第62話 スピードキャノン

「『スピードキャノン』? それが大会の名前なのか?」

「はい、そうです。『スピードキャノン』は4年に一度開かれます。いま各国から参加者がこの街に集まってきております」


 なんだか大きい大会みたいだ。

 4年に一度ってどこの世界でも共通なのか?

 ちなみにシーナの話によると、この世界の一年は元の世界とほぼ同じということが分かっている。

 何故だか二つの世界は共通点が多い。

 

「けっこう有名な大会なんだな?」

「はい。優勝者チームには賞金も出ますし副賞も豪華です。またこの上ない名誉を手にすることができますな」


 賞金と副賞もあるのか、なかなか本格的だ。


「凄そうだな」

「それはもう凄いんよ。その期間はこの大陸はお祭り騒ぎやね」


 アヤメは嬉しそうに微笑む。

 毎回、大会を楽しみにしているのかもしれない。


「そうか。で、何をやる大会なんだ?」

「内容は冒険者たちによるレースですな。トレイル王国の東からスタートして西のゴールを目指す大会で一番早く到着したチームが優勝となります」

「へえ、冒険者たちのレースか面白そうだな」


 チーム戦なんだな。


「参加条件は厳しいのか?」

「いえ、3人以上6人以下のチームであれば問題ありません。冒険者である必要もありません」

「たしかに参加条件は緩そうだ」


 冒険者じゃなくてもいいのか。

 お祭り的な感じの大会なのかもしれない。


「冒険者のレースと言われていますが一般人でも参加できます。まあ強い者しか決勝に進めないので、おのずと魔獣と戦える冒険者がメインとなりますな」

「強さが必要ってことか」

「そうですね。それゆえに冒険者の大会と言われています」


 冒険者がどれぐらいの強さか分からないけど俺もシーナもネネも魔獣と戦ってきたからな。

 他の冒険者たちに引けを取らないはずだ。


「じゃあ俺達でも参加できるな」

「そうですね。海賊をお一人で倒せるレンヤさんなら強さも問題なさそうです。出てみるのもいいかもしれませんな」


 賞金も副賞もあるみたいだし面白そうだ。

 俺が見たことのないスキルを持っている者に会えるかもしれない。

 いや、そんな大きな大会なら間違いなく持っている人物がいるだろう。

 スキル収集のために参加するのもいいな。


「いつから予選は始まるんだ?」

「ちょうど一ヶ月後に始まります。まだ受付をしていますので説明も兼ねてギルドにいってみるのもいいかもしれませんね」


 なるほどギルドで受付しているのか。

 これは行ってみるしかないな。

 大会がなくてもギルドは普通に興味があるので是非行ってみよう。


「シーナとネネも大会に参加してくれるか?」


 二人は嫌がるかもしれないしな。確認しておこう。


「はい。レンヤさんが参加するなら、わたくしも参加いたしますわ」

「はい。私も参加します」


 シーナもネネも快い返事をくれる。


 あとは詳しいことはギルドで確認するか。

 これだけ大きな大会なら街の人たちも知っているだろうから、情報収集も兼ねて街を探索するのもいいだろう。


「この大会は毎回トレイル王国でやっているのか?」

「そうですね、やっております。東西に長いこの国がレースに適しているということで毎回このトレイルで行われていますな」

「そうか。伝統ある大会なんだな」


 だったら情報も集めやすそうだ。

 4年に一度そんな大会を街で行っていれば凄い経済効果だろう。

 この国は他の国より発展しているのかもしれない。


 たぶんケット・シーのアルルも大会参加者なのだろう。

 仲間もいたし俺を参加者と勘違いしていた。

 後からきた人物がチームのメンバーの一人なのだろう。

 服にチームのマークもあったしな。


「参加者は一ヶ月も前に現地に入るものなのか?」


 早すぎる気もするのだけど。


「そうですな。参加者によって違いますが国をあげて参加しているチームは、早く入国して調整したり物資を調達してますな」


 物資調達か、サバイバル的な大会みたいだから装備品や道具とかだろう。

 俺もインベントリに色々と入れて準備したほうが良さそうだな。

 スピード勝負の大会ならインベントリがあれば大きなアドバンテージになりそうだ。

 普通は荷物になるから持っていけないものも俺なら持っていける。

 必要そうな物はどんどん入れておこう。


「大会期間はどれぐらいなんだ?」

「ええ、その時にもよるのですが、予選と本選あわせて結構長い期間やってますな」


 早く着いたもん勝ちみたいな大会のようだから期間もバラバラなのだろう。

 到着者が出たら終了みたいな感じか。


「分かった、ありがとう詳しいことはギルドに行って聞いてみるよ」

「そうですね。今日はもう遅くなりましたので、うちの系列の宿屋にお泊まりください」

「ああ、悪いな」

「アヤメ送って差し上げなさい」

「了解や!」


 俺達は宿に向かうことにした。

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