第14話

二人が会ったときから5日後、二人はルシーに呼び出された。

集合場所の礼拝堂の中は明かりがついておらず、辺りが薄暗い。

いつもと違う様子に警戒しつつ、二人は礼拝堂に足を踏み入れた。

パァン!

突如音が礼拝堂に響き渡る。

パッと明かりがつき、クラッカーを持ったルシー達が現れた。

駆け寄りながら二人にルシーは笑顔で言った。

「本日で特訓は終了です!

お疲れ様でした!

……ってあの、スキル発動しないで……」

二人は音が鳴った瞬間、臨戦態勢に入っていた。

ルシーは軽くため息をついた。

「サプライズをしてスキルを使われそうになるのは初めてです。まぁ、それだけ特訓が身に付いているという証ですかね」

ルシーが指を鳴らすとご馳走を持った神官達が現れた。

「訓練を頑張った分、たくさん食べてください!本当にお疲れ様でした!」

二人は勧められるがまま席につき、ご馳走を食べた。

「おいっっしい!」

新しい料理を一口食べる度にほのりは感動した。

「ははっ。焦らずなくても、料理は逃げませんよ。もう少しゆっくり噛んだらいかがです?」

クスクスと笑いながらルミエルが近づいてきた。ほのりはガタッと席を立つ。

「あ、ルミエルさん!

あの、本当に今日で特訓は終わりなんですか?」

「ええ終わりです。お疲れ様でした。

頑張りましたね」

ほのりは90度に腰を折った。

「なにからなにまで、お世話になりました!

ほんっとうに、ありがとうございました!」

ルミエルは驚いたように目を見開いた後、顔をほころばせた。

「こちらこそありがとうございました」

ポンポンとルミエルはほのりの頭を撫でた。

(これからはもはや日課となっていた修行がないのか)ルミエルとの修行の日々を思い馳せ、ほのりは急に寂しさがこみ上げた。

「今は楽しみましょう。一緒に食べてもよろしいでしょうか?」

「はい!もちろんです!」

ルミエルはほのりと向かい合って食事をした。

会話は自然と弾んだ。

教会のこと、この世界のこと、ほのりが元いた世界のこと、最近驚いたこと、嬉しかったこと…………。

「ルミエルさんはたくさん知識があってすごいです。とてもお強いんだとも聞きました!

ルミエルさんは、お母さんから色々と教えてもらったんですか?」

話題はそれぞれ個人のことについて移行していた。

「いえ、お母さんも教えてくれましたが、一番私に教えてくれたのはルシーです。

ルシーは私の姉のような人なんです。

若くしてこの教会にきた私に、ルシーは親切にしてくれたのです」

「なんでですか?」

「ルシーから数年前の魔王の侵略のことは聞きましたね?

私はその時に戦災孤児なりました。

戦争が終わった後、一人でいるところをルシーさんに拾われました」

ほのりは困ってうつむいた。

「すみません、あの、答えにくいことをを話させてしまって……」

「気を使わなくていいですよ。本当に。私は当時のことはそんなに気にしていません。ルシーさんと出会えた良い思い出になっています。ですからそんな悲しい顔しないで。

ほのり様は笑った顔の方が素敵ですよ」

「そうですか……?」

「ああ、僕もそう思うよ」

気がつくと雪斗が後ろに立っていた。

「話の途中で悪いんだけど、ルシーさんからこれからのことについて説明があるそうなんだ。ちょっとこっちに来てくれ」

ほのりはルミエルに会釈をして席を離れた。


「お二人にはこれから旅に出てもらいます」

「「旅に?」」

「旅といっても目的地が決まっているものです」

ルシーは地図を広げた。

「この町から南西地域で魔物による被害が増加しています。報告では見たことのない種類の魔物もいるとか。魔物とは一言で言えば化物ですね。見ればわかると思います。魔物は魔王の一族である魔族だけが作り出すことができます。

雪斗様とほのり様には南西地域のなかでも、このアルタイカという町に行き、魔族を探してもらいたいのです」

ルシーは指でアルタイカを叩いた。

雪斗はルシーが指さした場所を見て質問した。

「どうしてアルタイカを?」

「魔物が出現している地点から、魔族の位置を様々な検証方法で推測したところ、アルタイカにいる可能性が一番高かったのです」

「分かりました……。でも僕達に出来るでしょうか」

ルシーは大きくうなずいた。

「大丈夫です。もはや私やルミエルとやりあえるほどの実力を持った二人にならば、必ずできます。

ただし、魔族を発見した場合、魔力量を瞬時に見極め、勝てないと判断したら即時逃げてください」

真剣な表情でルシーは言った。

「逃げることは恥ずかしいことではありません。既に成熟している私たちと違って、お二人はまだ成長途中です。

今は敵わない相手でも数日後には倒せるようになるかもしれません。

決して無理をしないでください」

「「はい!」」

二人は気合いの入った返事をした。

「今も被害は出続けています。

早いですが、明日の朝、発つ予定でよろしくお願いします」

雪斗とほのりは明日に備えて早めにベットに寝た。

ほのりは不安よりも、持ち前の好奇心でわくわくした気持ちの方が強かった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る