SPEEDSTAR開幕戦 R20 甲州街道レース

放送部 スタート前トーク配信

 『さあ、始まりましたSPEEDSTARRecods主催しゅさい、SPEEDSTAR 2078シーズンの開幕戦、国道20号・甲州街道こうしゅうかいどうレース。実況は私、マイケル松本まつもとと、元・SPEEDSTARSの角田真也かくたしんや、そして、レーシングギアデザイナーの井村未羽いむらみうが務めさせていただきます。みなさま、よろしくおねがいします』


 『よろしくおねがいします』


 『よろしくおねがいしまーす!』


『そして、現場には今年も変わらずリポーターとして山本イツキさんが行ってくれています。イツキさーん?』


『はーいイツキです、今年も張り切って現場から状況をお伝えします!』


『ありがとうございます。さらに!今回は開幕戦ということで、途中、第6戦のレースメイクを担当されています、黒江くろえフミカさんをお招きして、第6戦のレース内容の発表も予定しております。こちらはお昼頃を予定しておりますので、皆さん聞き逃しのないようお願いします』


『いやー今年の第6戦がどんなレースになるのか、我々も知らされてませんからねえ、注目ですよ?』


『はい、ということで今年もこの季節がやってきましたね〜角田さん。今年も新チームの参戦がいくつかあったということで、あの、元SPEEDSTARSのサラ・アニーラが戻ってくるというニュースもありましたが、今シーズン、どう見ますか?』


『いやー難しいですねえ。SPEEDSTARは毎年新しいスターが生まれているといっても過言ではないくらい、順位の入れ替わりが激しいですからね。そういった意味では、二年連続で年間チャンピオンを決めた数少ないチームであるスワローテイルの中核メンバーがこの舞台に戻ってくるというのは、非常に注目ですよ?』


『今我々の手元には、2078シーズンの予選ランキングを集計したデータがあるんですが、昨年の優勝者であるKRCのニック選手、テイル選手が両名ともにトップならずということでね、今年も大波乱が予想されるわけですが。井村さん、注目の選手はどなたでしょう?』


『そうですねー、サラ・アニーラは当然、ブランクもありますから、どの程度追い上げられるのかが気になります。しかし、なんと言ってもランキング上位に突然現れた新星、五十嵐ノア選手をようするチーム五十嵐エンジニアリングは注目ですね!こちらは今シーズンから新たに参戦するチームですから、事前情報がない分、どんな走りをするのかに期待ですよ!さらにいうと、メンバーのカノンさんがランキングトップに輝いた大躍進だいやくしんのA-4T、チームメンバー全員が4種目以上で10位以内にランクインしているチームインフェルノ ICEBREAKの人たちも気になりますし、見どころ満載って感じですね!』


『まあ例年、この予選の総合ランキングはあんまり当てにならないですからね』


『いい意味で、予想を裏切られる素晴らしいレースが毎年繰り広げられていますからねぇ』


『と、言うわけなんですが、おっと、準備が整ったようです。それではここで、去年のプレイバックをご覧頂きましょう』


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『さあ昨年、2077年シーズン開幕戦、甲州街道レース。序盤は前年の優勝チーム、KRCが引っ張りますが、バイパスを高速で飛ばす選択をしたことが裏目に出て燃料が足りずペースダウン。そのスキを待ってましたと言わんばかりに高速走行を得意とするクロスラインBCが大きな差をつけてリード、そのままゴールとなりました』


『続く第2戦、R1南下ラリーでは、KRCがセッティングを見直し、大半がバイパスでの高速巡航勝負となるDAY1,DAY2を攻略。トップで終えます。初戦でトップだったクロスラインBCはウェイトハンデに加えランダムウェイトも最も重たい5kgを引き、下位に沈みます。最終日のDAY3、このままKRCがトップでチェッカーを受けるのか!?というところで、地道に追い上げてきていた去年が初参戦のチーム、ホークマテリアルが午前中で並び、午後の最終セクションで見事KRCを攻略。参戦後初めての優勝を飾りました』


