第54話 到着

 船に飛び降りるとみんなが待っていた。

 《魔手》で強引に降ろしたから口々に言っている。


「びっくりしましたわ」

「後ろからギュッと掴まれた感じでした」

「何回やられてもびっくりやね」


 等々、わいわいやっている。


「レンヤさん今私たちを運んだ、その《魔手》ですか? 私の『魔装』みたいに武器化も可能ではないですか?」


 ネネがそんなことを言ってきた。

 《魔手》は魔力を『変化』と『硬化』で強化してできている。

 あとは形を武器にすればいいだけだ。

 だから『魔装』みたいなことは可能だとおもう。


「たぶん可能だろうな」


 俺はネネの問いに答える。


 まあ『魔装』を分析して通常スキルとして使えるようにすれば、いいような気もするけど。

 魔人であったグエン、その特別スキルである『転移』を覚えられた実績もある。

 だから『魔装』もスキルとして得られるはずだ。

 どちらにせよ魔力の武器化は出来そうなのでやってみたい。


「じゃあそろそろ出発しようか」

「やっとうちの街に帰れるんやね」

「そうだな。アヤメ案内頼むな」

「了解! 任せといてや」


 ん? そういえば海でどうやって方向が分かるんだ?


「アヤメ帰り道は分かるのか?」

「ああ問題あらへんよ。これがあるからね」


 すると首にかけていたペンダントを見せてアヤメはいう。 


「《賢者の指針》っていう魔導具や。対のペンダントがあってその方向を針が指すんや」

「へえ凄い便利な魔導具だな」

「せやね。昔の偉い賢者はんが作ったとか言われてるん。作製したのはレンヤはんと同じ越境者様かもしれへんね」

「どれくらいの距離を離れて大丈夫か分かれへんけど、今のところ問題になったことはあらへんよ」


 その賢者も凄い物を作ったものだ。

 せっかくなので俺は『分析』かけておく。

 賢者の技術が凄すぎなければ『ハコニワ』が作ることができるだろう。


「じゃあレンヤはん、トレイル王国はあっちやね」


 そういいながらアヤメは白く細い指で行き先を指さす。


「了解!」


 俺はアヤメの指示の方向に舵を切る。


 暖かな天候で波も穏やかな海は気持ちがいい。

 船の旅は順調に進む。



 先程、海兵との戦いを見たけどシーナとネネは確実に強くなっていた。

 一般人レベルだと彼女たちに勝てる者はそうそういないだろう。 

 魔獣とばかり戦ってきたからな。

 二人とも結構な強さになった。

 まだまだ伸びしろがありそうなので楽しみだ。


 俺の方も収穫があった。

 コモンズが持っていた『土纏』を分析できたので、使用可能だ。

 いままで土属性は持っていなかったからな。


 さらに持っていなかった違う属性の矢と槍を『風』に転用できた。

 先程使った『風矢』と『風槍』のことだ。

 つまり属性間で形態を統一できた。


 属性スキルだけ見てみると、こんな感じだ。


 ―属性スキル―

 『風』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『炎』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『水』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『土』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)

 『光』(纏・盾・弾・刃・矢・槍・牙)


 5種類の属性で7種類の形態が選べるようになった。

 これは凄いことだと思う。

 形態も綺麗に並べ直した。


 たしか属性は6種類だから、あとは闇属性だったな。

 全属性コンプも見えてきた。


 属性の後についている形態もまだまだあるかもしれない。

 探してコンプリートを目指そう。


「こんなにみんな強いんなら、今度うちの依頼を受けてもらえへん?」

「? ああ俺達で出来るなら構わないけど、どんな内容なんだ?」

「ええっとな、商品の輸送路に魔獣が巣を作ってしもうて、まあ簡単に言うとその魔獣を討伐して欲しいんよ。もちろん報酬は弾むわ」


 魔獣討伐なら問題なさそうだな。

 魔境島でも散々やっていたし得意分野と言ってもいいだろう。


「アヤメの国では商人が討伐の依頼を出すのか?」

「いやいや通常はギルドから依頼は出とるよ。今回は直接交渉やね」


 アヤメの国ではギルドと呼ばれる依頼斡旋の組織があるようだ。

 普通はパーティーを組んでギルドに登録してギルドから依頼を受ける。

 依頼が達成されるとギルドから報酬が出る流れのようだ。


 依頼元はギルドに依頼して、ギルドは依頼達成可能そうなパーティに割り振る。

 報酬はギルドの取り分を差し引いた金額がパーティーに渡されるそんな感じみたいだ。


「レンヤはんはギルドに登録してへんやろ? だから今回は直接の依頼やね」

「ああ分かった。ギルドは登録した方がいいのか?」

「うーん。一概にはいえへんね。登録すれば色々と恩恵もあるんやけど義務も発生するから人それぞれやね」


 登録するかは別にして話を聞くぐらいならいいだろう。

 今度聞きにいってみるか。


(たいりくがみえたよー)


 周りを飛び回っているリトルと一緒のスララから連絡が入る。

 大陸を見つけたようだ。

 多分それがアヤメの言っていたトレイル王国なのだろう。


 そのまま進んでいくと大陸が見えてきた。

 魔境島とは違いかなり大きな大陸のようだ。

 遠目からでもその大きさは分かる。


 いよいよ初めての大陸、初めての街に到着だ。

 楽しみでわくわくしてくる。

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