EP - 03  再起

  トップスピードアタックで新記録を出して、帰り道で機能停止した機械人の少女を”ひろった”次の日の朝。


「お、レイナおはよう。昨日はおつかれさん、朝ごはんはどうする?」


「あーパパ、おはよう。朝ごはん何?」


「ごはんと味噌汁。早く食べないと洗い物は自分でしてもらうぞ」


「今行くー」


 飛脚ひきゃくは帰りが遅くなることが多いし、なにより疲れるから翌日は休みのことが多い。つまり今日は土曜日。昨日は女の子を抱きかかえて帰ってきたから、いつもよりさらに疲れてる。あともう3時間くらい寝ててもいいくらいだったんだけど、いつも通り7時に起きた。なんてったって昨日の子がどうなったか気になって二度寝なんてできなかった。


 昨日は帰って来た後、女の子をそのままお父さんに任せて寝ちゃったからどうなったかは知らない。女の子を助けるなんて大変なことがあったから忘れちゃってたけど、昨日はトップスピードアタックで新記録を出したりもしたんだから疲れるのも無理ないよね。


 ささっと顔を洗って席に着く。パパは待っててくれたみたい。


「いただきまーす」


「いただきます」


「なんかおかずなかったの?」


「なんもない。納豆食うか?」


「いや、べつにいい。それより昨日の子、どうなった?」


「あのあと少し見てみたが、機体はかなり損耗そんもうが激しい。長期間にわたってメンテナンスされてなかったみたいだ」


「それってだいじょぶなの?」


「全然大丈夫じゃないな。しっかりメンテナンスすればいけるだろうがなんにせ型番が古い。交換部品が出てこないっていう可能性もあるだろうし、代替品だいがえひんもどうだか。ヒューマノイド…じゃない、機械人はここ数十年で急速に発達した分野だ。進化がいちじるしいってことは古くなるサイクルも早いっていうわけだ」


「なるほど…つまり修理しゅうりは難しいってこと?」


「そういうことだ。しかも、通常では損耗することを想定されていない部分まで影響が及んでる。たとえばあしなんかはメインフレームがかなりゆがんでる。正直歩けてるのかも不思議なくらいだ。一気に曲がったというよりは度重たびかさなる衝撃しょうげきでゆがんでいったって感じだから、おそらく飛脚業のせいだろうな。ただ、普通に飛脚やってるやつのメンテナンスはいろいろしてきたが、あそこまでひどいのは見たことない。つまりは、やっぱり走り屋ってことか…」


「ギアも見た?Kanadeのやばいやつじゃなかった?」


「朝一で回収してきたぞ。あんなのは普通の飛脚は使わんよなあ…」


「やっぱりそうだよね…」


発煙はつえんの原因はお前の予想通り、劣化れっかしたバッテリーが要求ようきゅうされる出力にえきれなかったってところだと思う。積み荷はなかったが、もしかしたら彼女もSPEEDSTARに挑戦する気で走っていたのかもしれん。しかし機体の状態が悪すぎる。憶測おくそくだけでは何とも言えんから、あとで中枢ちゅうすうをうちの整備用せいびようサーバにつないで再起動をかけてみよう」



「…その必要はありません」


昨日聞いたシステム音声より、幾分いくぶんやわらかい声。


「えっ!?ああっつ!味噌汁が!!」


「何してるんだ…火傷やけどは…」


「だいじょぶだけど…そうじゃなくて!なんで?壊れてたんじゃないの!?起きてきていいの!?いや、そもそも起きれたの!?」


パパの話だと、機体…体の状況はかなり悪いらしかった。とてもじゃないけど自力で動けるわけないはず。というか驚いた拍子ひょうしにこぼした味噌汁が熱い。


「もう慣れてますので。昨晩さくばんはお世話になりました。謝礼しゃれいは後からんでおきます。これ以上ご迷惑をおかけするわけにもいかないので、私はもう行きます。私のギアはどこでしょうか?」


