第34話
優香は裕太と共にテレビを見ていた。アニメを見ると言う共通の趣味を持っている二人。今は今季放送している物の中でも、人気のある作品も見ている。ところが…………。
(裕太に甘えたいけど、タイミングが…………。)
裕太はしっかりとアニメに見入っている一方で、優香は完全に他事を考えていた。チラチラと裕太を横目で見ながら、タイミングを見計らっているようだ。
(何で優香は視線をちょくちょく俺に向けてくるんだ?)
裕太も途中からアニメに集中できなくなっていた。いつの間にかアニメがBGMと化しているような気がしなくもない。
「よし、優香!」
「?」
首を傾げている優香。裕太が何を始めようとしているのかわからない様子。
「料理作るぞ!」
「嫌」
すぐさま拒否する優香。そっぽを向いて裕太と視線を合わせようとすらしない。それほどまでに料理をしたくないのだ。一度はうまくるために諦めず練習を続けようと決意した優香だったが、今日は気分が乗らないらしい。
優香にとってはそんなことよりもどうやったら裕太に甘えられるのか考えることの方が優先順位が高い。
「何で?」
「だって、絶対に失敗するじゃん!」
裕太の問いに対して、それらしい理由を言う優香。本音を言わない理由は…………。
(恥ずかしくて本音なんて言えるわけないじゃん!)
とのこと…………。それもそうなのかもしれない。裕太に甘えたいから今日は料理の練習ができないと本人に言えるはずもない。別に裕太は優香が甘えたがりなことを知っているので、快く甘やかしてくれるだろう。それでも優香は今まで疎遠だったこともあり、素直になれていないのだ。
「もし、見た目だけでもうまくいったら俺が優香の頼みを何でも聞いてやる。その条件付きならどうだ?」
数日前から裕太は優香が何やら自分に頼みたいことがありそうだなと思っていたのだ。もしこの予想が本当なら、優香は絶対にこの話に乗るだろう。そう踏んだ裕太はこの条件を提示することに決めたのであった。
「うぐっ!」
優香はプルプルと震え始めた。怒ったかもと思った裕太。
「そ、それはずるいよ~~~~!」
「痛い! 痛い!」
そう叫んだ優香はぷくりとほおを膨らませながら、近くにあったクッションを裕太に向かって振り下ろす。何度も何度も叩かれている裕太。流石に柔らかいクッションでも強く叩かれれば痛いらしい。
何もせずに叩かれるつもりのない裕太。必死に優香を落ち着かる方法を考えながら、同じく近くにあったクッションで防御をし始めた。
「う~~~~~!」
(落ち着くまで待った方が早いな…………。)
そう思った裕太は、それまでの間に何を作ってもらうのか考えることにした。数日前に真理たちから貰ったアドバイスを元にするようだ。
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