第82話 蜂蜜

 キラービー討伐後の帰り道で俺は検証する。


 今回の進化特典で属性スキルが増えた。

 まとめるとこんな感じだ。


 ―属性スキル―

 『風』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『炎』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『水』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『土』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『光』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『毒』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『麻痺』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『重力』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『雷』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)


 9種類になった。

 攻撃のスキルはいいとしても纏と盾の毒とか麻痺ってなに? って感じだ。

 麻痺の盾……うーん、まあスキルとして確立されたから使えるのだろう。


 あとは回数制限があった『譲渡』、『付与』は制限がなくなった。

 俺が持っているスキルなら何人にでもあげることができる。

 デタラメな能力だ。


 『転移』スキルの必要MPが5000になったけど、MPが余っている俺にはあまり関係ない。

 誰かに『譲渡』した時に威力を発揮するな。


 あとは『強化』か。

 

 『強化』あらゆる事象を強化できる。


 何気に凄い能力かもしれない。

 あらゆる事象ていうのが凄い。


 そして『封印』だな。


 『封印』力を抑える。調整可能。


 『偽装』とも似ているけど違う。

 見せかけだけでなく実際に抑えるようだ。

 それだけ俺の力が強大になったってことなのだろう。


 まあ色々と増えたけどやっぱり『ハコニワ』が二つの世界になったのが大きい。

 前の世界とは別に新たな『ハコニワ』が追加された。

 とりあえずこれから獲れるドロップアイテムはワールド2に入れようとおもう。

 成長させないといけないからな。


 今はよくわからないけど、成長させれば何か変化があるだろうし、新たな発見も出てくるはずだ。

 


「あれは先程の兵士達ですわね」


 俺が物思いにふけっているとシーナがそんなことをいう。

 見れば三人の兵士がいる。

 先程の場所に戻ってきたみたいだ。


「あんた達無事だったんだな。凄い音がしていたから心配してたんだ」


 結構派手な戦いだったからここまで音が聞こえていたようだ。

 スララは『音弾』も使ったからな。


「ああ、なんとか討伐できたよ」

「本当か! 凄いな。あの魔獣を討伐するとは、やはりギルドマスター直轄のカードを持っている者は違うんだな」

「全て討伐できたと思うけど確認してくるか?」

「ああ、報告しないといけないからな。一応確認させてもらう」


 そういうと年配の兵士は若い兵士二人に何かを伝えている。


「しかしあんた達も受けなくてもいい依頼をよく引き受けたもんだな。まあそれだけ腕に自信があったってことか」

「!? どういうことだ?」


 その兵士が言うにはキラービーは寒気がくれば自然にいなくなるとのこと。

 街道に巣は出来ていたけど迂回路もあったし無理に退治する必要もなかったとか。

 


「ってことらしいんだけど。どういうことだアヤメ?」


 街に帰ってくるとさっそくアヤメに確認してみた。

 やらなくてもいい依頼をやらされたのか。


「いやいや、商人があの街道を使えなくて困ってたのは本当なんやし」

 

 俺は黙って続きを促す。


「ほら、レンヤさん達の強さなら倒せるかなって思とったし、あんなのが道の真ん中にいたら危ないやろ?」

「まあ、たしかにな」

「うんうん、さらに経験値とドロップアイテムも入るんやから言う事無しやね」


 なんだか必死に弁解するアヤメをみると可笑しくなってくる。


「まあ、そうだな」

「もちろん成功報酬もあるから、いいことずくめやね」


 両手で小さくガッツポーズするアヤメ。

 なんだそれ。


「ああ、分かったよ。まあ強くもなれたしな。依頼をやってよかったよ」


 するとアヤメは、にっこりと微笑んで満足そうだ。


「やっぱりレンヤさんはアヤメさんに甘々ですわ」

「はい。激甘ですね」


 後ろの二人の言動はスルーしよう。


「そういえば、アヤメにお土産があったんだ」


 インベントリからキラービーの蜂蜜を取り出してアヤメに渡す。

 シーナとネネも美味しいといっていたからな。

 土産には最適だろう。


「これやこれ! 欲しかったんよ! 昔食べたとき美味しくてまた食べたいと思ってたんよ。ありがとうレンヤはん!」


 めちゃくちゃ喜ばれているんだけど。

 後ろの二人は甘々甘々と呪文のように繰り返しているけどスルーだ。


「アヤメ、まさかこれが欲しくて俺達に依頼をしたのか?」

「ま、まさか、そ、そんなことある訳ないじゃないですか」


 目を逸らすアヤメ。

 しゃべり方も標準語でしかも敬語になっている。


「おい、こっちを見ろ」

「そ、そんなことある訳ないじゃないですか」


 それだけを繰り返すアヤメ。

 しばらくアヤメと俺の目が合うことはなかった。

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