『第3戦の日本縦断サンセットラリーは日の出とともに太平洋側、熱海港あたみこうを出発し、各チームは大きく分けて上信越を通る上まわり、安房峠あぼうとうげをつっきる直線、東名、名神を通る下まわりのいずれかのコースを選んで石川県の千里浜ちりはまを目指します。毎年選ぶコースによって天候などの条件に差が出るこのレース。スタート直後、ルートに関する混乱などがありましたが序盤、安房峠で大幅ショートカットを狙った峠が得意なチーム、KRC、LOVE&TURN、チームインフェルノが大幅なリードを築きます。しかし、愛知県経由の下まわりがとにかく速かった。クロスラインBC、celestyleが得意の超高速巡航で火花をちらし、直線組と30分もの大差をつけてゴール。celestyleがトップでチェッカーを受けました。’75、’76シーズンともに2シーズン連続で直線ルートを選んだチームが勝っていましたが、昨年は比較的平坦で最高速度を維持し続けられる下まわりを選んだチームが勝ちました』


『第4戦、第5戦はながーいラリーが2つ続きます。1WEEK開催の第4戦、R4 東北ラリーはなんと、東京と青森を往復します。前半の往路ではチームA-4Tが最も重たいランダムウェイト5kgを積載した状態で、2位以下に15分の大差をつけて青森入り。他のチームのメカニックは休息日きゅうそくびのDAY4、ずっとチューニングに追われていました。そのかいあってか、復路が始まるDAY5、午前中で往路4位だったRAYLINE Team STYNGRAYが午前中でトップと16分あった差を縮めきると、そのままぶっちぎりでDAY5を終えます。しかし、DAY5終了直後、ギアに負荷をかけすぎたのが裏目に出たか、ギアの発電用モーターから発火。走行不能と判断され、リタイア。ランナーの池上いけがみコウタは悔し涙を流します。結局、チームA-4Tが他のチームの追撃をなんとか防ぎきり、ビックポイントを獲得することとなりました』


『同じく1WEEK開催の第5戦。やっと青森から東京へ帰って来たと思ったら、次は北海道一周ラリーです。ここでは地元のチームDIVA concept SSRがトップを走りますが、2位のチームインフェルノが勝ち抜けを許しません。更に、3位のKRC、4位のcelestyle、5位のホークマテリアルと団子状態になり、順位を少しずつ入れ替えながらDAY6まで走ります。事態が動いたのは最終日のDAY7、チームDIVA concept SSRが更にペースアップ。どこにそんなエネルギーを残してあったのかという驚愕きょうがくの走りで逃げ切りみごと勝利します』


『そして第6戦。こちらは毎年開幕戦でその内容が発表される企画モノとなっていまして、後ほど今シーズンの内容発表があると思いますが、昨年は群馬、栃木を舞台にした日光、草津の旅というテーマで1DAYレースが開催されました。高原道路と峠道とをうまく配合したコースで、各チーム大きく差を開けることなくなんと10チームが5分以内に収まる団子状態。しかし、群馬、栃木といえばKRCという代名詞を証明するかのごとく、KRCがギリギリのところで草津温泉に滑り込みトップチェッカー。こちらは毎年恒例の第6戦レースアフターとして、草津温泉を観光するランナーたちの姿を見ることのできる番組を特別配信中です。是非チェックしてみてください』


『さて、話をレースに戻し、ここからはポイントハンデが軽減されていきます。第7戦では今まで獲得したポイントに応じて載せられていたウェイトハンデが半分、ということですので、今までウェイトで苦しんでいたチームが、徐々に元気を取り戻していくということになります。その第7戦。四国一周ラリーということで、ここまで比較的高速巡航を得意とするチームに有利なレース展開となっていましたが、ここで一気に様相が変わります。大きなバイパスなどが少なく、市街地や山道がふんだんに組み込まれたルートに各チームとも大苦戦。celestyleは急減速、急加速が続きギアに負担がかかりすぎ、やむなくリタイア。そんななか、徳島出身のランナーを有するLOVE&TURNが地の利を生かしてトップでチェッカー。参戦後通算10勝目を上げたランナーの久保村くぼむらアイナ選手がレース後に見せた涙が印象的でしたね』


