第8話『ハコニワ』の可能性

 しばらくすると光が収まってきた。


 しかし最後まで変な奴だったな。

 エヴァンから『伝道者の加護』ってやつを貰えた。

 どういったものなのかと確認してみると。


 『伝道者の加護』:運が上がる。


「シンプルだな」


 エヴァンの加護なら攻撃とかが強化されても良さそうだけど。運か……。

 まあ運があるって大事だし有難くいただいておこう。


 で、現在の場所なのだけれど、周りは木に囲まれている。

 それほど高い木ではないので光が差し込み明るい。


(森の中か?)


 ダンジョンの入口など見当たらないので転送されてきたのだろう。

 さっきのところにはもう戻ることはできない。

 周りに人や魔獣などの気配はしないようだ。


 とりあえず腹ごしらえと『ハコニワ』のスペック確認をしようと思う。

 ドタバタしてたので魔核とか入れっぱなしでそのままだしな。

 もっと色々とできることがあるかもしれない。


<『ハコニワ』より《おしながき》が届きました>


 インベントリを開け《おしながき》を見てみる。


(おお~! 色々なメニューがあるな!)


 初めはパンと水だけだったことを考えると随分と増えた。

 俺はおにぎり(鮭)と(昆布)それに味噌汁を注文。


 するとすぐにインベントリに反映される。


 取り出すとおにぎりは竹の皮に包まれていた。

 味噌汁は器に入れられていて、大きめな具材が入っていて熱々だ。

 しっかり箸も付いている。


「美味い!」


 どれも味が良くて見た目もこだわっているみたいだ。

 食事が楽しめるのはありがたい。

 『ハコニワ』の料理人に感謝だな。


 そういえばスララは何食べるのかなと見てみると……。 

 ……たぶん、草とか鉱石を食べていると思う。  

 通ったところの草がなくなっているし、土や石に穴が空いている。


 不思議な生き物だ。 


 スララが食べれるものも『ハコニワ』にお願いしておこう。


 『ハコニワ』のスペックだけれど、これが面白い。

     

 小人の人口が1600人になったからなのか色々な物が出来ている。

 武器、防具屋はもちろん道具屋、料理店、教会等々……。

 さらに鉱業、農業、林業、漁業などに従事している者も見られる。

 それらを繋ぐ道路も整備され、運搬などインフラも確立。


 近代的とは言えないけれど、一つの街としてしっかりと機能している様だ。


 小人さん達が動き回るさまは見ていて楽しい。

 働いている姿は、なんだか可愛く見えてくる。

 たまに小人さんと目が合う気がするけど気のせいか?

 

 これからもどんどん発展していきそうなのでわくわくする。


 あとはグラスウルフとサンドワームも本体作製が可能になっていたはず。

 なので二体とも作製してみた。けれど今回召喚はしていない。


 じつは『ハコニワ』内で立体像が見える機能があった。

 3Dビューアーの様に立体物をくるくる回して確認できる。

 拡大縮小も可能なので召喚しなくてもどんな魔獣かわかるようになった。


 まあ一度戦っているので知っているのだけど、より詳しく見ることができる。

 

 サンドワームは大きすぎるし、グラスウルフも今のところ待機だ。

 現在は『ハコニワ』内の魔獣区画で管理。


 囲いの中で魔獣たちは大人しく生活中だ。

 小人さん達を襲うことはない。

 迷惑は掛けていないようなので良かった。


 それぞれの魔獣のドロップアイテムから作った装備品もなかなかいい。

 防御力もあるし見た目もおしゃれだ。

 武器も特殊能力があるので楽しい。


 魔獣や装備品も近々お披露目できたらなと思う。


 あと気になったのが魔獣本体と装備品の関係だ。

 魔獣本体のレベルが上がると、装備品の効果も上がることが分かった。

 装備品はインベントリに保管すると強化されるけれど、上限は本体魔獣のレベルまでってことだ。


 スララを例にするとスララのレベルは400なのでHPから俊敏まで+400の補正が付く。


 これは種族の問題でスライムラッシュは全部のステータスが補正される。

 グラスウルフだったら俊敏が、サンドワームはHPと防御力に大きな補正がされたりする。


 なので現在はバランスのいいスライムラッシュの装備にしている。


(かたよったステータスも面白いんだけどな)


 そうそう魔獣本体を作ったことにより特別スキルに新たな効果が追加された。     

 

 こんな感じだ。


 **************************

 名前:上条錬夜

 種族:人間


 LⅤ :1

 HP :5250/5250(+400)(+1600x3)

 MP :5207/5207(+400)(+1600x3)

 攻撃力:5208(+400)(+1600x3)

 防御力:5205(+400)(+1600x3)

 魔力 :5207(+400)(+1600x3)

 俊敏 :5209(+400)(+1600x3)

 

 ―スキル―

 『言語』『探知』『鑑定』『インベントリ』

『風牙』


 ―特別スキル―

 『ハコニワ』人口1600人、魔獣種3体


 ―恩恵―

『伝道者の加護』


 ************************** 


 どーんと強くなった。俊敏だけならスララを超えたよ。


 『ハコニワ』に魔獣種が追加された。

 これは倒した魔獣の種類数だと思う。

 

 ステータス効果は人口x魔獣種のようだ。

 それが全体にプラスされる。


 エヴァンや女神には簡単にやられてしまうだろけど。

 結構強化された。順調なんじゃないかな。


 どんどん魔核を入れて強化していこう。


 しばらくすると日が暮れてきて辺りが薄暗くなってきた。

 こちらに来て初めての夕焼けだ。


(本当にダンジョンから出られたんだな)


 まあ昼夜があるダンジョンとかだったらどうしようもないけど。

 そこは考えても仕方がないので寝ることにする。


 スララに確認するとスララは特に毎日寝なくても大丈夫らしい。

 魔獣って不思議だなと思いながら今夜の見張りをお願いする。

 もしかしたらスララが特別なのかもしれないけれど。


 スララとは会話ができる訳ではない。   


 はたから見るとスララはぷるぷるしているだけだ。

 けれど俺には何となく意思が伝わってくるし俺の思いも伝わる。


 これも『ハコニワ』効果の一つなんだろう。


 ウイングボードの上に枕と毛布を一枚敷いて、もう一枚を上に掛ける。

 もちろん枕と毛布も『ハコニワ』産だ。


 装備品は着たままだけれど、寝られそうなので良かった。

 魔獣が出た時にすぐに対処できないと命に係わるので仕方がない。


「じゃあスララ見張りよろしく。おやすみ」


 スララはぷるんと返事をした。 

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