第3話 デジタルワールドへようこそ

気付いたら、そこは、別世界であった。まるで、ドットで描かれた世界。


 「ここは、どこ?」今日子は、たけしに尋ねた。

 「ここは、バーチャルリアリティーだ。リアリティな世界とは、似ているが、違う。」たけしは、答えた。


 「なんで、私ここにいるの?おまけに背も伸びてる。たけしの仕業ね!」

 「知らねー」3度目の知らねー。


 見渡せば、建物がたくさん立っている。ただし、人の姿は見えない。ここは、誰も知らない世界だ。


 「帰りたい」と今日子はつぶやいた。

 「ここに、お前の兄貴がいる。」とたけしは、そっとささやいた。


「えっ」今日子は、ますます混乱した。


 ツカ、ツカと誰かが近づいてくる。

 「誰?」今日子が尋ねた。


 「私に見覚えはないか?」男は言った。

 よく見たら、現実生活であった男だった。

 「あの時の、スマートウォッチをくれたおじさん」


 「説明すると、長くなる。お前のここでの名は、テレサ・セブン。ここでは女神として、存在している。」


 確かに、よくわからない。でも、ここに別れた兄さんがいる。


 「なにをすれば、お兄さんに会えるの?」と今日子は尋ねた。


 「この世界は、クルチャーと呼ばれる人工生命体に、支配されている。そいつは、人であって、人ではない。」


 「人工生命体」と聞いて、アンドロイドかしら?と今日子は思った。


 「奴は、不死身だ。決して倒せない。」

と男は言った。


 クルチャーとは、何者なのか?人が作った人とは。何のために。


 「ここには、タゲットと言われる兵隊がいる。」

 

 「タゲット」今日子は、つぶやいた。


 とその時、腕は千手観音のように、多くあり、頭は3つあるタゲットが、現れた。


 「怖い」今日子は、叫んだ。

 その子を、こちらへ渡してもらう。」とタゲットは言った。


 「ほう、面白い」男は言った。

 タゲットは、飛び上がり、男を攻撃した。

 男は、後退りして、体勢を整えた。

 「もらっていくぞ」と今日子を鷲掴みにした。

 「助けてー」今日子は、腕をぐるぐる回した

 「呼んだか?」

 「遅い」と今日子。


 身に付けたコミュニケーターは、どんな形にも、この世界では、なれる。


 たけしは、剣になった。

 「何?」


 「これで、奴を倒せ。」

 「無理ー」

 「お前しか使えない剣だ。頭を狙え!」


 その時、男がタゲットにぶつかって、今日子を解放した。


「お笑い草だ」タゲットは笑った。


 今日子は、祈った。

 「この世界から、助けてください」

 タゲットも腰から剣を出した。

 剣が二本ある。


 「まあ、死体でも、かまわんか?」

 今日子は、走って逃げた。とりあえず体勢を有利にするために。


 「えっ」いつもの10倍早く走れる。

 「あそこ!」というと、ビルの3階へ飛んだ。


 タゲットも、難なく追ってきた。

 「手間を取らせるなよ」

 立体物が多い屋上。タゲットは、今日子を見失った。


 まともに戦っても、今のわたしには不利だ。


 消火栓を持ちながら、背後から、タゲットに近づく。

 「こっちよ」と今日子は言った。


 タゲットの振り向きざまに、消化液を吹きかけた。滝のような液が、タゲットの顔に降り注いだ。


 「くたばれ」

 今日子は3つの頭を、なぎ落とした。

 ドスンとタゲットは、後ろ向きに、倒れた。


 「こいつ何者なのか」今日子は、思った。その時、意識がもうろうとして、気を失った。

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