第8話

「ほのり!ほのり!」

雪斗の叫びでほのりは目を覚ました。

「雪斗?」

「良かった」

雪斗はほのりを抱きしめた。あまりの衝撃にほのりはまた意識を手放しそうになった。

「ほのりがもう目を覚まさないんじゃないかって、僕は……!」

呆然としているほのりを見て、雪斗は慌てて体を話した。

「ごめん、つい……心配してたから」

「ああ、うん、大丈夫だよ」

ほのりは真っ赤な顔を布団で隠した。

(普通なら脈ありなんだろうけど、相手は雪斗だからなー)

雪斗はほのりと幼なじみだ。親同士も仲が良かったので、二人は家族のように育った。家が歩いて五分のところにあったから、二人で夕飯を一緒に食べたりすることもしょっちゅうだった。そんな身近に同年代の女がいる環境で育った雪斗は恋愛に全く興味がないものの変に女慣れした性格になった。

その結果、雪斗はほのか以外の女性への距離感を間違えることが多々あり、惚れられた回数は数知れない。同時に泣かせた女も数知れない。

ある日、仲良くなった女子から『脈ありでいいってこと?』と尋ねられた時なんて、『脈?どういう意味?』と答えたそうだ。


「ほのり?」

雪斗は黙ったままでいたほのりを見て、心配そうに声をかけた。

「ん?大丈夫だいじょーぶ」

ほのりがベッドから立ち上がると、そばにいたルシーが急いで止めた。

「駄目ですよ立ち上がっては。今目が覚めたばかりなのに」

「大丈夫ですよ。だるくもないし」

「そうは言っても駄目です。ほのりさんは三日も寝てたんですよ!」

「え?」

思わず声が漏れた。どうやらあの白い部屋とこの世界の時間感覚は違うらしい。

「でも、いつ敵が来るか……」

「大丈夫です」

ルシーは両手でほのりの手をつつむ。

「再びマギーサが来ても対応できるようにこの三日間で防衛システムを強化しました。

それに動かなくても、お二人が暇をすることはありませんよ!

お二人が全快するまでに、私がスキルや魔王についても基本的な情報をお教えします!」

ルシーは胸を張ってそう宣言した。

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