第7話 伝道者
「僕はね伝道者って言われているんだよ。上条錬夜」
「伝道者?」
「そうそう。越境者が条件を満たしたらクリア報告してあげるとか、そんな役割を担う者だよ」
なるほど。こいつも神とかそれに近い存在ってことか。それならばあの強さも納得だ。
「じゃあここはまだダンジョンってことなんだな……」
確かに言われてみればおかしな点はあった。
太陽が昇りっぱなしで夜にならなかったり人や村がなかったり。
不思議には感じたけど、こちらの世界はそういうものなのかと思っていた。
「クリア条件は他にも色々あったんだけどね」
エヴァンは楽しそうに言う。
「どの方法でクリアしても僕と最後に戦う訳だけどね」
結局は手のひらの上ってことか。
「そういえばその小瓶の中身はなんなんだ」
俺は砂の上のそれを指さす。
「ああ、スララだっけ? その子の魂みたいなものだよ」
「えっ!」
「ほら、君の能力なら復活とかできそうだからとっておいたよ」
マジか! 戻せる可能性があるのか!
「あの女の我儘に付き合うのだからサービスだよ」
「そういえばあの女神はエヴァンより強いのか」
エヴァンは少し考えると言う。
「むかつく事にね。君はあの女を倒したいのかい?」
「まあ倒したいと言うか、戻ってぶん殴る約束をしたからな」
「はは、何それ。面白いね君」
エヴァンに手も足も出ない現状では厳しいけどな。
さらに戻る方法も分からない。
なのでこちらの世界で自身の強化と帰還方法を見つけないといけない。
「うん。面白いよ」
エヴァンは心底面白そうに笑う。
「じゃあ少しヒントをあげよう」
ずいぶんと親切なことで、まあ聞くけどね。
「君の場合強くなることと、世界を渡ることはそんなに違いはないってことかな」
「どういうことだ?」
「ふふ、その先は自分で考えてみてよ」
そう言うと俺に背を向け歩いていく。
「あっそうだ、あのスライムを君の能力で復活させてみてよ」
思い出したかのようにエヴァンは振り向き言う。
「そうだな」
さて復活にあたり『ハコニワ』の能力を使うのは間違いないだろう。
というかそれしかないはず。
じゃあどう使うか。
俺は砂の上の小瓶をつかむ。
インベントリに入れるか『ハコニワ』に吸収させるかのどっちかだろう。
インベントリは『ハコニワ』産のものなら指示がなければ自動で修理と強化が可能。
いけるような気もする。
だが現在のスララは魂のような状態だ。
だから直接『ハコニワ』に吸収させて肉体を再構築するのが正解だと思う。
<『ハコニワ』に《スララの魂》を与えますか?>
はい。『ハコニワ』発動。スライムラッシュ(スララ)作成。
<召喚しますか?>
はい。
以前と同じで地面に魔法陣が浮かびスライムラッシュがゆっくりと出てきた。
「スララ……?」
出てきたスライムラッシュはその場でぷるぷるしている。
「スララじゃないのか?」
スライムラッシュはぴくっとなると、俺の胸に飛び込んできた。
抱きとめたその時、俺は分かった。
「……スララお帰り」
スララは復活した。
スララを地面に降ろしステータスを見てみると……。
**************************
名前:スララ(神の従魔)
種族:スライムラッシュ
LⅤ :400
HP :12000/12000
MP :12000/12000
攻撃力:12000
防御力:6000
魔力 :6000
俊敏 :4200
―スキル―
『突進』『発光』『風牙』『音弾』『回復』
**************************
レベルが変わってないのに物凄く強くなっている。
これはあれか。死んで復活するとパワーアップするやつか。
もうスララだけでサンドワームも倒せるだろう。
復活の嬉しさかパワーアップの成果を褒めて欲しいのか、スララはぽよんぽよんと跳ねまわる。
俺はよしよしとスララの頭を撫でながら、元気に戻ってきたことの嬉しさを噛みしめる。
一応俺のステータスも確認しておくか。
**************************
名前:上条錬夜
種族:人間
LⅤ :1
HP :2050/2050(+400)(+1600)
MP :2007/2007(+400)(+1600)
攻撃力:2008(+400)(+1600)
防御力:2005(+400)(+1600)
魔力 :2007(+400)(+1600)
俊敏 :2009(+400)(+1600)
―スキル―
『言語』『探知』『鑑定』『インベントリ』
『風牙』
―特別スキル―
『ハコニワ』人口1600人
**************************
うんうん。スララには及ばないけれど俺も強くはなっている。
しかしレベル上がらないな。相変わらずレベル1のままだよ。
もしかしたら『ハコニワ』に経験値を吸い取られているのかもしれない。
まあ『ハコニワ』がどんどん便利になっているからいいけれど。
「本当に復活できたみたいだね。やっぱり君の能力は面白いよ」
復活を目にしたエヴァンは言う。
「さて面白いものも見れたし、そろそろお別れかな」
俺とスララの足元に魔法陣が広がる。
エヴァンにスララをやられた時はぶち切れたけど、つかみどころがない奴だった。
伝道者とか言っているけれど妙に干渉してくるし、どこか憎めない感じだ。
「また会えるのか?」
俺はエヴァンに聞く。
「さあ、君が成長できたら会えるかもね」
いたずらっぽい笑顔は相変わらずだ。
「最後に言っておかなければならないことがあるんだよ」
また意味深なことを言い始める。
「なんだ?」
「まあ、決まりみたいなものだよ」
両足をそろえ、両手を前で重ね腰を曲げるエヴァン。
真面目な顔を向けて言う。
「あなたのこれからの旅が、幸多からんことをお祈りします」
俺とスララは光に包まれた。
<恩恵『伝道者の加護』を得ました>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます