第18話
「夜遊びってことはないのか。あいつだって遊びたい年頃だろ」
俺は内心の焦りを湊に悟らせないようにいつもの軽口で言う。
「梨奈様に限ってそんなことするわけないです!」
湊は焦りからか苛立ちを含んだ声で俺を責める。いつもなら冗談を返したりしてくれるが、そんな余裕はないのが見て取れる。
「じゃあ、用事が長引いてんだろ」
「いえ、それはないです。なにせ時間が限られることですから」
「お前は梨奈の用事の内容知ってたのか?」
「ええ」
「なら場所もわかってんだろ。もう捜索は始めてんのか?」
「はい。未だ見つかってはいませんが」
「そういえば、おっさんは」
屋敷を見るが姿はない。
おっさんなら梨奈のことで狼狽えて、その辺をウロウロしてるはずなんだが
「旦那様なら帰宅途中です。仕事を引き上げて、至急こちらに向かっております」
なるほど、仕事で空けてたのか。
ピピピと携帯の着信音が鳴る。
どうやら俺のスマホが鳴っているようだ。
湊から離れて、電話に出る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(湊サイド)
空様の携帯が鳴り、私から離れて電話に出る空様。
梨奈様からの着信かもしれないと聞き耳を立てるため近づこうとしますが、空様はしっしと手で私を追い払います。
様子から梨奈様ではなさそうです。
何やら揉めているようで、空様の表情から苛立ちが見えます。
話は終わったようで、私に近づいて来ます。
「とりあえず、俺も梨奈を探してくる。もしかしたら学校とかにいるかもしれないからその辺探してくるわ」
「わかりました。見つかったらすぐに連絡ください」
空様は制服のまま、屋敷を出て行かれました。
私は私でやれることをします。
どうか梨奈様が無事でありますように!!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
緊急時は仕方がないか。
屋敷を出た俺は目的の場所に向かう、
途中でスマホを取り出し、ある人物に連絡を取る。
「何だ?こんな時間に」
「ちょっと手を貸して欲しい」
「お前の力になれることなら私は何だってする」
「助かる。まずお前の兄に今から送る画像の女を探せと頼んでくれ。分かり次第、お前はその場所に行ってくれ」
「それだけでいいのか?」
「ああ。おそらくだが捕まっている女がいるからそいつを助けて欲しい」
「わかった」
不可解なお願いにもかかわらず、こいつは簡単に了承を出した。
俺は通話を切る。
俺の要件も済ませるか。
〜〜〜〜〜〜〜〜
(梨奈サイド)
私は再び誘拐された。
私の用事が済んだ後の帰り際に急に口に布を当てられそのまま意識が落ちた。
気がつくと、鎖で体を拘束され、身動きがとれなくなっていた。
私を捕まえた奴らが前の事件と同じ人物かはわからないけど、私はまんまと彼らの罠に嵌った。
悔しい・・・
自分で何でも乗り越えられると思っていたのにこの有様。
前回の誘拐だけでなく今回も一人のところを狙われた
私にはやらなければいけないことがあるけど、こんな私のままでは達成できない。
こんな自分ならいっそ死んだ方がまし。
「私を殺して」
「おいおい随分なことを言うじゃねぇか。さっきまでの威勢はどこいった」
「あんたには関係ないわよ」
「大有りだ。お前を助けるために身代金が支払われるんだ。殺したら取引が成功しないだろ」
どーーーーん!!!!!
急に何かが壊れされたような音がなった。
音の方へ目を向けると入り口の扉がなくなっていた。
ぐはっっ!!!
一人の男が何かに押し飛ばされて伸びている。
よく見るとそれは扉だった。
うそ、あの扉がここまで飛んで来たの!
「なんだこのあま、それに今の扉はお前がやったのか!」
「そこの女を助けに来た」
「お前一人でか。わはははっ!!。とんだ大馬鹿もいたもんだ、たとえお前が怪力だとしてもこっちは6人だぞ」
「確かに私は馬鹿だ。ただ、お前らをぶっ飛ばすくらい簡単なことさ」
彼女はそう言うと男たちに向かって殴りかかっていく。
彼女の動きに私は見惚れていた。私も少なからず武道の嗜みはある。だから彼女の動きが異次元なまでに洗練されているのがわかる。おそらくだが、ボディガード学科にいる全員で束になっても勝てないと思わせるほどに実力が突出している。彼女何者なの?
彼女は余裕そうに相手の攻撃を躱す。
実際余裕があるようで、何度か私に視線を送っていた。
その視線はどこか私を値踏みするように感じられた。
彼女はあっという間に5人を倒してしまった。
残りの一人となった男が懐から拳銃を取り出し、彼女に向けた。
「死ね!!!」
「あぶない!!!」
私は必死に彼女に危険を伝える!
拳銃を取り出したことは彼女は把握しているのだろうが、叫ばずにはいられなかった。
「大丈夫だ」
彼女がそう言い私に微笑む。
直後、バンっと大きな音が鳴り私は目を瞑った。
すぐに状況を知らなければと、目を開けると拳銃を打った男が床に伸びていた。
「あなた誰?」
「私が誰なんてどうでもいいだろ」
「ならどうして私を助けたの?」
「頼まれたからだ」
「誰に?」
「私が愛している男にだよ」
彼女は私に近づくといともたやすく縛られていた鎖をといてくれる。
「こいつらのことはまかせてくれ。こっちで処理する。だから早く家に帰れ。待っているやつがいるんだろ」
「あ、ありがとう。いつか必ずお礼するわ」
「楽しみに待っておくよ。ほら、さっさと行きな」
私はその場から離れた。
スマホはあいつらに壊されて連絡を取ることが出来ないので、他の手段を考えようと、立ち止まっていると、目の前にタクシーが止まった。
タクシーの窓が開き、運転手がこちらを見る。
「堂本梨奈さんですか?」
「え、ええ」
「では乗ってください」
私が困惑して狼狽えているとさっきの女の人がジェスチャーでそれに乗れと教えてくれた。どうやら彼女が用意してくれていたそうだ。
私はタクシーに乗り、屋敷の住所を伝える。
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