第12話


「では全員揃ったな」


堂本の屋敷に集まると俺たちが最後だったようで、すぐにおっさんから今回のことについての説明が行われた。


「知らないものもいるかもしれないのでもう一度説明する。今日の昼間に私の大切なコレクションの1つの紅真美の壺が粉々に割られていた。壺があったのは私のコレクション部屋だ。壺が昨夜には壺はしっかりとあったので昨日深夜から今日の昼に割れたものと考えている。鍵は閉めていたと思うが、万が一閉めてなかったかもしれん、そこで聞く。お前たちが昨晩から今日にかけてのアリバイを聞きたい」


おっさん、壺割られてお怒りのはずなのに、ちょっと楽しそうだな。

でもわかるぞ。こういう事件を探偵が如く解決するのはわくわくするよな。


「まずは一番怪しそうなお前だ」

「あ、俺か?何で一番怪しいんだよ」

「ここに来て一番浅いからな。お前はコレクションについて知らなかっただろう。私のコレクションを知っているものが壺を割るとは思えん」


おっさんは俺に詰め寄る。


「だからこそ、誤って割ってしまっても口が裂けても言い出せなかったんじゃねぇのか?割ったと知れれば弁償させられると思ったんじゃねぇの、それか解雇させられるとか。そもそも鍵のかかった部屋にわざわざ忍び込んで壺を割るってありえないだろ」

「た、確かに」

「ちなみにだが、俺はそのコレクション部屋がどこにあるかも知らん」


この家は、でかすぎるからその分部屋も多い。俺が知ってるのは自分の部屋と梨奈の部屋くらいだ。それと最初ここへ来た時におっさんの部屋も一度入ったな。


「そうか。でもお前が嘘をついてるかもしれん。昨日深夜から今日の昼までのアリバイは?」

「深夜は寝てた。起きてからは帰って来るまで学校だ」


「なるほどな、では他の者にも聞こうか」


おっさんは各自に取り調べるように話を聞く。

この屋敷にはメイドやコックを含めて12人もいる。その中から犯人を探すとなると骨が折れる。

俺がやってないとはいえ、時間を取られるのはあまりいい気分ではない。


「ではこれで全員から聞いたな」


最後に梨奈からアリバイを聞いて聴取は終わったらしい。



「あの一つよろしいでしょうか?」


あるメイドがおずおずと手を挙げた。


「なんだ?」

「この事件とは関係ないのかもしれないんですけど、二日前に廊下に飾ってあった大皿が割れていました」

「なに!それはどの皿だ!」

「真嶋様の部屋の近くにあった皿です」

「全く、壺に続いて皿まで割るとはいや、時系列的には逆か・・・そんな時系列なんてどうでもよい。誰だ私のコレクションを割ったのは!!!」

「あ、皿を割ったのは俺」

「ちょっと!何言ってんのよ。こっち来なさい」


梨奈におっさんから隠れる位置まで耳を引っ張られる。


「あんた、余計なことは言うなって言ったでしょうが」

「素直な人間だから正直に言っちまった」

「本当に素直な人なら割った時に割りましたって言ってるわよ!」


言われてみれば、そうだな。


「おい小僧、今の話は本当か」


おっさんが鬼の形相で俺たちの間に来る。


「ああ、皿を割ったのは本当だ。」

「貴様ぁ!!!」


おお、怖。


「貴様などクビだ!今すぐに出て行け!」

「待ってください!お父様!」

「梨奈は黙っていなさい。こやつはわしの大事なコレクションを壊したんだ。クビにするに決まっておろうが!」

「別にわざとやったわけではありません!さきほど私には壊したと事情は話してくれていました。折を見て、お話しようと思っていましたが、この事件がありましてお伝えできていなかったんです」

「確かにわざとではないが・・・」


俺がこの先の言葉を発する前に梨奈から鋭い眼光を飛ばされる。


(もうこれ以上余計なことは言うな)


はっきりと目が言葉を語ってる。

これ以上梨奈を怒らせると、後に恐ろしいことが待っていそうなので、仕方なく従う。


「故意だろうが、なんだろうが、壊したことに変わりない」

「ですが、お父様にも原因はあると思います」

「何?私に原因があるだと」

「本当に大事ならコレクション部屋に閉まっておけば良いと何度も言いましたよね。他人への誇示のため、廊下に飾るから壊れたんでしょう。ただ、コレクション部屋にあっても壊れることもあるってことは今回の件でわかりましたけど」


「私に原因があるというのも少なからずわかった。だから条件次第で小僧のクビを取り下げてやってもいい」


さっきまでクビにするとのたまってたわりに、あっさりと条件次第で考えてくれる。

やっぱり娘には甘いな


「本当ですか!」

「ああ、壺を割った犯人を見つけ出せば今回の件は不問にしてやる。もしわからなければお前はクビだ!」

「お父様!」

「これでも譲歩しているんだ!普段なら即刻クビなところを解決すれば皿のことはお咎めなしにしてやるんだ。梨奈とはいえ譲れん!話は以上だ。お前らさっさと持ち場に戻れ!」


おっさんの怒号に使用人たちは蜘蛛の子を散らすように部屋を出て行った。

俺と梨奈も続くように部屋を後にした。



「あんた本気で犯人を探しなさいよ。もちろん私も協力するけど」

「俺が探すよりお前が探した方が良くないか?こんな事件って小説だと頭のいいやつが解決するだろ。湊から梨奈は秀才だって聞いてるぞ」

「それとこれとは別よ。あんたが招いたことなんだからちょっとは自分で探しなさい!」



そんなわけでクビにならないために犯人探しを始めることになった。




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