第11話
魔感球を使った修行を始めてから、一週間がたった。
その間に二人は魔力の調節を完璧にできるようになっていた。
そのことを知ったルシーはポカンと口を開けたまま、石のように固まった。
動かなくなったルシーを二人は心配そうに見つめる。だんだんと不安になってほのりが助けを呼びに行こうとしたとき、ルシーがようやく動いた。ルシーは
「ありえない……。私だって3ヶ月はかかったのに……。え?魔感球壊れてた……?」
と独り言を言った後、「少し考えたい」と言い残して自室に戻っていった。
初めに魔力量を調節できたのはほのりの方だった。
あまり焦らなくていいと言われたが、ほのりには急がねばならない理由があった。
スキルの講義を受けルシーが部屋を出ようとしたとき、よろけたルシーを雪斗が助けた。二人の顔の距離がグッと近づく。
「あ……すみません」
「いえ、大丈夫ですよ。僕たちが来てから、ルシーさん全然休んでないですよね?
あまり僕たちに気をつかわなくてもいいので、どうか無理はしないで下さいね」
「ありがとうございます」
ルシーは一言そう答えただけだったが、少し頬を赤らめていた。
日が経つにつれて、ルシーと雪斗は仲良くなった。
ルシーと雪斗の個人的なやり取りも増えた。
内容はちょっとした世間話だったが、その様子に頬を膨らませた人が一人。
ほのりである。
(なんか、なんていうか……良い雰囲気……!
このまま付き合っても不思議じゃない。
まずい。まずいけど、ルシーはいい人だし、雪斗と仲良くして欲しくないなんて、私が我儘言ってるだけ……。
それなら、早く教会から出る真っ当な理由を作って、自然に二人の会う機会を減らしちゃおう。うん、そうしよ……)
ということで、ほのりは魔力調節を早くできるように努力した。修行を全て完璧に終わらせるというのがほのりが考えた真っ当な理由だった。
ほのりは寝る間も惜しんで訓練を重ねた。
そしてついに、5日後、魔力のコントロールが可能になった。
コツを掴んだほのりはすぐさま雪斗のもとへ。
ほのりのアドバイスもあり、雪斗はその2日後に魔力調節をできるようになった。
ルシーを待っている間、二人は応接室にいた。
「ルシーさん、驚いてたね。
僕もこんなに早くできるようになるとは思わなかった。ほのりのおかげだね、ありがとう」
「えっへへ。ありがと。
でも雪斗の実力だよ!」
ほのりがそう言うと、雪斗は照れたように笑った。
(笑った顔、かっわいい!)
ほのりは口元のにやけを抑えるように努力した。
コツコツと靴の鳴る音がして、ルシーが部屋に入ってきた。
「お二人とも、魔感球は極めて正常でした。先ほどは取り乱してしまってすみません。
魔力のコントロールができるようになったのですね。おめでとうございます!
一週間でできるなんて素晴らしいですね」
「次は何をすればいいんですか?」
ほのりが聞く前に、雪斗が尋ねた。雪斗の目は意欲的に輝いている。元々雪斗は分からないことが分かるようになるのが大好きで、それゆえ高校の勉強の成績も良かったのだ。
目標を一つ達成したことによって、異世界に来た動揺でストップしていた勉強意欲が復活したらしい。
「そうですね……では、本格的なスキルの特訓をしましょう!」
「スキルの特訓!それはどんなものですか?」
「一概に「こう!」とは言えませんね。スキルは十人十色。つまり特訓の仕方も人それぞれ違うのです」
「なるほど」
「そこで指南役を私の他にもう一人増やします」
どうぞとルシーが言うと、黒いコートのフードを被った男が部屋に入ってきた。
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