第39話
「さて、これから野菜炒めを作るんだが…………。」
「うん!」
彼はじっと優香を見つめる。その見つめられている彼女は自信ありげにしている。過去に何度も大きな失敗をしておきながら、どうしてそこまで元気でいられるのかわからない裕太。優香の元気な理由が料理を作った後に裕太に撫でてもらえると思っているからなどと彼にわかるはずもない。
別に分かろうが分からなかろうが裕太に毒を食べることになるかもしれないということ以外に悪いことは起きないので気にする必要はない。他の人にとってはそれこそが最も不幸なことのような気がするが、本人が不幸なことではないと思うのであればそれはそれでいいだろう…………。
「使うものが一番少なかったのはあれなんだが…………。」
裕太は野菜室からキャベツ、冷蔵室からハムを取り出した。
「大丈夫かな…………。」
やはり失敗するのではないかという懸念をぬぐい切れていない裕太。でも、今回は何とかなるかもしれない。何故かそう確信している。
「じゃあ、まずはキャベツを千切りにしてみてくれるか?」
裕太はまな板の上にキャベツの葉っぱを三枚程度重ねて置いた。彼の言葉を聞いた優香は包丁を手に持つ。
「待て~~~~!」
「えっ?」
逆手に持った包丁をキャベツに向かって振り下ろそうとする優香の手首を掴んで制止させる裕太。優香は何故止められたのか分からないらしく、首を傾げながら裕太のことを見つめている。
優香は今までに四度しか料理を作ったことがない。一回目は美涼と、二回目は調理実習の時間に、三、四回目は今の裕太の家でだ。しかもその四回とも作ったものはスクランブルエッグである。だから、優香は一度も包丁を握ったことがない。
本来なら、美涼とする二回目の料理の時に教えてもらうはずだった。だが、あまりにも優香が料理下手だったので断念されたのである。
「包丁はこうやって持つんだよ…………。」
裕太はいったん彼女から包丁を取り上げ、自分が持ってみる。持ち方を一度優香に見せておかなければいけないと思ったのだろう。
「う~~ん…………。」
でも、裕太の姿を見てもいまだにキョトンとしている優香。彼がどうやって包丁を持っているのかよくわかっていない様子。
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