『そして迎えた最終戦。九州を縦断する400kmのラリーです。2DAYで開催されるこのラリー、毎年多くのドラマが生まれてきました。ポイントウェイト、ランダムウェイトはともに0に。ランナー全員が開幕戦と同じ、ベースウェイト5kgのみを積んでの開催となります。そして、年間チャンピオンシップのポイントランキングでは、KRCがトップ、2位にホークマテリアル、3位にLOVE&TURN、4位にcelestyleという順で並びます。4位まではチャンピオンの可能性を残している状態でのスタートとなりました。運命のDAY1、第2戦で優勝を飾ったホークマテリアルが順調な走行を見せ、トップに躍り出ます。しかし、優勝のかかったKRCも黙ってはいません。どちらかというと馬力のあるニック選手にウェイトを多めに積むことで、選手感の差をなくし、二人でうまく弱点を補いながらホームマテリアルに食らいつきます。ホークマテリアルが逃げ切るのか!?KRCが逆転するのか!?注目のラスト20km、激しい追い上げを防ぎ続けたため、ホークマテリアルのアミリ選手が荷物を落としてしまいます。KRCはこのミスを見逃さず、逃げ切りを図り、見事、2077年シーズンを制することになりました』


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『いやー思い返してみると、年間チャンピオンであるKRCですら、シーズン通してトップは2回だけなんですね。SPEEDSTARで優勝することがどれほど難しいのか、わかりますねえ角田さん』


『いやーほんとにそうですよ。最近のSSRは特にギアの高性能化もあって、高速巡航だけでも180km/hなんかで巡航してたりしますからね。私が飛脚をやっていた頃とはもはや別次元のレースと言っていいと思いますよ?』


『そうですか。そんな魅力たっぷりのSSR、SPEEDSTARのレースなんですけれども、今年から見始めた、いや、最近知ったなんてかたもおられることでしょう。そこで!本日はSSR開幕戦恒例のルール説明を特別に、今季注目のあの選手をお招きして行いたいと思います!いやー誰が来るのかな?楽しみですねぇ井村さん!』


『あ、あの特徴的なピンク色の髪の毛は…!?』


『はい!ということでね。少々フリが強引だったかもしれないですけれども。改めまして、本日はスペシャルゲスト、元・スワローテイルのメンバーで2度に渡りSPEEDSTARSに輝きました、今季はチーム天城ロータリーとして再参戦されるサラ・アニーラ選手にお越しいただきましたー!!よろしくおねがいします』


『はい、よろしくおねがいします』


『サラ選手、レース直前の忙しいときにわざわざ時間を作ってくださりありがとうございました。できるだけ手短に、SPEEDSTARの特徴的なルールを説明していただきたいのですが』


『わかりました。えっと…なにから話したらいいかな?』


『では、SSR一番の特徴であるギアとそのレギュレーションの話からお願いできますでしょうか』


『わかりました…コホンッ、SSRは世界でも珍しい、ギアと呼ばれるローラースキーのようなものに動力源を積んだ、単身走行ユニットをもちいて競われます。使われるギアには発電用にエンジンを積んでいるものやスケートボードのように横向きに乗るものなど様々ありますが、一番の定義は荷物を積んで一般車両が通行困難な地域にも荷物を届けることができる単身走行ユニットというのがしっくりくるのではないでしょうか』


『そうですね』


『そして、SSRに参戦できる車両規制に関してなのですが、これが実は特にありません。例えば私はレンジエクステンダーとしてロータリーエンジンを積んだギアを使っていますが、私の今季の相方はレンジエクステンダーを積んでいません。さらに、L&Tの人たちなんかは横乗りですもんね。とにかく、飛脚に使われるようなギアであればどんな形でも、最高出力がどれだけあろうが関係ありません。そこに関する規制はないからです』


『いまさらっとすごい情報が出てきましたよマイケルさん…』


『サラだけにって、ちがうか』


『でも、何でもかんでもOKじゃ、レースにならないですよね?なので、SSRには大きく分けて2つの実質的車両規制があると言ってもいいと思います。1つ目が積載規制。これはSPEEDSTARのレースの勝敗判定にもおおきく関わってきますのであとから説明しますが、要するに荷物をある程度積める必要があるって感じです。2つ目は、エネルギー制限。SSRはこれによって実質の出力制限を設けているといっても過言ではないのですが、レース距離に応じて使っていいエネルギー量の上限が決まっています。レース距離20kmごとに燃料であれば1L、電力であれば5kwhの使用が認められています。今日のレースは200kmレースなので、燃料であれば10L、電力であれば50kwhの使用が認められている、というわけですよね、角田さん』


