第4話 女剣士はやばい(直球)

『♡エリィと勇者様が結ばれるプラン♡

① 新しく来た魔術師をアクレイアが推薦してたのはアクレイアが彼に片思いしているからということにして勇者様に讒言する

② 新しく来た魔術師をうまくエッタに惚れさせる

③ うまく二人の間をとりもって両想いにさせる

④ 全部勇者様にばらす。

⑤ パーティーは私と勇者様の愛の巣になる。完璧♡』


「……」

 俺は落ちていた謎の紙(俺はこれをメモと思いたくない。適当に殴り書きした模様がたまたま文字のように見えるだけだと思いたい)を見て絶句していた。


 ここは女剣士エリィの行きつけの酒場。そこに行けば大体会えるからと言われてきたところあちらの席です、と案内された。ちょうどトイレか何かで外していたのだろう、その席にはこの奇書と食べかけの食事が置かれていたという訳である。


「さて、帰るか」

 俺は世の中に絶望して何も言わずに酒場を出ようとした。すると目の前からピンク色の鎧で身を固め、ピンク色の剣を腰に下げた頭の中もピンクそうなピンク髪の幼女が歩いてくるのが見えた。俺は直感的に危機を察知して避けようとする。


「あれ、もしかして君が新しい魔法使いのアレン?」

 俺は硬直した。

「ナ、ナニモミテマセンヨ」

「え、どうしたの? でもこんなところで会うなんて奇遇だね! エリィ次の魔法使いは男だって聞いて楽しみだったんだぁ」

 確かにこれで俺も女だったら俺と盗賊と聖女を三角関係にしてまとめて葬るプランが使えない上にライバルが増えるからな。


「へー、オレモタノシミダナア」

「あ、緊張してるんだね? 無理もないか、勇者パーティーと言えば国で一番の実力者の集まりだもんね。じゃあ今日は初日サービスでエリィが奢っちゃうぞお」

「ワ―、ウレシイナー」


 この言動だけならばただの頭の中がピンクな剣士で済むのだが、あいにく俺はやばいものを見てしまっている。だから俺は恐怖(こいつの策略でパーティーを追放されることよりもこいつの脳内に得体の知れない化物が住んでいることへの恐怖)に包まれながら連行された。

 ちなみに、さっきの席が実は店員の間違えで本当は違う席で飲んでいたというオチを期待したのだがそんなことはなく、さっきの謎の紙がある席にエリィは戻っていった。おそらく、俺がすでにその紙を見ていることは気づいていない。


「せっかくだし、エリィたちのこれまでの冒険、色々教えてあげるねえ」

 本来パーティーに溶け込むためにちゃんと聞いておいた方がいい内容なのは重々分かるのだが、あいにく俺の頭には一ミリも入ってこなかった。


「あ、そう言えばリンリルっていう娘がいたんだけど」

 確か結婚してパーティーを出ていった人の名前だ。

「最初、勇者様に色目を使う色情魔だったからちょっと教育してあげたら大人しく一般の男性の方との交際に切り替えたの。可愛いよねえ」

 勇者に色目を使う色情魔はお前じゃねえか。そう言いたくなる気持ちをこらえるために俺は酒を流し込んだ。その後もエリィは勇者の格好いいところなどをひたすらしゃべっていたが俺の記憶は徐々に薄れていった。


 翌日、俺はとある決断をして勇者に会いに行った。

「おはようございます」

「おはよう、お前酒くせえぞ。あ、まさか女と呑んでたんじゃねえだろうな? 追放だぞ」

 もうあいつは女としては見てないけどな。パーティー崩壊させようとしてるし、むしろ倒すべき敵なんじゃないか?

「俺、恋愛禁止の方針素晴らしいと思います。今後もこの方針を徹底していきましょう」

「お、ようやく分かってくれたみたいだな。やっぱ俺たちの本分は魔物討伐だからな!」

 俺と勇者は固い握手をかわした。アクレイアと結ばれるのはパーティーを引退してからでいいや。

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俺「やっと初恋の聖女と同じパーティーになれたぜ」勇者「このパーティーは恋愛禁止。破ったら追放だから」 今川幸乃 @y-imagawa

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