第35話
――数日前…………。
裕太が一人弁当を持ってどこかに向かおうとしていると、歩が声をかけてきた。
「俺たちと一緒に食べないか?」
歩は真理も含めて、三人で食べることを裕太に提案する。バカップルのいちゃつく姿を見ながら食べる主務はないのでもちろん断ろうと思った裕太だが、優香関連のことで二人に相談したいことがあったのを思い出した。
この相談をするならば、二人と思いたほうが良いと思った裕太は仕方なく歩の提案を飲むことにした。
「いいぞ…………。」
断られると予想していた歩と真理は少々驚いたらしく目を見開いた。
「なんだよその顔は?」
「断られると思っていたから…………。」
裕太の問いに答える真理。歩も真理の言葉に大きく頷いている。
「はぁ…………。相談したいことがあったから仕方なくだよ…………。」
「な~~んだ、そう言うことかぁ…………。」
真理は裕太の相談の内容が優香に関係あることだとすぐに分かった。
「それなら人気のない場所のほうが良いけど…………。」
真理は自分の知る校内の中で人気がなく、静かに食事できる場所を思い起こしていた。歩も真理と同様、思い起こしている。
「そんな場所知らないぞ…………。」
「私も…………。」
だが、そんな場所に覚えはなかった。二人共、基本的に隠れて食べるようなときはない。だから、そんな場所をわざわざ探すことも、知るきっかけもないのだ。
歩と真理は人目の付く所でいつもいちゃつきながら弁当を食べている。周囲にいる人にとっては迷惑な話である。
「俺が良い場所を知っている。付いて来てくれ…………。」
一方の裕太は知っていたようだ。一人で食べることの多い裕太だからこそ知っているのかもしれない。本人的には複雑な心境にならざるおえないだろうが、結果的に役立っているのでいいことと考えたほうが良いだろう。
そもそも裕太に一緒に昼食を食べてくれるような相手を見つけろと言ったとしても、人と話すことの苦手な彼には無理難題だろう。三人いる友人のうち二人は恋人持ち、もう一人はクラスの中心メンバー。その中で食べようとは思わない。
新たな人を見つけるにしても気苦労の方が大きくなる。それならば、諦めて一人で食べる方が気楽だ。
「うん。」
「あぁ。」
二人とも、黙って裕太に付いて行くことにするのであった。
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