丁寧ていねいに頭を下げた白髪の少女。よく見ると脚の方向が少しおかしい。表情や言葉からは大きな問題は感じられないが、体はそうではなさそうだった。


「いや…待て、君、その体はもう限界が…」


お父さんがうろたえている。早く味噌汁を拭かないとパジャマにシミができてしまうことはわかってはいるが、私は女の子とパパのやり取りを見つめることしかできない。


「知っています。しかしながら、私の業務ぎょうむすでに完了しており、もうどこにも所属しょぞくしていません。私たち機械人は違法いほう改造かいぞうにより人間社会に危害きがいを加える存在とならないよう、機体に手を加える行為こういには責任せきにんある人間の認証にんしょうと、それなりのがくが要求されます。つまり、直すために頼れる後ろだてを、私はもう持っていません」


「だったら、そんな状態で無理して走ることはないだろう?何か動かずにできるほかのことを探したらどうだ?」


「それはごもっともな意見だと思います。ですが、飛脚を生業なりわいとするよう生まれた身、飛脚として、まだ心残りがあるんです。そういうことなので、私はまだ走ることをやめるわけにはいかないんです。今回は助けていただきまことにありがとうございました」


「…そうか。でも、君のギアはもう動かないぞ。バッテリーが焼けたせいで電源回路まで死んでるからな。それに、自動音声とはいえ、機体修理のサービスマンのところへ連れていけって言っていたじゃないか?話がかみ合っていない気がするが」


「父さん...」


パパの口調くちょうが少しずつ厳しいものになってきている。思わず止めようと思ったが、パパが真剣しんけんな目でこちらをせいした。


「今の状態で、君は、どうやって走るつもりなんだ?」


「電源に関しては問題ありません。エンジンとキャパシタが生きていれば主機側しゅきがわで電源のリレーを確立かくりつして走行可能です。自動音声の件はだいぶ昔に友人に入れるようすすめられてから更新こうしんできていないので、その件でお手をわずらわせたなら申し訳ありませんでした」


「そんな…いや、俺には止める権利などないが…いくら何でも無茶むちゃすぎる。それほどまでの心残りって、いったいなんなんだ?」


  彼女は改めて姿勢を正した。よく見るとひざの関節ががたがたしてたり、こしかたむいていたり、どう見たって満身創痍まんしんそういだ。

 そんな彼女が、少しだけ表情を柔らかくし、目を閉じた。少し間を置いた後、再び目を見開いた彼女は言った。


「私には、飛脚として走ってきた中で、忘れられない景色がいくつもあります。機能を停止するまで、私は自分の脚でけた世界を見て回りたい。それだけです」


 彼女は確かに言ったのだ。死ぬまで走り続けたいと。


 鳥肌が立った。今まで飛脚として走ってきた様々なシーンが脳裏のうりによみがえる。彼女が今、口にした願いを、私はもう知っている。飛脚とは、ただ走って荷物を届けるだけではないのだ。そこには様々な景色が、音が、振動しんどうが、においがあって、そのすべてに魅了みりょうされたからこそ、私は飛脚として走り続けている。彼女もまた、仕事としてだけでなく、ただ純粋じゅんすいに飛脚に魅了みりょうされた一人だったということだ。


 私はこぼしてしまった味噌汁をくふりをしながら考えた。本当にこのままいかせてしまっていいのだろうか?と。パパはどう見たって納得なっとくしてない。それは私もおんなじだ。だって、このまま送り出してもきっとすぐまた機能停止してしまう。今回は私たちがいた。でも次は?次も誰かに助けてもらえる保証ほしょうはない。つまり、今行かせるということは私たちにとっては死にに行かせるとほぼ同義どうぎだ。


 この子が、私と同じ感覚を持った彼女が、誰にも看取みとられることもなく、どこかの路肩ろかたで昨日みたいに機能停止して、そのまま清掃業者せいそうぎょうしゃに回収されて処分されるなんて。私はえられなかった。


「ねぇ、それって、一人じゃないとだめ?」


 出ていこうと背を向けた少女に声をかける。パパの方をちらっと見ると、私を真剣な目で見ていた。異論いろんはなさそうだ。


「どういうことですか」


「私も飛脚なの。その願いをかなえる手伝いをさせてほしい。そんでもって私を、いろんな場所に連れて行ってよ。どうせ無所属なんでしょ」


「でも、私はもう長くはないんですよ?」


 ずっと、スワローテイルのことを思い出していた。私の憧憬どうけい、黒髪の彼女が使っていたギアはKanadeの後輪駆動リアドライブだった。私も一度はあこがれて試したけど、発進でひっくり返ってあきらめたギア。目の前の少女は、たしかにそのギアを使って走っていたのだ。


「わかってる。だから、直して住み込みで働かない?どうせお母さんはあんまりうちに帰ってこないし、父さんも人手が増えれば楽でしょ?」


「まあ一応…」


 ここで行かせたら一生後悔いっしょうこうかいする。生きていれば判断に瞬発力しゅんぱつりょく要求ようきゅうされる局面きょくめんは少なくない。きっと今もそんな瞬間なのだろう。だから、思い切って言葉をつむぐ。


「機体のメンテはうちの父さんがAsTeX社の正規せいきサービスマンだから安心して任せてくれていいし、かかったお金は働いて返してくれればいい」


「でも…そんな急に言われても」


 少女はまだなにか気がかりなことがあるらしい。まあ普通に考えれば、いきなりうちに住めなんて言われても戸惑とまどうのは当然だ。何か手は…と周囲を見渡みわたして、一枚のポスターが目に入った。SPEEDSTARの今シーズンスケジュールの書かれたポスターだ。これしかない。



「なにより、私、SPEEDSTARS目指してるの」



 たっぷり一分は見つめあったかも。いや、うそ。ほんとはたぶん10秒くらい。とにかく長く感じる沈黙ちんもくを先にやぶったのは少女の方だった。


「本気で、ですか?」


「本気だよ。登録ナンバー66、五十嵐レイナ。今期参戦まであとトップスピードアタック2位分って感じ。ギアはKREUZのレベレーター。どう?本気って伝わった?」


少女の目の色が変わった。やはり彼女も私と同じ仲間で間違いないようだ。最後にダメ押しする。


「あなた、もしかしてだけど、万全ばんぜんの状態だったらかなり速いでしょ。壊れかけで走ってすぐ死ぬくらいなら、もう少し“新しい世界”みてからにしない?現代の飛脚は昔と比べてかなり進化してるんだから」


私はじっと彼女の目を見て返答を待つ。パパも彼女の動向どうこうをじっと見つめている。


「…なるほど。あなたもSPEEDSTARSを目指しているのですか。懐かしい…私も昔は直線250キロ越えを目指したものです。ああ…あの感覚…」


 彼女は少し寂しそうな表情をしているが、聞き間違えでなければ直線250キロは現代においてもほぼ未踏みとうの領域だ。一部の超高速チューナーが動きやすさと引き換えに大排気量高出力ビックパワーシステムを積んで初めていたれる領域。それを、まさかこんな華奢きゃしゃな少女が肉薄にくはくできるとは考えられない。機械人は私たちの尺度しゃくどでははかれないモノなのかもしれないと、初めて恐怖きょうふを感じた。本当に一緒にやっていけるのか?もしかしたら本気でヤバいやつをきつけてしまったんじゃないか?


 一抹いちまつの不安が脳裏によぎるも、後の祭りとはこのことだ。第一彼女をこのまま放り出すわけにはいかなかったから、こうするほかなかったと自分に言い聞かせ、改めて彼女と向き合う。彼女の目は、明らかに熱量ねつりょうびていた。


「その話、ぜひ受けさせてもらってもよろしいですか。思い出したらどうしてもあきらめきれなくなってしまいました。私にできる仕事はなんでもやりましょう…」


 彼女は再び姿勢しせいを正し、深く頭を下げた。ヤバイやつなのかもしれないが、彼女はあこがれの人と同じ、変則へんそくギアを使っている。少なくとも私よりは速いのだろう。彼女と走るこの世界は、また違った色を見せるかもしれない。正直言って、胸が高鳴たかならないわけがない。


