第81話 ワールド2

<『ハコニワ』の人口が10万人を越えました。『ハコニワ』が進化します>


 進化! 何それ?

 はじめての事だけど何があるんだ?


<進化特典により『毒』、『麻痺』、『重力』、『雷』属性を獲得しました>

<『毒矢』スキルは『毒』属性に統合されました>

<『重弾』スキルは『重力』属性に統合されました>

<進化特典により『譲渡』、『付与』スキルの回数制限が撤廃されました>

<進化特典により『転移』スキルの必要MPは5000となりました>

<進化特典により『強化』スキルを獲得しました>


 なんだか色々と突っ込みどころがあるけど、属性って6種類しかないとかシーナは言ってたはずだけど。

 凄い増えているな。

 『ハコニワ』が強引に作ったってことか?


<『ハコニワ』の進化により上条錬夜は、この世界の現出限界を超えるため『封印』のスキルを獲得しました>

<『封印』によりHP、MP、攻撃力、防御力、魔力、俊敏はすべて5000Kに固定されました>


 えーと、ステータスが高くなりすぎるから封印するってことか?

 

<『ハコニワ』の進化によりワールド2が誕生しました。発現させますか?>


 ワールド2! なんだよそれ。

 もちろん発現するよ。


(はい)


 俺の前にいつものキューブ『ハコニワ』が浮かんだ。


<発現完了。ワールド2をメイン表示としました>


「レンヤさん。どうされたのですか?」

「どうかしましたか?」


 急に『ハコニワ』を発現したから二人は驚いているようだ。


「ああ、なんでも俺の能力が進化したみたいなんだ」

「進化ですか?」

「ああ、そうらしい」


 たぶんキラービーを大量に倒してドロップアイテムを獲得したせいだろう。

 進化条件を満たしたようだ。


 『ハコニワ』の中を覗いてみると小人さんが5人しかいない。

 建物も家が一軒あるだけだ。

 5人は畑を耕している。


 たくさんいた小人達も建物も無い。

 前の世界の『ハコニワ』とは人種も服装も違う。

 完全に別の世界なのだろう。


「この前見た時より威圧感がありませんわ」

「そうですね」

「ああ、進化で別の世界ができたみたいなんだ。この前見たのとは違う世界だ」

「違う世界ですか? 田を耕してますわね……」

「か、可愛いです」


 二人が見ても圧力を感じないようで平気そうだ。

 産まれたての世界だからだろうか。

 周りに妙なプレッシャーが、かからないのはいいことだ。


「前の『ハコニワ』も始めはこんな感じだったよ」

「そうなのですね。何か特別なことができるのでしょうか?」


 シーナとネネは食い入るようにワールド2を見ている。

 『鑑定』しても鑑賞用と出るだけでこちらからは何もできない。


「どうなんだろう。スキルと能力は強化されたけど、それ以外はよく分からないな」

 

 今まで通りのことは出来るとはおもうけど。

 『ハコニワ』の世界が一つ増えただけってことなのか。


「でもレンヤさん強くなられたみたいですわ。前も強かったのですけど何て言うか安定感が出たような感じといいますか……」

「そうですね。少し印象が変わりましたね……」

「そうなんだ」


 手や体を見ても特に変化はない。

 まあ自分ではよく分からないけど二人が言うならそうなんだろう。


「二人は怪我はしていないか?」


 キラービーとの戦いは物量戦だったからな。

 二人に怪我がないか心配だ。


「はい。魔導具もありましたし問題ありませんわ」

「はい。私も怪我はありません」

「そうか。よかった」


 あれだけの戦いで怪我もしないんだから二人共強くなった。


 あの魔導具は魔力の壁が作れるものだったけど意外に使えたようだ。

 キラービーの攻撃から二人を完全に守れていた。


 あれは術者の魔力とMP残量で性能が変わりそうだ。

 ネネのレベルが上がっていたのがよかったのだろう。

 一般の冒険者が使ってもここまでの性能を引き出すことは難しいはず。


 ネネの力は人外レベルまで来ているのかもしれない。

 もちろん更に魔力値の高いシーナもだけど。


「これでアヤメの依頼は達成だな」

「はい。討伐できてよかったですわ」

「はい。レンヤさんドロップアイテムは何が獲れたのですか?」

「ああ、確認してみるよ」


 スララに回収してもらっているから確認してなかったな。

 俺はインベントリを開ける。

 最近『ハコニワ』はドロップアイテムを全部吸収しないで、ある程度残しておいてくれるようだ。

 気配りができる能力って何だか不思議な気がする。

 

「キラービーの外殻とか針とかだな。あっ、蜂蜜もあるな」

「蜂蜜ですか。いいですね!」

「素敵ですわ!」


 女性だからなのか二人は甘い物が好きみたいだ。

 喜ぶ二人。


「なめてみるか?」

「「はい!」」


 間髪を入れず答える二人。

 こくこくとうなずく。


 『ハコニワ』に小さめの器とスプーンを木で作って貰い二人に渡す。

 

「んん、美味しいですわ!」

「美味しいです。シーナ様!」


 幸せそうな顔をして二人は蜂蜜をなめている。

 戦いの後の報酬なのでいいだろう。


 確かに美味い。

 体力とMPの回復効果もあるみたいだ。

 

 蜂蜜のおかわりを二人に渡しながら俺は『ハコニワ』のワールド2について考える。

 今までの『ハコニワ』の発展とは何かが違う。

 

 何か意味があるような気がしている。

 まあこれから調べていくしかないか。


 俺達はキラービーの討伐に成功した。

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