異世界に飛ばされたけど『ハコニワ』スキルで無双しながら帰還を目指す

第5話 ウイングボード

　どれぐらい飛ばされたのかは分からない。

　だけどスララは兎も角、俺は落ちたら死ぬのは間違いないだろう。

　今の装備で落下の衝撃を吸収できるとは思えない。

（これもあの女神の仕業なんじゃないか！）

「『ハコニワ』！」

　能力発動。ここは能力頼みしかないだろう。

　その間にも俺達は落下している。

「ぐぐっ……」

　落下スピードは速い。数秒、数十秒で地面に激突だ。

　しかし現状何もできない。

　近くにいたスララを背中に乗せ、両手両足を広げて風を受け落下速度を落とす程度しか。

　あまり意味が無い気がする。

　俺を追い込むのがあの女神の趣味なんじゃないか？　と勘繰るぐらいこちらに来てから命の危機ばかりだ。

＜『ハコニワ』より装備品が届きました。装備しますか？＞

「きたあああーーー！！」

　それは落下している俺の目の前に現れた。

　俺はそれに大の字に突っ込んだ。背中でスララのぽよんとした感触が当たる。

　しなる材質なのか衝撃を上手く吸収し俺達は無事だった。

（なんだこれ？　浮いている……）

　鑑定してみると＜ウイングボード＞と表示された。

　魔力調整により空を滑り登ることができる。

　光のエフェクト有り。デフォルトはオン。とある。

（とりあえず助かった）

　ボードの形は長方形の板状で、俺の身長ぐらいの長さぐらいあり幅は肩幅より少し大きい。

　四隅に大きめの丸みが付いている。

　人が３人座れるぐらいの大きさだ。

　スララと座り下を見る。

「あいつか！」

　俺達を上空まで飛ばした犯人は大きな口を開けて、落ちてこない獲物を待っている。

　胴回りが１０メートルぐらいもあり、大きな口のあるミミズみたいだ。

　半分ぐらい砂に埋まっているので全体像は分からない。

　まあ人間なんて簡単に食べられるだろう。

　鑑定すると、サンドワームと出た。

　ＨＰが１００００、防御力５０００もある化け物だ。

　とは言えこちらの攻撃力が１００だったとしても、相手の受けるダメージはゼロではない。

　まあ化け物級なのは間違いないけれど。

　サンドワームは口を閉じるとゆっくりと身体を引く。

　そして勢いをつけながら口を開くと何かを飛ばしてきた。

　巨大な砂の塊だ。

　物凄い速さでこちらに向かってくる。

「まずい！」

　ボードに立つと魔力を込める。

　スピードが上がり砂の塊をぎりぎり躱す。

（あ、危なかった！）

　直撃していたらただでは済まなかっただろう。

　通り過ぎた後にキラキラとした光が見えては消える。

（あれが光のエフェクトか）

　ゆっくりとボードの性能を試したいけれどそうも言ってられない。　　　　　

　感覚だけで何とか操作を覚えていく。

　その間にも砂の塊が打ち込まれる。

　小刻みにステップしながら躱して反撃の糸口を探す。

「スララ！」

　スララに『風牙』で反撃してもらうも射程外だ。

　もう少し奴に近づくしかない。

　サンドワームの攻撃が激しさを増す。

　連続して砂を飛ばしてくる。

　大きく旋回しながら連撃を躱す。

　エフェクトで光の輪が奴の頭上に出来上がった。

　インベントリから剣を出しながら一気に急降下して近づく。

　砂の弾幕を左右に躱しながら射程内に潜り込む。

「おらっ！」

　剣戟とスララの『風牙』でサンドワームの体力を削る。

（あれ？　剣の射程が伸びてる？）

＜『ハコニワ』産の製品はインベントリに保管すると指示がない場合は修理、強化されます＞

　だからか！　思った以上に刃が食い込んだ。倍は伸びた感覚がある。

　スララが放った『風牙』も３本の爪痕を奴の身体に残している。　　　　　

（『風牙』いい攻撃だ）

　射程もそこそこあるし威力も十分だ。敵のＨＰもかなり減らしている。

（あともう少しだ）

＜『ハコニワ』より供物が届きました＞　　　　　　　　

（えっ？　ここで？）

　素早くインベントリを確認すると＜風牙の種＞があった。

　急いで使用してみる。

＜スキル『風牙』を覚えました＞

　『ハコニワ』さん優秀過ぎるでしょ。

　願えば叶うんだったっけ。

「――あっ！」

　ダメージが大きかったからなのか、サンドワームは逃げる様に砂の中に潜ってしまった。

　砂の中まではさすがに攻撃は届かない。

　するとスララがボードから飛び出し砂に落ちていく。

（ん？　･･････そういうことか）

　追いかける様にボードを加速。更に魔力を耳に集中。

　落ちながらスララは砂の中に何かを打ち込む。

　と当時に跳ね上がる。

　追いついた俺は空中でスララをキャッチすると全速力で上昇。

　数秒後キィィィンとした音が辺りに響く。

　『音弾』だ。

　さく裂した『音弾』はサンドワームのどこかの器官を壊したのか苦しそうだ。

　砂の上に出てバタバタしている。

　魔力で耳をガードしているとは言え、直撃したら俺もやばかったかもしれない。

　『音弾』射程外の上空でターンを決め急降下する。

　地面手前で急制動するとボードを飛びおり、急いでサンドワームの元に向かう。

　スララは腕で俺は剣でラッシュをかける。

　スララの球体からピコピコ出る手は可愛いけれどドゴッドゴッと衝撃は凄まじい。

　俺も全力で斬りつける。

「うおおおおお！」

　奴のＨＰが尽きるまで打撃と斬撃を浴びせ続ける。

　とどめに――。

「――『風牙』！」

　――ぽよん！

　俺とスララの『風牙』同時発動。

　残りのＨＰを全て刈り取る。

　サンドワームは光の粒子となり消滅した。