「…パパ、いい?いいよね!?」


「お前…許可は先にとるものだぞ、まったく…」


「え、じゃあだめ…?」


「お邪魔じゃまでしたら私はりますが、もしよろしければおいていただけませんか」


彼女も少しかしこまった様子でパパの動向を見つめる。


「いや、こちらとしても毎日仕事の上に家事なんて、猫の手も借りたいと思っていたところだ」


「じゃあ…?」


「それに、最近はレイナもどんどんスピードが上がってきてる。正直このまま一人で走らせるのにも不安を感じていたんだ。ギアと機体の整備は任せてくれてかまわないから、もしそちらが良いのであれば、どうか娘に付き合ってやって欲しい」


つまりはOKってこと。


「やったー!!ね、これからよろしく!!」


「はい、ふつつかものですが、これからどうぞよろしくお願いします」


「こちらからもよろしく。じゃあレイナ、とりあえずお前は味噌汁どうにかして朝ごはんを食べてしまいなさい。そうだ、君の名前をまだ聞いていなかったな」


「登録番号275、無所属機体のノアです。…もっとも、今はもう無所属ではありませんが…」


そういうと彼女は、いや、ノアは少し嬉しそうに笑った。


「ノア!ノアちゃん!?私は五十嵐いがらしレイナ!レイナって呼んでね。よろしく!それで、あなたのことノアちゃんって呼んでいい??」


 さっき感じた不安は霧散むさんしていた。だって、目の前の白髪の機械人は、私たちと同じように微笑ほほえんでいたから。


 Tシャツに味噌汁がついていることも忘れ抱きつこうとしたその時。


「ノアで結…構……で…」


ノアの目から急に光が消え、その姿勢のまま固まった。


「え!?なに…!?だいじょぶ!?」


「ううん、やっぱりそのまま行かせてたら、すぐ近所で機能停止しているのを見ることになったかも知れんな…」


「本当にギリギリだったんだね…」


「とりあえず、本人が万全の状態になってもらわないと役所に登録もできん」


「なんか勢いで働いて返せばいいとか言っちゃったけど、ぶっちゃけメンテにどんくらいかかるの?」


「だいたい1000万くらいじゃないか?」


「1000万…!?ちょ、それだめじゃん!全然働いて返せばっていうレベルじゃないじゃん!今更いまさらだけどお引き取り願うしかなくない...??」


 1000万は高校生の私には想像のつかない金額だ。いや、100万で1cmなら1000万は10㎝の札束か...案外あんがいないかも。いや、1000万はヤバイ。


馬鹿ばか言うな。言い出しっぺのお前が及び腰になってどうする。今日ちょうどヒューマノイド系の保守パーツを注文するところだったからついでに新型機体の発注をかけておこう。下手へたに今の機体いじくりまわすよりはいさぎよく時代に追いつかせた方がかえって維持費いじひも安く上がるだろ。機体が届けばそのままメインフレームえで終わるから、時間はそんなにかからんはずだ」


「載せかえって...倫理的りんりてきに大丈夫なのそれ」


「しかたない。機械人が人権を認められ、一般的な人間と同等どうとうあつかわれるようになったとはいえ、あくまでも工業品がベースにあることは変わりないしな」


「うーん、そういわれると複雑ふくざつっちゃ複雑だよね…1000万で新しいからだ買うって。」


「お前は無駄むだなこと考えなくてもいいんだよ。彼女は少し特殊とくしゅな病院が必要なだけだし、新型機は食事も、入浴も、ほぼ生身の人間と同じことができるようになるはずだ。それに、1000万で瀕死ひんしの状態から元気になれるというのは、もしかしたら人間よりも安いとも言えるかもな」


