第3話 能力検証

「……魔獣の巣からやっと出れる」


 その方向へ俺は重い体を起こし、ゆっくりと向かった。

 

(あれ? 外じゃないか)


 出てみると辺りは草原で日が高い。昼間の様だ。


「1階だけだったのかよ!」


 どれだけの階層があるダンジョンかとひやひやしていたけど。  

  

 とりあえず草原に横たわる。


「なんとか生き延びたぞ!」


 周りを敵に囲まれじわじわと体力が削られる恐怖に勝ち。


 不遇スキルと諦めかけたけれど何とか外へたどり着いた。


 生きている歓びを噛みしめる。


(しかし『ハコニワ』ってなんだよ)


 観賞用とか見た時には絶望を感じたけれどステータス補正は助かった。


 あれがなければ脱出は無理だっただろう。


 これで女神の第一関門は突破したって事かな。


「『ハコニワ』!」


 発動させてみると両手で持てる大きさの四角い箱の中に人影が見える。

 

 家や田畑、川などがあり小人達が生活している様だ。


 木を切ったり荷物を運んでいる者もいる。


 スライドしたり拡大縮小もできた。

 

 まあ1つの小さな村が入っているみたいだ。


 人口が100人だから補正が+100されてる様なので、人口が増えれば補正ももっと増えるかもしれない。


(あとはインベントリを確認するか)


 戦っていて敵を倒した時に光の粒子が俺に吸い込まれていた。


 何かしら収穫があるかもしれない。


「インベントリ! でいいのかな」


 おっ! 開いた。


 中にはスライムラッシュの魔核526個と表皮352個があった。

 

(しかし今回の戦闘で得た物以外何も入ってないな)


 あの女神め、飲み物とか食べ物とか入れておいてくれてもいいものを。


 その時……。


<『ハコニワ』より供物が届きました>


「えっ? 供物?」


 そんなの有るんだ。


 インベントリを見てみると<パン10個>と<水10個(コップ)>が追加されている。


(何これ、願うと叶うのか?)


 水を1個取り出してみると木のコップに入った水が宙に浮いている。


 それを取り少し口に含む。


「う、美味い」


 残りをゴクゴク飲み干す。更にもう一杯飲んで喉の渇きを潤す。


「はあー、生き返る。なにこの便利機能」


 『ハコニワ』は思ったより優秀かもしれない。凄い能力だ。まだまだ秘密は有りそうだし。


 パンも食べるとHPが回復した。


 味もいいし回復も出来るとは最高だ。


 小人達に何かお礼が出来るといいけど。


<『ハコニワ』に恩恵を与えますか?>

    

 恩恵? って何それ?


<『ハコニワ』にアイテムを与えると変化が起こります>


 あっ、答えてくれた。


 アイテムか。スライムラッシュの魔核と表皮しかないけど。


(とりあえず魔核と表皮を各100個と……)


 すると。

 

<『ハコニワ』が進化しました>    


<『ハコニワ』が人口200人になりました>


<『ハコニワ』スライムラッシュ本体及び装備が作製可能になりました>


「……はい?」


 人口が増えたのは分かるけど本体と装備が作れる?


 本体ってスライムラッシュを生み出すの?


 これは答えてくれないのか。


 分からないので実際に作ってみるしかないか。『ハコニワ』発動。スライムラッシュ作製。


<召喚しますか?>


 ……召喚出来るんだ。はい。


 地面に魔法陣が浮かびスライムラッシュがゆっくりと出てきた。


 灰色の先程まで戦っていたあいつだ。


(とりあえず『鑑定』!)


 **************************

 名前:神の従魔

 種族:スライムラッシュ


 LⅤ :100

 HP :2000/2000

 MP :2000/2000

 攻撃力:2000

 防御力:1000

 魔力 :1000

 俊敏 :700

 

 ―スキル―

 『突進』『発光』『風牙』


 **************************


「強っ! 何っこの強さ」


 ステータスも凄いけれどスキルも3つもあるし。


 俺よりも全然強いね。これだけ強いスライムラッシュが味方になるとは心強い。


 名前が神の従魔になっているけど神って俺の事か?


 材料入れたら出来ましたみたいな感じだったけど……。


 それで生物を作り出すなんて、でたらめな能力だ。


  自分も鑑定してみるか。


 **************************

 名前:上条錬夜

 種族:人間


 LⅤ :1

 HP :250/250(+200)

 MP :207/207(+200)

 攻撃力:213(+5)(+200)

 防御力:215(+10)(+200)

 魔力 :207(+200)

 俊敏 :209(+200)

 

 ―スキル―

 『言語』『探知』『鑑定』『インベントリ』


 ―特別スキル―

 『ハコニワ』人口200人

 **************************

   

 初めの一桁ステータスから考えたらかなり強くなった。


 あれだけ戦ってレベル1なのが不思議なのだが? 経験値とか無い世界なのか?


 ステータスもこの世界の基準が分からないので早めに調べたいところだ。


(そういえば装備品があったな)


 『ハコニワ』発動。スライムラッシュ装備一式作製。    

 

<召喚し装備しますか?>


 はい。


 全身が光に包まれると装備品が変更された。


 前からの装備は自動でインベントリに収納。


 代わりに全身灰色の装備になった。


「いいね。前の装備より高級そうだ」


 ステータスを確認してみると。


 **************************

 名前:上条錬夜

 種族:人間


 LⅤ :1

 HP :350/350(+100)(+200)

 MP :307/307(+100)(+200)

 攻撃力:308(+100)(+200)

 防御力:305(+100)(+200)

 魔力 :307(+100)(+200)

 俊敏 :309(+100)(+200)

 

 ―スキル―

 『言語』『探知』『鑑定』『インベントリ』


 ―特別スキル―

 『ハコニワ』人口200人

 ************************** 


「おお、オール+100補正か」


 全体的に底上げされるのは有り難い。


 しかし『ハコニワ』からこちらの世界に持ってくるものは性能が凄い。


 そういう能力なんだろうか。まだまだ謎が多いな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る