『そういうことです。これにより、例えば昨年の開幕戦でKRCがペースダウンを余儀なくされるなど、持ち込まれるギアごとの性能格差を総合的にならしています。速く走ればその分エネルギーを多く使うので最後になってガス欠にならないためにもエネルギーをセーブしながら、常に走り切るためのエネルギー残量を計算しつつ走る必要があるんです。なので最近はほぼ標準の出力なんかが見えつつありますよね?井村さん』


『そうですね!最近のトレンドとしては瞬間最高80〜90PS、平常時高効率運転で40〜50PSくらいがベストだという流れがあるみたいですけど…サラさんのギアはどうなんですか?』


『そこはちょっと言えないですけど、まあそんなもんだと思っていただいても差し支えはないってところですかね』


『ちなみにですが、このエネルギー規制が燃料、電力両方の表示があるのはサラさん、どういうわけなんでしょうか』


『これはですね、私の相方のようにエンジンを積載しない飛脚にも同様の制限を課すという目的が一つ。そしてもう一つは燃料タンクの容量の問題で、あまり多くの燃料を積載できないギアや、戦略的に燃料を減らしたいというチームのために、バッテリーと燃料タンク、両方を柔軟にエネルギー源として使用できるようにすることで、戦略の幅を広げようという目的があるようです』


『なるほど。では、次にSPEEDSTARのポイントシステムやウェイトハンディ、ゴール認定条件などについてお願いします』


『はい。まずはゴール条件について話したほうがわかりやすいかな。SSRではただ速く走るだけではゴールしたことになりません。レースに出走する選手は、各自ベースウェイト5kgの荷物を最低限積載してスタートします。さらに、ここに獲得したポイントに応じて課されるポイントウェイトが最大で10kg、そしてレースごとに抽選で決まる最大5kgのランダムウェイトが加わり、シーズン中、一人あたり最高で20kgの荷物が課せられます。この荷物を、少しも欠けさせることなくゴールまで運ぶことで初めてゴールしたことになります』


『このウェイトがシーズン後半になるとどんどんと効いてくるんですよね』


『そうです。ただ、ランダムウェイトに関しては重ければ重いほど無事ゴールしたときにもらえるポイントにボーナスが付くので、一概いちがいに苦しい一方ではなく、大逆転のチャンスでもある、といえますね』


『昨シーズンもランダムウェイト最大を積んだチームがトップでゴールして大量得点、なんてシーンも有りましたねえ』


『そういった意味ではSSRはこの荷物を運ぶことこそが目的のレースと言えるかもしれません。面白いのは、この荷物、同じチーム内だと誰がどれだけ運ぶかの配分も戦略というところですよね。ウェイトに関しては、そのレースに出走するチームメンバーの数にベースウェイト、ランダムウェイト、ポイントウェイトの3つの合計を掛けた重量がチームに課せられます。私のチームを例に上げると、もしすべてのウェイトが最大だった場合、私のチームでは二人なので合計40kgのウェイトを運ぶことが要求されるんですね。しかし、それを私だけで40kg運んでもいいし、相方と20kg,20kgで分け合ってもいい。大切なのはゴールまで荷物を運ぶことなんですね。ただし、荷物を分け合った場合、すべての荷物がゴールラインを超えてからゴールということになるので、私だけが20kgをもってトップでチェッカーを受けたとしても、相方が一番うしろでゴールすると、私達の順位は最下位ということになります』


『そのあたりの戦略も、SSRの見どころのひとつですよね』


『もしチームメンバーが二人で、一人が途中でリタイアなんてことになっても、もうひとりがすべての荷物を運び切ることができれば、チームに順位は付きますからね。そこがまさに戦略って感じです』


『ああっと、サラさん、もっと色々お聞きしたいところなんですが、そろそろ時間のようです。本日は本当にありがとうございました。最後に、この配信を見ているファンの皆様に向けて、なにか一言ありますか?』


