭有志。一応毎年掲示板に募集ポスターも貼ってるし部活動宣伝にも参加してる」


学園祭有志?聞き覚えのあるようなないような。

記憶を辿るとそういえば去年学年集会で学園祭有志の活動報告とか聞いたような気もした。


「学園祭実行委員会とは違うんですか?」


「うーん、ちょっと違う。あの人らは私たちが手の回らない警備とかそういう簡単な仕事を当日に手伝ってもらうだけだから」


「ふぅん...」


状況が理解できてパニックに陥ってた思考が徐々に戻る。

それと同時になぜ私がその学園祭の有志隊の活動の場に連れてこられたのかという疑問が脳内で飛び交う。


「みんなが大好きなミスコンテストもミスターコンテストも部活動のステージ発表が十分な環境でできているのも私らのおかげみたいなところあるのに、あの人ら私たちの存在しらずに自分らが学園祭の風吹かした感だしてくるんだもんー」


そう言いながら笑う目の前の渡瀬さんは、目がちっとも笑ってなくて。

自分の”学園祭有志”という存在に誇りを持っていることと、自分たちの活躍を誰にも知られないことに対する悔しさや憤りが入り混じった何かを一瞬で感じた。

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