「でも…ぶっちゃけ、うちにそんなにお金あるの」


「ぶっちゃけ、無い。借金だなあこれは。せっかく新型GTーE買おうと思って貯めてた貯金が消えるなあ…」


「いまさらだけど、パパ、良いの…?」


「良い。というかこれからやっぱりお金ないのでだめですって放り出せるか?」


「そうだよね…」


「彼女にはしっかりかせいでもらわないかんな」


「どうやったら1000万も稼げるんだろう…見当もつかないや」


「お前…SPEEDSTARの一戦の優勝賞金はいくらか知ってるか?」


「100万だけど…まさか」


「お前達が活躍かつやくすれば、賞金も入る、うちの店も名前が売れる。しかも機械人をレースで勝たせるなんて前代未聞ぜんだいみもんだ。もうからないはずがないだろ」


「まじで…まじか…まじなんだな、最高かよ…さすがパパ、天才」


「まあ、優勝賞金のくだりは冗談だとしても、機械人と人間のタッグが五十嵐エンジニアリングの名前でSPEEDSTARを戦う、その効果はかなり大きいはずだ。彼女が加われば普段受ける仕事も増やせるし、機械人はぶっちゃけ俺らより機械の扱いに長けてる。100%無理って話ではないんだよ実際は」


「な、なるほど…」


なんとか目の前でぐるぐるまわるお金の話を飲み込んでいると、パパがこっちへ来いと声をかけてきた。パパの後についてガレージの方へ向かう。


「あと、もうこうなったから言うが、実はな、お前のギアには時速200キロのリミッターがかけてあったんだ」


「はぁ!?マジで言ってる?正気しょうき?じゃあ191キロでたっていうのは…」


「あくまでも180キロから出力の制限がかかるようになってた結果だ。」


「ええ…じゃあ、フルパワーだと何キロでるの、あれ」


「制限がかけてあったとは言ったが、実際今のままだとどうあがいても200キロが限界だよ。でも」


「でも…?」


「あれは実は3年くらい前に知り合いのレーサーが中古で安くゆずってくれたやつなんだ。とても初心者のお前には扱いきれないほど過激かげきなチューンが施してあったから、全部一般用途用のノーマルパーツに換装かんそうして、かなりいろいろしぼってある。このサス以外はほぼダウングレードしてあるかな。まあ、ランニングコストの面もあったが、フルパワーだと俺が試しただけで210キロを超えてた。最高速が得意なギアじゃないからあれだが、お前の方がさらに軽いからもしかしたら225キロくらいは超えるかも知れないな」


「まじかー…」


 ドイツクロイツ社は精密せいみつなドイツのものづくりを尊重そんちょうしながら過激かげきなスペックを引き出すことに注力するギアメーカー。メインはオフロードバイク、スノーモービルだが、そのオフロード系の高い技術を生かして、独自の柔軟じゅうなん義手ぎしゅ義足ぎそくを開発。その幅広い技術を武器に日本メーカー以外で初めて飛脚ギアに参入したメーカーでもある。


「ま、すぐに全部開放というわけにはいかん。彼女からいろいろ教えてもらうといい。彼女が飛脚として仕事を始めたのはおそらく15年以上前だ。初期型のKanadeの後輪駆動リアドライブを使っているわりに、あのギア特有とくゆうのガタやふれが出てない。体があんなになってるのは正直よくわからんが、走行に関してはかなりハイレベルな技術を持ってるんじゃないか」


「その彼女、どうする?さっきから放置ほうちしちゃってるけど…」


「ああ…どうしようかな。とりあえずそのままにしておくこともできないから、コンピュータ室にしばらくいてもらおうか。中枢だけうちの整備用サーバにつないで、機体が来るまでソフトウェアの方のアップデートをやっといてもらおう」


「了解、ご飯食べたら運ぼ」


「そうだな」


「やっば、楽しみになってきた…おもしろ、おもしろいよ世界…」


「まさか俺に機械人の娘が増えるとは…人生なにがあるかわからんな」


 どうしても顔がにやけてしまう。どんな世界が待ってるのだろうか。彼女はどんな世界に連れて行ってくれるのだろうか。いてもたってもいられない、今すぐに彼女と走りに行きたいという気持ちをおさえて、冷めてしまったご飯をかきこんだ。

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