『あー、えーっと、そうだなあ…いえーい、みんな見てる〜?スワローテイルのサラが帰ってきたよ〜!今回もめちゃくちゃ速い相棒連れてきたから、活躍期待しててね〜!ってことで、放送部の皆さん、私はこれで失礼します』


『チーム天城ロータリーのサラ選手でしたー!ありがとうございました!』


『ありがとうございました〜』


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


『さて、今季も全部で52チームのエントリーがあったSPEEDSTARですが、すべてのチームを紹介していますとこれまた2時間ほどかかってしまいますので、今季から新たに参戦するチームと昨年活躍したチームを中心にチーム紹介を行いたいと思います。まずは昨年活躍したチームから行きましょうか角田さん』


『そうですね』


『では参ります。チームナンバー21、なんと言っても近年のSSRはこのチーム抜きでは語れない、昨シーズンのチャンピオンでもあるこのチーム、KRC、Kanade Factry Racing。日本国内でギアのシェアTop3に入る有力メーカー、Kanadeの公式チームです。チームメンバーは重量を馬力でカバー、力強い走りを見せるニック選手と、テクニカルセクションでは群を抜く速さ、テイル選手の2名でエントリー。なお、こちらのチームは補欠ランナーとして村中慎吾むらなかしんご選手を登録しています。年間優勝経験数は3です』


『いやーKRCはここ数年圧倒的なポテンシャルを見せていますからね。Kanadeのギアも年々進化を重ね、今年は大幅なアップデートが施されたという噂も聞きますから、どのような走りを見せてくれるのか、注目ですねぇ』


『続きましてチームナンバー17、Aim for Topを掲げるA-4T。こちらは昨年からの参戦チームですがなんと言ってもリーダーのカノン選手がとにかく速い。それでいて荷物は一切崩さないという、飛び抜けた走行技術が光ります。ちなみに、A-4Tのチームは普段静岡を拠点に飛脚運送会社をしているなかの選抜メンバーだそうです』


『A-4Tはチーム内でも連携の取れた動きで、さすが本職輸送屋といったところでしょうか。もちろん、SPEEDSTARに参戦している選手は運送業についている割合が多いですけどね』


『次はチームナンバー45、最近ぐんぐんと実力をつけてきているこのチーム、チームインフェルノ ICEBREAK。こちらのチームは新潟県の妙高を中心に活動するアルペンスキーチームから出立しているそうで、その雪上での滑走技術、またスキー場業務でつちかった雪上運送などを存分に生かして生粋の飛脚とは少し違った、踏んで曲がるスタイルを披露してくれます。そのカーブスタイルは他の選手から一目置かれるほど美しく、メンバーのファンクラブができるほどです。ちなみに、メンバーは全員が22歳以下の若いチームでもあり、これからの活躍が期待されていますね』


『マイケルさん、このチーム、今年から新たに降谷京太ふるやけいた選手を迎えての3人チームになるとのことで、SSRでは近年2人チームがセオリーとなる中での増員、どう出るかが気になりますよ?』


『そうですね。さらに、こちらのチームは使っているギアも特徴的でしたよね井村さん?』


『そうなんです!フロントリジットのかたーい板みたいなローラーに2stパラツイン300ccのエンジンを積んでいて、まさにスキー!って感じですね。2stも今では珍しくなってしまいましたから、このチームのギアは妙高の地元企業が協力しあって作ったオリジナルだそうです』


『そうですか。それは地元の声援も熱いでしょうね』


『ですねー!』


『そして、先程来ていただいたサラさんの話にもありました、SSRでは異色の”横ノリ”チーム!チームナンバー34、LOVE&TURN。横浜のスケートボードを愛する若者たちで構成されるチームのメンバーはなんと5人。出走は2人ですが、縦ノリか?横ノリか?という新たな議論を呼び起こしたチームでもあります。こちらもギアが特殊ですよね井村さん』


『そうですねー、今の所SSRで横ノリスタイルを採用しているのはこのチームだけですが、機構を見ると非常に工夫が凝らされていて、どちらかというと速く走るというよりはテクニカルに攻めるのが得意そうという印象でしょうか。なんでも彼ら、このギアを自分たちでイチから設計したっていうんですからおどろきですね』


