第37話



 真理は優香が料理を作ったところを見たことがある。歩は見たことはないが、真理から優香の料理の恐ろしさについてよ~~く聞かされている。


「よく生きてられたわね…………。」

「二回目だったからな…………。」


 遠い目をしながら、呟いた裕太。その呟きを聞いた真理は…………。


「二回目!? よく無事でいられたわね…………。」


 驚きの声を上げた。一回食べただけでも死にそうになるのに二回も食べて無事でいられるなんて考えられない様子。


「最初は少しだけ寝込んだな…………。でも、二回目は全然何ともなかったぞ。」

「そ、そうだったんだ…………。」


 優香の作る毒への耐性でも付いたのかと思う真理。そもそも、一回目で寝込んだのにもう一回食べようと思う心境が分からない。わざわざ死にに行くようなものだ。自分なら絶対に逃げ出す。というか逃げ出さずに食べるような人間は裕太以外に考えられない。


「それで…………。その…………。どんな味だったんだ?」

「一回目は死ぬほどまずかったけど、二回目は無味だった。」

「「?」」


 恐る恐る裕太に味を聞いた歩。一回目の味は予想通りの答えだった。でも二回目の答えは予想だにしないものだったため、二人とも首を傾げている。一回目は死ぬほどまずかったのに、なぜ二回目では無味になるのかと…………。


 真理は優香も自分の料理を食べた時、味がしないと言っていたのを思い出した。


「優香と同じようになったんだね…………。」

「そう言うことだろうな…………。」


 真理の言葉にうなずいて同意する。真理と裕太の周囲の空気がどんよりとしている一方で、一人恋人の作ってくれた弁当に舌鼓を打っていた。とても幸せそうな表情をしている。いくら料理ができないから相談に乗れないと分かっていても、マイペース過ぎないだろうか…………。


「で、次は何を作ってもらったらいいのか意見を聞きたくてな…………。」

「それが相談したい内容?」

「あぁ…………。」


 こくりと頷く裕太。自分だけで考えても何が簡単にできるのか分からなかったのだ。いろいろ思い付きはしたが、どれもこれも難しそうだった。だから、同じく料理上手な真理に意見を求めたのだ。


「卵料理以外で簡単にできるものと言ったら…………。う~~~ん…………。」


 歩に聞いても話にならないので放置されている。真理は自分が母親と一緒に初めて作ったものが思い浮かんだ。それは…………。


「野菜炒め、かな…………。」

「なるほど…………。ありがとう…………。」


 確かにそれなら、優香にもできるかもしれないと思う裕太であった。

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