第1幕ー3 異世界
やがて、1時間がたった時ふと目が覚めた。
え?辺りを見回した。起きた場所はホテルでは無い、と言うより、どこなのだここは?また夢か?夢でも見てるのかと思い、頬をつねった。
辺り一面焼け野原になっている。そしてここは森なのであろうか、大量の甲冑を着た兵士達が、弓矢に刺され、血を流しながら、倒れていた。死体の山だ。猛烈な痛みが、全身を襲った。
「若大将覚悟」
背後から太い声がすると、馬に乗った、甲冑をかぶった男に背後から刺された。
そのまま意識が遠のいてきた。
「大将こいつですぜ、我々の部隊を次々と壊滅に追い込んだ、弓矢の達人にして、剣豪エミリア・ロシュマン」
「おい、若造てめえ、俺達の部隊を壊滅させるとは、やってくれんじゃねぇか、覚悟しな」
髭を生やした男は、エミリオを殴り始めた。まるで拷問だ。中世の頃の、時代劇を見てるような。
「おいそろそろ吐いてもらうか、てめえとこの大将は誰だ?」
(エミリオ、何いってんだ?俺の名前は、中島龍太郎、それに、エミリオって俺が考えた名前じゃねぇか、畜生、全身が痛てぇ、どうなってんだ。ここ、ホテルじゃねぇのかよ)
突然猛烈な頭痛がした。龍太郎の記憶がだんだん消え始めた。自分が中島龍太郎だったことも、あー俺はエミリオだっけ?
エミリアは叫んだ。
「頼む俺の命は、奪ってやってもいい。でも村の仲間の命だけは、守ってやってくれ。」
「ふざけんじゃねぇよ!!」
男はエミリアの頭を踏みつけた。そして大声で怒鳴り散らした。
「てめえら、弱わっちい雑魚の癖によー、俺らに立ち向かうとしてらあそんなの、100年早えんだよ、若造」
男達は、エミリアを散々いぶりつけると、エミリアの頭に狼の毛皮を被せた。そして、馬に乗せると、小屋から運び出し、崖の上から突き落とした。エミリアは、そのまま気を失って倒れた。薄れいく意識の中、一人の女性がこちらへと近づいてきた。誰だろうか。名前は分からなかったが、白い長い髪を靡かせ、馬に乗っている。そのままエミリアは意識を失った。
しばらくしてエミリアは目を覚ました。目の前には、先程エミリアを助けてくれたであろう女性が、いるではないか。
「あなたが私を助けてくれたのか?」
エミリアが問いかけると。女性は答えた。
「良かった、目を覚ましたようですね。そうですよ、私があなたを助けました。あなたは、崖の上から落ちてきたのですよ。あなたは何者なのですか?何故狼の顔をしているのですか?」
エミリアは、鏡で自分の顔を見つめた。狼になっているのではないか。(違う、俺の本来の顔は、人間だ。)
先程の男達のせいで狼の毛皮が頭にへばりついてしまい取れなくなってしまっていた。
「私の名はエミリオロシュマン、リヒュテイン公国のミカエル市第一部隊隊長だ。私は、元々普通の平民だった。だが、バグミュダット公国を治めたハルト三世は、私が住んでいた、ミカエル市の、村を襲い、村人を惨殺したのだ。そして自分の皇后に相応しい女性を決めるために村の女性を誘拐した。私は幼なじみであり、恋人でもあった、マリアという女がいたが、奴に誘拐されてしまった。私はどうしてもマリアを取り戻さなければならない。そして、ハルト三世を倒さなければならん。あなたは何者なのだ。その耳そなたは人間ではないな。」
女性は語りだした。
「私の名は、ソフュシア、人間ではありません。私達の種族は、フェムシンムと言い、狼族の一種で、別の地底大陸から来たものです。私達の種族は人間と同じように高度な文明を築き上げ、進化を果たしました。10年前私達は地底国の、別の大陸ヘルヒュート大陸からやって参りました。ヘルヒュート大陸からバグミュダット公国へ降り立ったのです。そして、国王ハルト三世は、フェムシンムと手を組み、地底国の征服を企んだのです。私達は古代より、多くの兵器を作り出してきました。そしてハルト三世は、私達が開発した高性能放射砲を、利用し、地底人を滅亡させ、自分だけの国を作ろうとしているのです。父はハルト三世と手を組みこの地底国を滅ぼそうとしています。ぜひ、父を止めてください。」
エミリアは、不思議でならなかった。何故、フェムシンムの娘が私の味方をするのだと。
「ソフュシア、そなたに問いたい?何故私を助けたのだ?、そなたはフェムシンムのものでは無いか?私は見ての通り人間だ。フェムシンムのものでは無い!私を殺すことも出来たはずだ。」
ソフュシアは、答えた。
「フェムシンム族全員が、地底国の征服に賛成してるわけではありません。私は、反対しました。多くの犠牲を出さない為にも、一族は共存しなければなりません。もし放射砲が撃たれば、私達フェムシンム族にも犠牲は出しかねません。。父だけが、放射砲の耐性が出来る特殊な体になっています。エミリアあなたを助けた時、私はフェムシンムの者だと思いました。でもあなたの正体が人間であると知ってしまっても、私は決して構いません。」
ソフュシアの目から涙が溢れてきた。
「私の父は昔は優しくて正義に溢れていました。しかし、新しい大陸を求めて、旅して、この世界に人類がいるのを知った時から父は変わりました。地底はフェムシンム族だけのものだと豪語を抜かしています。」
エミリオは、お礼を言った。
「ソフュシアよ、話してくれてありがとう。俺も祖国の為に、フェムシンム族と、ハルト三世を倒さねばならん。」
「エミリオここにいては危険です。この小屋を降りた所に、大きな建物があります。そこに行ってください。そこに必要な武器が揃っています。」
エミリオは、今の状態では、とても出かけられそうになかったが、一晩寝れば良くなるだろうと考えた。とにかくここまで分かったことはこうだ。
ハルト三世は、バグミュダット公国だけでなく、他の国も収めて、最終的には、地底国征服を企んでいた。そのためにフェムシンムと手を組み、地底人の滅亡計画を企ていたのだ。フェムシンムの長、デュオシュアを倒させねばならない。地底国は滅亡する。
これまでエミリアは、リヒュテイン公国の為に、戦ってきた、攫われたマリアや、村の女性達を取り戻す為に、それはエミリアだけでなく、リヒュテイン中の人々が考えていた事だ。今度はそれだけでなく、世界を守らなければならない。
精神的な重みが一気に押し寄せできたが、明日の為にはもう早く寝よう。エミリオは、瞼を閉じた。
地底旅行記 @busu
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