三河戦線、異常なし(5)

 松平元康の小姓たちが、場を整える。

 畳の上で相対すると、服部半蔵へ松平元康から手渡しで感状が贈られる。戦功の公式認定書としての役割が有るので、武家にとっては重要な家宝となる。

 続いて、武具の譲渡。

 頂いた武具は、換金するも良し、戦場で使うのも良し、床の間に飾ったり、蔵に仕舞って置くのも良し。

 自由度が高いようだが、品によって送る側が何を期待しているのか、頂く側に一目瞭然の場合が多い。

 松平元康は、自分の槍を服部半蔵に手渡す。


「初陣は未だなので、新品だ」


 受け取りながら半蔵は、小姓たちの残念そうな顔色から、不憫な可能性を導く。


(槍は、これ一本しか、お持ちでないのでは?)


 今の元康には、収入源が全くない。

 今川の人質兼客将として、最低限の食い扶持を貰っているだけである。

 親戚からのお情けで、何とか武士として恥ずかしくない装備は揃えているが、数は最低限。

 ならば服部半蔵の答えは、決まっている。


「殿の初陣の折には、この服部半蔵が、この槍で一番槍を務めます」


 室内の皆と廊下で聞き耳を立てていた今川侍たち全てが、激しいリアクションを起こす。

 ハードルを上げすぎた半蔵に、元康が助け舟を一応出す。


「参戦だけで有り難いよ。たとえ一番槍が出来なくても、責めない。楽にしようよ」


 半蔵は、気遣いに一礼しつつも、笑って言い返す。


「疑われるのは此方の不徳ですな。では、一番槍が出来ない時は、駿府城の門前で、裸踊りをしてみせます。この月乃と一緒に」


 月乃が、半蔵をマジ睨みする。

 半蔵は、皆と一緒に笑っている。

 殴った方がいいかなと、月乃は思案する。

 皆の笑いが引く頃合で、元康は半蔵に本題を持ち出す。


「半蔵。頼みが有る」




 駿府城下から離れ、郊外にある農家に偽装した伊賀忍者のセーフハウスに泊まる事にした服部半蔵は、寝込みを月乃に襲われた。

 既に灯りは消しているので、壁板の隙間から差し込む月明かりだけが光源にもかかわらず、二人の忍者は互いにマウントポジションを取ろうと絡み合う。

 粗末な藁寝具の上で押し倒されて服を剥かれながら、服部半蔵は苦笑する。


「初めての夜も、こうして月乃に襲われたな」

「先手を取るのは、趣味です」


 馬乗りになった笑顔の月乃が、そのまま互いのふんどしをズラして下半身合体に及ぼうかという瞬間に、服部半蔵は月乃の両足を抱えて持ち上げると、体勢を入れ替える。

 月乃の体を傷付けないように、優しくマウントを取る。


「今回の任務では、性交しないと言ったはずだ」

「罰です。あんな約束に、勝手に私を含めるからです」

「自信がある」


 半蔵は、いつもの様に、月乃の着物の前合わせを開いて、白い乳房を双方剥き出しにする。

 僅かな月明かりでも、美しく花盛る双丘が半蔵の目に溢れる。


「月乃の裸踊りを、俺以外に見せるつもりはない」

「本当に一番槍を敢行するつもりなら、先に雇用条件を満たして下さい」


 月乃は両足で半蔵の腰を挟み込んで、性急な子作りを諦めない。最小限の動きで、合体フォーメーションを先っぽまで進める。


「一番槍が戦死する確率は、少なくありませんから」

「生還するから、そんなに焦らなくても」


 強引な結合を回避しようと、半蔵は膣穴に引き込まれかけた肉棒を抜いて、月乃を背後から抱き締める。


「帰ってから、ゆっくりしよう」

「まだ勃起したままですよ」

「敵地で耽る気はない。もう寝よう」

「…おやすみなさい」

「おやすみ、月乃」

「まだ勃起したままですよ」

「寝ようよ」

「はあい」


 暫くして、半蔵が本当に眠りに落ちる。

 月乃は半蔵の睾丸を掌で少し愛撫してから、諦めて眠った。

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