第80話 進化
それから俺は何回か指揮官のキラービーを狙い矢を放つ。
その度に他のキラービーに邪魔をされ当たらない。
弾道を曲げたり属性を変えて放っても上手く躱される。
指揮官は矢の軌道を変えられない場合は自らが動いて避ける。
その間にも他のキラービーは魔力の壁にぶつかってくるけどネネが通さない。
「うー、気持ち悪いです」
とか言っているけど完全に攻撃は防いでいる。
群がってくる蜂の魔獣は苦手なようだけど。
どちらも決定力に欠ける展開になっている。
「いったい何匹いるのでしょう?」
シーナは魔法を撃ちながら聞いてくる。
「たしかに。結構な数を倒したんだけどな」
まだまだ数が減った気がしない。
隊列を組んで襲いかかってくる。
あの巣からどんどん出てくるようだ。
「やっぱり巣を叩くしかないな」
「ここから狙うのですか?」
「ああ、大きいのを撃ち込む! シーナは陽動、ネネは魔力壁を保ってくれ」
「「はい!」」
「あとネネ、俺が合図したら魔力壁は解除してくれ!」
「!? わ、分かりました」
ネネは驚いた表情をしたけど同意してくれた。
さっき強い攻撃を仕掛けた時に魔力壁が一瞬揺らいだ。
内側からの攻撃は通すとはいえ魔導具にも限界があるのだろう。
今からおこなう攻撃は今までの比ではない。
下手すれば魔導具が破壊される。
解除するのが賢明だろう。
(『風』『炎』『水』『土』『光』・『纏』!!)
俺は各属性の魔力を一気に纏う。
魔力を高め威力を上げる。
ここら辺はもう手慣れたものだ。
それを《魔弓》に注ぐ。
すると前方に魔法陣が形成されていく。
一つの魔法陣に魔力がチャージされると更に前に一回り大きい魔法陣が作られ、どんどん増えていく。
数は数十枚ってところか。
矢を引き絞る動作をおこなうと魔法陣がさらに数十枚追加されていく。
凄まじい魔力が《魔弓》に集まる。
キラービー達は巣を守るように隊列を組む。
こちらの異様な魔力の高まりに警戒心が上がっているようだ。
「二人共魔力で目と耳を守れ!!」
シーナとネネは言われた通りに魔力を集める。
「スララ!!」
待機していたスララが『発光』と『音弾』を放つ。
辺りに強烈な光と音が広がりキラービー達の動きを止める。
さすがにこの中で奴らも動けないだろう。
(リトル!!)
分裂して待っていたリトルは八方向から指揮官をめがけて『炎槍』を撃ち込む。
一発で海賊船を蒸発させたあの攻撃だ。
『探知』で捉えている場所へ撃ち込んでもらう。
指揮官に防御させて巣を守らせない。
音の波が去った後、俺は指示する。
「ネネ! 解除だ!」
「は、はい!」
まだ発光している中でネネは魔力壁を解除する。
(『変化』『重弾』『炎弾』!!)
俺は同時に攻撃の矢にスキルを追加する。
「いっけぇ! はっ!」
『探知』で矢の軌道を確認する。
放たれた矢は数十枚の魔法陣の中心を通り加速、辺りに射出音が響く。
高エネルギー体と化した矢はキラービー達を巻き込み一瞬で巣に到達すると、ど真ん中に直撃し貫いた。
指揮官はどうすることも出来なかったようだ。
光が収まると巣には、ぽっかりと大きな穴が空いている状態で反対側が見える。
その穴が外側にじわっと大きくなっていく。
さらに炎の蛇のようなものが穴から大量に出て巣を覆う。
巣は下に引っ張られるように地面に叩きつけられる。
炎の蛇は巣を飛び出し、辺りにいるキラービー達に伝播していく。
ある者は蒸発しある者は地面に落とされる。
「な、何ですかあれは? れ、レンヤさん!」
「勝手に蜂達を倒していってるみたいです!」
稲妻のようにキラービー達に広がっていく炎の蛇に二人は驚く。
「ああ、あれは魔力を変化させて炎と重力操作を持たせたものだ」
炎の蛇に弱い個体は一瞬で燃やされ、ある程度強い個体は耐えるけど、結局地面に落とされ焼き尽くされる。
「きょ、凶悪ですわね……」
「は、はい……」
キラービー達は炎の蛇になす術がなくやられていく。
ガードすることも逃げることも許されないのは確かに凶悪かもしれない。
巣の近くにいた指揮官も消滅したようでキラービー達の動きもバラバラのパニック状態だ。
「残りを殲滅するぞ!」
「「はい!」」
炎の蛇でも取りこぼす個体がいたので、それらを三人で狩っていく。
大量のドロップアイテムがばらまかれている。
もう既にスララは回収に動き始めているようで忙しなく動きまわっているようだ。
さすがだな、任せた。
「大体片付いたかな?」
「ええ、そうみたいですわ」
「大丈夫そうですね」
残りのキラービー達も倒せたようだ。
『探知』で探ってもいない。
依頼達成だな。
その時頭の中に声が響いた。
<『ハコニワ』の人口が10万人を越えました。『ハコニワ』が進化します>
進化! 何それ?
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