第75話 殺人蜂
「こんな感じで使ってみてくれ」
俺は台車の上に乗った2000枚の金貨を左手をかざしマジックバッグに収納する。
そこから500枚を取り出し台車に戻す。
「へえー、凄いもんやねー」
アヤメはしきりに感心している。
枚数もマジックバッグに入れてしまえば数えられるので取り出しも簡単だ。
きっちり2000枚あった。
アヤメも左手に付けてマジックバッグを試す。
「うわっ! 面白いなこれ! 凄いんよ! 本当に貰っていいんか?」
「ああ、いいぞ」
「ふふ、ありがとなレンヤはん!」
喜んでもらえているようで良かった。
アヤメは金貨を出したり入れたりを繰り返している。
「レンヤはんこの共有スペースっていうのはなんなん?」
「ああ、それは俺達三人のスペースでアヤメはまだアクセスできない」
「ふーん。そうなんやね。信頼を勝ち取らんとダメってことやね」
まあそんなに堅苦しい感じではないのだけれど、今は別々にしてある。
いずれは共有するかもしれない。
「マジックバッグとは素晴らしい物ですな」
なんだかマルティーロさんも欲しそうだ。
でも今回はアヤメの分しか作ってないからな。
「では私はこれで失礼いたします。今後とも当商会とアヤメのことをよろしくお願いいたします」
アヤメ、あとは頼むぞ! といって、深々と頭を下げ退出するマルティーロさん。
早いな、コカトリスのことも聞きそびれた。
まあ今のところ金には困ってないからいいか。
「急いで出て行ったのは、レンヤはんに売って貰った素材を早く売りたいからやろうなぁ」
「ああ、それでか」
「まあレンヤはんの相手は、うちがたっぷりさせてもらうから安心したってな」
流し目でそんなことをいうアヤメ。
「そういえばアヤメ、以前討伐して欲しい魔獣がいるって言ってたよな?」
俺は頬をかきながら聞く。
「そうそうおるんよ! 街道に巣を作ってしもうて困っているんよ」
「どんなやつなんだ?」
「うん。キラービーっていう蜂の魔獣やね。個体も巣も大きいし数も多いので強敵やね。ギルドにも依頼を出しとるんやけど、辺境なのと難しさで滞っているって感じやね」
「「「あっ!」」」
シーナはマジックバッグからギルドマスターに貰った書類をだす。
「これですわね!」
シーナは一枚の書類をテーブルにおく。
キラービーの討伐依頼書だ。
「ああ、未解決案件だったんだな」
「そうですね」
「なんや三人ともギルドでこの依頼を受けたんか?」
アヤメは不思議そうに聞いてくる。
「まあ、正式には違うのだけど一応そういう事になるかな」
俺達はギルドであったことをアヤメに話す。
正規会員ではないけど、タイミングが合えば依頼の手伝いをすることを。
「はあ、そんならギルドマスター直轄の特別なギルド会員ってことになるんやね」
「まあそんな感じだな」
「やっぱり三人は凄いんやな」
アヤメはしきりに感心する。
「アヤメが知っていることでいいので、そのキラービーの特徴を教えてくれないか?」
「もちろんええよ。キラービーは普通の蜂と比べるとかなり大きいくて、小さいものでも人間の頭ほどあるんよ。巣に近くなるほど大きな個体が守っとるらしいんよ」
何だか厄介そうだ。
「飛ばしてくる針には毒があって麻痺と神経毒が二種類、下手をすれば一撃で死に至る強力なものもあるらしいんよ」
さすが未解決案件だな。
厄介過ぎるだろ。
「一つの巣でかなりの数がいるし、魔力を纏っているから攻略は難しいみたいなんよ」
うーん。近づくの厳しそうだな。
遠距離からの攻撃で攻略するしかないのか。
「場所はアミール高原を過ぎて国境付近の街道やね」
アヤメは地図を広げ場所をしめす。
「ここからだとかなり距離があるみたいですわね」
「ああ、そうだな」
「キラービー以外にも到着するまで色々と魔獣がいるから準備はしっかりしとった方がええよ」
なるほど、聞けば聞くほど厄介な依頼だな。
危険度が高すぎて皆避けるのだろう。
近づきすぎて囲まれるのは不味いな。
遠距離攻撃用の魔導具を『ハコニワ』に作って貰うか。
とは言っても近代兵器とかはさすがにダメな気もする。
イメージすればなんでもできるけどタブーはあるはずだ。
まあ近代兵器を越えているスキルもあるけどな。
基本的にはこちらにある武器の延長で作った方がいい気がする。
「キラービーの毒に対抗できる物はあるのか?」
「抗麻痺薬と解毒剤、あと万能薬やね。でもある程度は効果あるだけで複数にやられたら無理やね」
「まあ、でもあれば少しは安心できるな。魔導具は何かないのか?」
「あるよ。うーん、治癒と解毒の魔導具とかがいいかもしれんね。あとはシールド系とかやね」
スキルで代用できそうだけど、こちらのアイテムや魔導具を使ってみたいからな。
『ハコニワ』に頼む新しい道具の参考になるかもしれない。
「この店に売っているのか?」
「もちろんや! 必要な物は当商会をご利用ください」
アヤメは自分の店のアピールをしっかり忘れない。
商魂たくましいな。
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