とある夢のお話
静木名鳥
とある夢のお話
時々妙な夢を見るのです。
そこは現実と変わらない風景で建物もあれば人も住んでいる世界の中。
しかし、現実と違うところが一つだけあるのでした。
その違いはまず、その世界の住人は薬指がありません。
最初は気付きませんでしたが、ふと気になってよく観察してみると、その違いが分かりました。
僕が「どうしたの?」と聞いても「何が?」と返されるばかりで、その世界では薬指が無いのが当たり前のようでした。
自分の手を確認してみるとやはり薬指が無くなっています。でも不思議と違和感はないのです。
目が覚めてぼーっとしながら自分の手を見てみると、当たり前ですがちゃんと指が5本に戻っています。
夢と現実の境が分からなくなっているときは、少しびっくりします。
また夢を見ました。
今度の夢はみんなの口がない世界でした。
唇があるところには何もなくなっていて初めて見たときはぎょっとしました。
口がないのでみんなしゃべることはできず、伝えたいことは手話かメモ書きを渡して会話します。
慣れてみると口がない生活も特に支障なく生活できるものだなあと感心しました。
すみません。
支障がないといいましたが、一つありました。
それは飲食ができないということです。食べ物を食べれないし、飲めないというのは結構つらいものです。
栄養は自分で栄養剤を注射で摂取したり定期的に施設で点滴を受けに行ったり様々で、自宅に点滴のセットがあるという人も中にはいました。
目が覚めると無性にお腹が減っていたので寝起きにもかかわらずがっつりとご飯をたべてしまいお腹を壊しました。
今度の夢は目がありませんでした。
なんで気付いたのかというと目を開けようとしても開かなかったので、手で目に触れようとしたところ、ただのくぼみがある感触しかなかったからです。
これは困りました。
今までは周りの人がどうやって生活しているのかを観察できましたが、今回はそれが出来ません。
どうしようかと悩んでいると足に何かが当たる感触がしました。
固い棒のようなものが当たったかと思うと、
「すいません、けがはしていませんか?」
という若い女性の声が近くから聞こえました。
「大丈夫です」と返すと、その女性はすみませんとだけ言ってカツカツと音を立てて離れていくのを感じました。
僕はとっさに「すみません!」と声をかけて、女性が持っているその棒状のものがどこで手に入るか伺おうとしました。
女性が立ち止まったのを音で感じ、事情を軽く話すと、「こちらです」と言いながらやさしくゆっくりと僕の手をひいてくれます。どこかへ案内してくれるのでしょう。
そのあと何とか家へ戻り、疲れていたのですぐに眠りにつきました。
時々妙な夢を見るのです。
そこは現実と変わらない風景で建物もあれば人も住んでいる世界の中。
しかし現実とは違うところがあるのです。
夢の中の世界では、指が5本あり、鼻の下に穴が開いていて、そんな違いを触らなくても確認できる。そんな不思議な夢でした。
とある夢のお話 静木名鳥 @sizukinatori
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます