4.
気づいたら第二校舎をでて、第1校舎に向かっていた。
彼が何をしようとしているのか全く見当もつかず、
前を歩く私より広い背中を見ながらついていくように歩くだけ。
授業が終わった第一校舎は人もまばらで、帰り際の人が多い。
部活動に励む声や帰る生徒の声がどこからか聞こえるけれど、
なぜだか耳に入らなくって私と彼が”どこかに向かって歩いている空間”はどこか静かに感じた。
「着きましたよーっと。お疲れ様ですー」
ガラッと大げさなくらいに大きな音を立ててドアを開け教室に入っていく。
私は入っていいのかとためらいながらチラリと開けっぱなしのドアから中の様子を覗く。
作業着を着た男子生徒と女子生徒が数人いる。
スマートフォンで音楽を流しながら、絵の具やらペンキを使い、目の前の段ボールを色づけている。
自分が来させられた場所は全く分かんないけれどその光景に嫌な予感がした。
「あれ、入局希望者?ちょっとー小坂君やるじゃんっ!」
私を見た瞬間、目を輝かせて私に駆け寄る。
長い髪を一つにまとめてオレンジ色の消防隊のようなつなぎを着た女子生徒。
その一声に反応するようにその場にいたオレンジのつなぎを着た全員が一斉にこちらを見る。
「え、っと...私はこの人に連れてこられてなにがなんだかわからない状況で...」
チラッと小坂を見ると、彼はニヤリといたずら気に笑い私の腕をぐいっと引っ張る。
「同じ部活の幽霊部員の先輩です。暇そうにしてたので勧誘してきました」
勧誘じゃなくて連れてきたの間違いでしょと心の中でツッコミをいれて睨む。
その様子を見ていたオレンジのつなぎたちがクスクス笑う。
「あんた、コミュ力というか行動力というか...いろいろどうかしてるわ」
本当だよと心の中で軽く35回は頷いた。
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