第22話


一ノ瀬に指定された場所に向かった俺と梨奈。

そこは結構な高さのビルだった。

中に入って行く途中で警備の人に捕まったが一ノ瀬の連れであると言ったら、すぐに通してくれた。


警備の人に教えてもらった部屋まで行く。


「失礼します」


梨奈が軽くドアにノックをして入る。

すると一人の男が近寄ってきた。


「ええっと君達は?あ、もしかして初羽ちゃんが呼んでる友達かな?」

「はい。この時間に来てと言われていたんですが」

「大丈夫だよ。話は聞いてるから。今はまだ撮影中だから、見学でもしていていいよ。ただ静かにね」

「わかりました。そうさせていただきます」


少し奥に進むと。部屋の中で二人の女がカメラに向かってポースをきめている。

そのうちの一人は一ノ瀬だった。


「いいね〜二人とも。次は初羽ちゃんが優愛ちゃんの肩に手を乗してみようか」


二人はカメラマンに指示され、様々なポーズを決める。

なんか今日の一ノ瀬を見ているといつもよりカッコよく見える。

衣装がボーイッシュなこともあるんだろうが、何より雰囲気が違っている。

こういうのを役に入りこむって言うんだろう。


「はい、オッケ〜。二人ともお疲れ様」

「「ありがとうございました」」


10分程見学していると、撮影が終わったようで、一ノ瀬が俺たちに近づいてきた。


「おつかれさま」

「おつかれ」

「うん、ありがとう!」



「それでどうだった?」

「私はモデル撮影を見るのは初めてだけど、かっこよかったわ」

「ありがと!空くんは?」

「俺もカッコよく感じた」

「えへへ〜」


一ノ瀬は照れたようで体をくねくねする。

その様子を見るとさっきまでの人物と同じなのか怪しいな。



「そういえば前と違って室内なんだな」

「今回はね。まぁその辺も色々だよ」


それもそうだな。

ファッションなんて季節や流行によって変わるものだから決まった形ってのはないんだろう。


「てか今更だけど俺たちが入っていいのかよ」

「大丈夫大丈夫!ちゃんと許可もらってるから」

「それならいいんだが」


さっきから気になっていたんだが、隣の梨奈を見ると、いつもよりそわそわしていた。

普段はもっとガキ大将みたいに踏ん反り返ってるのに(ちょっと言い過ぎた)

こういう梨奈は珍しい。


「なんかお前落ち着きがないな。トイレか?」

「違うわよ。ちょっと緊張してるのよ」

「なんで緊張すんだよ」

「だって初羽のモデル友達紹介してくれるのよ。そりゃあ緊張するでしょ」

「別にただ友達紹介してくれるだけだろ」


緊張する理由がわからん。


「優愛ちゃんこっちきて〜」


一ノ瀬が女の子を手招きで呼ぶ。

その子は俺たちに近づいてきた。


「紹介するね。川空優愛ちゃん」

「よろしくね」


その子は俺たちに軽くお辞儀する。


なんか聞いたことある名前だな。

それも最近聞いたような・・・




あ、思い出した。前にいのりが今話題のモデルとか言ってたやつか。

女優でも活躍しているとかなんとか言ってたような。


「こっちの男の子は真嶋空くんで女の子が堂本梨奈ね」

「よろしく」

「・・・よろしく、お願いします」


やはり梨奈の様子がおかしい。

なんかしおらしい。

おかしいな。しおらしさとか梨奈と対極に位置しているはずなのに。



「二人のことは初羽ちゃんからよく聞いてるよ。梨奈ちゃんは私のファンだって。嬉しいな!あ、勝手に梨奈ちゃんって呼んだけど大丈夫?」

「あ、はい・・・大丈夫、です」

「よかった!私のことは優愛でいいから」


梨奈ってこいつのファンだったのか。

通りでいつもと違って緊張しているわけだ。


梨奈を見ると川空に会った嬉しさよりも緊張で借りてきた猫みたいになってる。

ほんとに大丈夫か?


「それで、君が空くんか」

「・・・なんだ?」


川空が俺に近づいてくると覗き込むように上目遣いで俺を見てくる。

とりあえず、睨んでおくか。


「ああん?」

「なんでそんな喧嘩腰?」

「知らない奴が近づいてきたら警戒しろって先生に習っただろ」

「友達が友達を紹介したら仲良くなろうって私は習ったよ」


俺の軽いジャブにしっかり打ち返してくるとはやるじゃねぇか。


川空はさっきよりもさらに俺を見ている。


「んんん????」


川空は俺の顔を見て、なぜか頭にハテナが浮かんでいる。


「なんださっきからジロジロ見やがって」

「空くんって変わってるね?」

「喧嘩売ってんのか?」

「違うよ。初羽ちゃんに聞いてたけど、実際に会ってみるとよくわかるよ」

「どこからどう見たって普通の人だろ」

「普通の人は初対面の人を睨まないよ」


それもそうだな。

次誰かに会うときは睨まず、上目遣いでもしてやろう。


「私はここ数年、仕事なんかでいろんな人を視てきたけど、空くんはなんか変。こんな人会ったことがない」

「まだ会ってすぐなのに適当なこと言ってんじゃねぇよ」

「別に適当ではないんだけどね。そうだ!友達になったことだし、連絡先交換しよ」

「いいのか?俺はよく知らんがお前って有名人なんだろ。そんな簡単に連絡先なんか教えて」

「人は選んでいるから大丈夫だよ」


俺と梨奈はスマホを取り出して連絡先を交換する。

チャットアプリには優愛が追加されましたと出た。


「ちなみに私は君たちより1つ上だから、敬ってくれてもいいよ」


川空は得意げにえっへんとしている。

こういう芸能界とかで活躍している奴って天狗になったりするもんだが、そんなものは感じられない。初羽と同じで親しみやすさを覚える。


「優愛、そろそろ時間。早く着替えすましなさい」

「はーい」


川空のマネージャーだろうか?

スーツを着た女が来て川空を呼ぶ。


「私次の仕事があるから、じゃあ二人ともまたね」


俺たちに手を振ると足早に川空は去っていった。

やっぱり人気モデルなんだな。


「二人ともこの後空いてる?」

「空いてるわよ」

「じゃあ、昼ご飯食べに行こう!」

「いいわよ。行きましょうか」


俺たちは撮影現場をあとにして、一ノ瀬がおすすめの店に向かった。








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

新キャラ出したはいいけど、喋り方が初羽と似ていて区別しづらいかもしれません。

ゲームだったら「名前」とかでわかりやすいのにな〜

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る