『今後どちらがスタンダードになるのか。そういった面でも目の離せないチームですよ?』


『はい。そして、こちらも近年注目が集まっているといえばこのチーム。チームナンバー39、昨年の北海道一周ラリーで初優勝を飾った北海道のチーム、チームDIVA concept SSR。こちらがすごいのはメンバー5人全員が現役のアイドルでありながら、昨年はトップチェッカーも経験するほど走りの技術が高いということです。こちらのチームからSSRを知ったという方も最近は増えていまますよね』


『そうですねぇ、こうして新しいファンの層を掘り起こしてくれるのは、運営からすると非常にありがたいことじゃないでしょうか。今後の活躍に期待ですよ?』


『そして、チームナンバー65、アパレルブランドがまさかの参戦です。celestyle Team SSR。近年若者の間で注目を集めている、デジタルを身にまとうがコンセプトの最新鋭テックウェアブランドが黒ずくめの二人組みをSSRに送り込んできました。素顔は一切明かさない、ミステリアスな雰囲気からは想像もつかないような過激な走りをすることでも有名です』


『あの仮面に隠された素顔が気になるところですねぇ』


『えーさて、ここまでが昨年活躍したチームになります。そして、ここからは今シーズンから新たに参戦するチームの紹介に参りたいと思います。まずはこのチーム、帰ってきたロータリーということでね、今年から再参戦ということになります。チームナンバー33、あのサラ・アニーラが率いるチーム天城ロータリー!先程この放送部に来ていただきましたサラ選手は、なんと言っても’70年、’71年シーズンを2年続けて制したチームスワローテイルの中核的メンバー。さらに、事前に聞いたところによると、相方もあの伝説のランナー、通称リンとそっくりな外見をしているそうです。昔からのファンにはたまらないシーズンになるのではないでしょうか』


『そうですねぇ。一方で、その相方はリンとは全く異なるギアを使うという登録もされており、このあたり、どういうことなのかぜひ、聞いてみたいですね』


『今回届け出されている相方はリーン選手という名前になっています。使用ギアはヘルフェスタの…フルe - ON?ご存知ですか井村さん』


『ヘルフェスタは機械人向けのアフターパーツメーカーだったような覚えがあるんですが、ギアを作っていたとは驚きですね。聞いたことないです』


『伝説の飛脚、サラ・アニーラが連れてきた相方は一体何者なのか!?注目です』


『注目といえばこちらも相当注目なんじゃないですか?』


『はい。チームナンバー88、参戦申込締切直前に彗星のように現れて予選ランキング上位にランクインしました、チーム五十嵐エンジニアリング。こちらのチームはなんといっても五十嵐ノア選手が機械人ということを公表しての参戦ですからね。機械人の方がSSRに参戦するのは初めてなんじゃないですか?』


『たしかに、聞いたことないですねえ』


『その、五十嵐ノア選手が使うのはKanadeの後輪駆動という情報が入っています。井村さん、このギアといえば…』


『はい、スワローテイルでサラさんとよくタッグを組んでいた、通称リンが思い浮かびますね。あれからこれだけの時間が立ちましたが、未だに後輪駆動の飛脚というのは多くないですし、なによりそれで結果を残せているという点で、”第2のリン”になるのか、私自身もすごく注目しています』


『そうですよねぇ、今年は昨シーズン、チーム再建のために参戦を休止していた元スワローテイルの森宮楓もりみやかえで率いるチームライラック supported by 三嶋鉄鋼みしまてっこうも帰ってきますから。スワローテイルファンにはたまらないシーズンになるんじゃないですか?』


『そうなんですよね、私自身も非常に楽しみなシーズンとなっております。さて、まだまだ星型7気筒エンジンを積んだ飛脚の新加入や伝説のメカニックの現役復帰など紹介したい話は積もるほどあるのですが、このあとのレース開始に伴う会場の移動のため、私達ももうそろそろ中継車の方に移動させていただきたいと思いますので一旦このへんで。なお、選手紹介のフルバージョンに関しましてはすでに配信されておりますので、我々放送部のトークと合わせて、ぜひ御覧ください。それではレース開始時にまたあいましょう。一旦失礼します』


『失礼します』


『失礼しまーす!』

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