支配欲
支配欲。
独占欲や所有欲などがこれに含まれるだろうか。
他人を支配することで自己の優位性を示す、自己承認欲の一つの形と私は考えている。というより、突き詰めて考えると、三大欲求を除く大抵の欲は自己承認欲から派生していると言っても良い。
しかしこの支配欲、自身をより優位な存在であると示したい自己承認欲からだけではなく、群れを統率しなければならないという野生的な本能からくることもある。
例えば、『暴力による支配で成り立つ集団』と『ルールによる支配で成り立つ集団』があったとしよう。
前者は、支配する者が暴力(この場合、『理不尽な罰』)という恐怖で自己の優位性を誇示し、支配される者達が逆らうことがないようにしている。この集団は支配する者にとって都合が良く作られたルールを持つ。
後者は、支配する者もされる者も等しく同じルールに縛られている。当然、ルールを破れば罰はあり、その程度も等しいだ。しかし、支配する者がいることで成り立つのが前提であるから罰に関しては例外も当然存在することは気を付けて欲しい。
ここでテーマに関連した疑問をひとつ。
どちらがより「野生動物らしい」と言えるだろうか?
暴力による支配。これは、人間ないし動物の原初の感情とも言われる「恐怖」によって支配されている。なにより支配する側は自身の欲を満たすため、つまりは理性で抑えるべき野生を満足させるために支配することが多い。
ルールによる支配。こちらは秩序だった規律に従わなければならず、集団に所属する全ての欲を満たしたいという衝動を理性で、ルールで抑えつけている。
このように比べてみると、なるほど、『暴力による支配で成り立つ集団』は実に欲に忠実で「野生動物らしい」集団と言える。
果たして、そんな風に考えた人はどれほどいただろうか。
よく考えてみて欲しい。あるいは、観察し、考察して欲しい。
野生動物の作る群れは、「ルールによる支配で成り立つ集団」である。
そもそも生物は「種の保存」のために機械的に生きている。
野生動物を例に挙げよう。
精神あるいは肉体に障害を持つ仔は捨てる。怪我や病、加齢で弱った個体は捨てる。はぐれた個体を探すことはしない。捕食されている個体を助けに向かうこともしない。仲間同士で助け合うのは種の保存のためである。これらは暗黙のルールであり、群れを作る多くの動物種において当てはまるルールである。
そしてなにより野生動物の持つ欲は、全て「種の保存」を目的としたものである。
では、人間は?
人間という動物種を保存するための欲望は、食欲性欲睡眠欲に加え支配欲で十分だろう。野生動物となにも変わらない群れを作れば人間という種は十分保存できる。
ところがどうだろうか。行き過ぎた自己承認欲、食欲、性欲、支配欲などに加え、物や金に対する欲、遊びたいという欲。細かく上げるとキリがないが、つまり私が言いたいことは、あまりにも不要な欲があまりにも多すぎるということだ。
「人間は大きく脳が発達したことにより理性を獲得し、自身の欲に忠実な野生をコントロールすることが出来るようになった」と、講釈されたことがある。人間は他の動物種よりもずっと複雑で多くの欲を持っているのは、果たして理性によって欲を抑えることで隠れていた欲が見つかってしまったためなのか、あるいは高次的な思考能力を手に入れたことで欲もまた成長ないし進化してしまったためなのか。
私には想像することしかできないが、人間は『世間体)という名の理性に支配されているということだけは確かだと言える。
端書き
「戦争」=「縄張り争い」
「より優れた人種を残す」という目的は、とても動物的な発想からきているとは思わないだろうか。
ヒンシュクを買ってしまうかもしれないが、こういう幼稚な発想は可愛らしくて好きだ。
やはり、多くの人間は野生を捨てきれていない。(欲求編) めそ @me-so
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