【静かな闘志】(6)
立花の網膜投影スクリーンに警告表示が現れる。シールドが刻々と削られ始めたのだ。
「こっちのガス欠を待ってたな! 嘗めやがって!」
溜まった疲れが一気に弾け、激しい怒りへと変わる。
浩介が未来予知を発現しているのは中学時点で知っていた。未来予知継続時間、インターバルも。向こうからすれば接近し、その特性からすぐに制圧か戦闘不能に追いやれれば勝負が決まる。だから近接に備えてEAを行使しようと身構えていたのに距離を取ったのは正直驚いた。何故なら
レビテーションは物体を浮かせることに長けたEAだ。世間では
俺は能力差が分からない程、愚かではない。お互いに小中を共にしてきた顔馴染み。相手が保有している能力の概要は何となく理解できる。それは対戦相手である浩介も同様だ。
しかしセオリーから外れた戦い方。
……最初から長期戦を狙っていた。能力特性を無視した戦略。
ましてや自身のEAを熟知しているのなら猶(なお)更(さら)だ。
同時にこれは屈辱だ。それほどまでに弄(もてあそ)ばれているのだ。
「……まだだ。俺はまだやれる」
自身を鼓舞するために言葉にして呟いてみる。緩慢な動きになったブロックに弧を描くよう、壁裏に向かって飛翔させる。この一撃が俺にとって最後の一撃。
レビテーションに限ってではないがEAは使用時間に比例して倦怠感・疲労が増していく。アビリティレベルに応じて使用時間も左右される。残念だがレベル一は連続使用時間が五、六分とかなり短い。満身創痍なのだ。
コンクリート壁手前で四方に分け、意表をついてぶつけにいった。
もちろん相手からすればコンクリート壁の死角からの突然の強襲で反応が遅れる場面になるはずだ。
しかしそうはならなかった。
タイミングを合わせたかのように後方へ避ける。既に発動している透視によりブロックは透過して視られていた。さらに機敏な動きを欠いたブロックの回避自体は容易のようだ。
四つのブロックはレビテーションで浮遊しているが、効力が落ちている為か、半ば重力に従って落下し、砂煙を上げて砂上に転がった。
それを最後に、脱力するように片膝を付いて呼吸を乱す。さながら潜水を行ったようだ。
まさにこれ以上の力は行使できないことを意味していた。
ただ俺はシールド耐久値がジリジリ削られるのを何も出来ず、見届けるしかなかった。
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