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 金曜日。


 弘貴に謝罪しようと、遥香は緊張しながらオフィスに入った。


 しかし今日、弘貴は客先直行で、夕方までオフィスには顔を出さないらしい。


 せっかく心の準備をしてきたのにと、しょんぼりしながらパソコンを起動させた遥香は、弘貴からの社内メールが届いていることに気がついた。


 送信日時は昨日、遥香が帰宅した後だ。


 内容を読むのが少し怖くて、恐る恐るメールを開くと、「さっきはごめん」という書き出しでメールがはじまっていた。


『さっきはごめん。言い訳にしか聞こえないと思うけど、頭に血が上っていたんだ。君を取られるんじゃないかと思って怖かった。だからといって、君を怖がらせていい理由にはならないよね。都合がいいことを言うようだけど、どうか、俺のことを嫌いにならないでほしい。本当にごめん』


 遥香は、人に見られたらまずいと慌ててメールを閉じたが、ドキドキする鼓動はなかなか収まらなかった。


 遥香はディスプレイのかどの方に小さくメールを表示すると、そのメールに返信を入れる。


 わたしこそ、叩いてしまったごめんなさい――、そうメールを返信すると、ふうと息をつく。


 本当は直接会って謝罪したかったが、メールだけでも打ててよかった。


(八城係長の戻り時間は五時……、か)


 帰る前に、少しでも話す時間はあるだろうか。


 今日会えますか――、その一言がメールできない自分を情けなく思いながら、遥香はゴールデンウィーク前最終日に片付ける仕事を、黙々とこなして行くのだった。

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