第2話 聖女様は性格も聖女だけどちょっと堅物
さて、勇者に抑え込まれた俺だったが、当然諦める気はなかった。せっかく高嶺の花だったアクレイアと同じパーティーになるところまでこぎつけたんだ。何で手の届くところにある花を諦めなければならない……例え花の前に王国最強の戦闘力を持つとされる勇者が立ちはだかっていようとも。
何はともあれ俺はアクレイアに会いにいくことにした。単に会いたかったというのが一つ、もう一つは聖女なら勇者の説得をしてくれるかもしれないという期待があったからだ。
アクレイアは聖女らしく神殿にいるとのことだったので、神殿に向かう。アクレイアはやってきた民と話していたが、こちらに気づいてやってきてくれる。
「久しぶり。まさかあのときの子がここまで成長するとは思わなかったわ」
アクレイアはきちんと俺のことを覚えていてくれた。長く美しい金髪に清潔感のある白いローブ。慈愛に溢れた表情。俺が憧れた聖女は変わりなかった。
「いや、あの日があったから今の俺があるんだ。本当にありがとう」
「違うわ、それはあなたの努力よ。神様は努力する者を見捨てない」
「いえいえ」
とはいえ謙遜合戦をしていても仕方がない。俺はもう一つの要件を切り出してみる。
「アクレイアは勇者が言ってた恋愛禁止の話って聞いてるか?」
「ええ、聞いているわ」
「どう思う? いくら俺たちが勇者パーティーだからってやりすぎじゃないか?」
俺の言葉にアクレイアはなぜか悲しそうな表情になった。
「残念だわ、せっかく同じパーティーになれたのに」
「へ?」
「あなた、好きな人がいるのね……残念だけどそれは勇者様に報告しないといけないわ」
嘘だろ……。あのふざけた制度をいいと思っているっていうのか?
「違う、違う、そんなことはない! 一般論として聞いただけだ! 最近は教会ですら恋愛に寛容なのにちょっと古くないかなーって……」
俺は反射的に否定してしまう。するとアクレイアはほっと安堵の息を吐いた。
「良かったわ。でも私はいいと思う。先代勇者のとき、勇者パーティーはパーティー内の三角関係がこじれて解散したと聞くし、やっぱり恋愛は禁止にした方がいいと思うわ」
何だよパーティー内の三角関係って。ふざけるな。お前らのせいで俺がとばっちり受けてるんだぞ。俺は過去の勇者パーティーに恨みを覚える。
「でも、アクレイアもいつかは結婚したいとか思うよな?」
「いいえ。私は全ての魔物を撃ち滅ぼすまで結婚はしないわ」
アクレイアは毅然と宣言する。あなたも古いタイプの方でしたか。でもその使命に一途な姿は素直に格好いいと思います!
いや、待て。ここはポジティブに考えよう。とりあえず今は恋人はいないということだ。そう、恋愛禁止ってことは俺の恋も実る可能性はないが、誰かにとられる可能性もないってことだ……涙出そう。
「という訳で一緒に魔物討伐頑張ろうね」
そう言われて断れる男なんている訳がない。俺はその聖女のような(実際聖女なのだが)微笑みにほだされた。
「そうだな! 一緒に魔物を全滅させよう!」
確かに魔物を全滅させればアクレイアは結婚してくれるかもしれない。……まあ、魔物が全滅させられる手段があるんなら王国か教会がとっくにやってると思うけどな!
しかし一体どうしたものか。まだ後二人メンバーがいるらしいし、その二人と組んで抗うか? だがそれだとアクレイアの心象が悪くなる。アクレイアに恋愛の素晴らしさを教え込もうにも、今のままだとうっかり追放される危険性がある。
いや、一つだけ方法がある。勇者に恋愛の素晴らしさを教え込んでパーティールールを変えてもらうことだ。とはいえ、勉強一筋だった俺に勇者を落とせるような美少女の知り合いなんていない。
だが、パーティーの残る二人は美少女という話だ。勇者と一緒に戦ううちに知らず知らず惹かれている……なんてこともあるかもしれない。そしていい感じに仲良くなってもらい、ルールを変えてもらう。よし、それでいこう。
そうと決めた俺は次に女盗賊エッタに会いにいくことにした。
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