第1幕ー2 レオンハルト



 それから、2人はフェリーの搭乗口へ向かった。搭乗口の前に、両替所があり、日本円を現地のお金へと変えた。現地のお金はバグミュダットチェリーというのだ。1チェリーが、日本円で137円らしい。まるでドル高円安ではないか。1チェリーが、100ベリーらしい。ベリーというのは硬貨のことでセントみたいなものだ。日本円と違う点は円で統一されていないことだ。

2人は、所持金30万うち10万を、外貨へ変えると、フェリーに乗った。まるで、外の世界にいるみたいだった。外気も風も、地上の世界と全く同じように感じる。本当にここは地下世界なのだろうか。龍太郎は、感激しながら、海を眺めていた。どうやら地底人は、地上の世界を知り尽くしているみたいだ。

地上そっくりに作っている。高度な文明を築いている。さすが人類だ。船に乗ること2時間ほどで、レオンハルト港へと到着した。レオンハルト港は、レオンハルトの中でも、特に栄えている港で、フェリーだけでなく、貿易船も数多く、止まっている。レオンハルト港上方には、バグミュダット最大の大河、ティアニケ川が流れる。バグミュダット最大の流域面積を誇り、数多くの支流を持つ。レオンハルト港に到着する前、桟橋からティアニケ川の河口が見えると、終わりを感じる。塩水と海水が混ざり合い、1つのドラマが生まれるのだ。龍太郎は、峯岸と、港からしばらく歩いた。そして、レオンハルトの中でも特に有名な、洋食屋に入った。そこはパスタからシーフード料理まで揃っていた。


「龍太郎、俺エビの料理にしようかな。お前どうする?」


峯岸は、エビが好きだったので、海鮮料理を注文した。龍太郎は、シーフードパスタを頼んだ。


「なあ、なんかよくねー、めちゃくちゃうまいんだけど。」


峯岸は、同意した。


「たしかに、めちゃくちゃうめぇなー、ドイツ料理とかの方が圧倒的に美味しくないから、それに比べりゃ、全然美味しいわ」


峯岸は、ドイツとフランス、イタリア、オランダなどヨーロッパの色んな国に旅行した事があった。

正直ドイツ料理は、微妙だった。


やがて料理屋を出ると、観光バスに乗った。初めてで、わからないことだらけだった。現地ガイドに聴きながら、観光をはじめた。

まず1番最初に、シュナイド大宮殿を見学した。シュナイド大宮殿は、レオンハルトから、バスで1時間走ったところにある都市シュナイドにある宮殿である。ここは、王家カタール家が、古くから収めていたのだ。

現在は、カタール17世が、城の領主であるらしい。龍太郎と峯岸は、疲れていたが、シュナイド大宮殿にとても興味を持ち、早速宮殿の入場口へ向かった。どうやら、バグミュダット公国では、日本語へ翻訳してくれるらしい。


龍太郎は、携帯型の翻訳ガイド機を手にした。


「なあ、峯岸、これ、電話だよな、ってかどう見ても、アンドロイドだよな?」


峯岸はその形状に驚いた。


「思ったわ、どう見てもGALAXYだよな、笑えるんだけど!」


龍太郎と峯岸は半笑いを堪えながら、宮殿へと入っていった。まず、1階には、ガラスの囲いがあり、そこには、多くの食器が並んでいた。どうやら、レオンハルトは、古くから食器産業が盛んだったらしい。


「バクミュダット公国の食器産業は、300年ほど前に遡ります。300年前、リヒュテイン公国から、銀の輸入が始まりました。当時、バクミュダットでは、銀食器は主流でなく、銅食器などが、主流として使われていました。当時のバクミュダット公国の国王、ハルト3世は、輸入された銀の美しさに心を奪われ、銀食器の製造を許可したと言われています。それから何年もの時を経て、銀食器が主流となりました。ご覧の通り、銀製品は多く発達し、大皿、小皿、コップ、フォーク、ナイフ、スプーン、そして燭台まで、至る食器で用いられています。そして正面に見えるお皿は、ハルト三世が実際に愛用されていたとされる食器です。ハルト三世の死後、何年かほどは博物館へと保存されていましたが、戦争により、博物館は焼け落ちました。その後、本物は、焼けてしまい、当時残された食器を元に、復元したものがこちらでございます。」


ふと、別の柱を眺めた。そこにはハルト三世の生い立ちが描かれていた。


ハルト三世は、若くして、バグミュダットを治めた。マリー・アグレット皇后と結婚した。マリーアグレット皇后は、アグレット公家の長女であり、上流貴族であったが、ハルト三世と出会い結婚した。ハルト三世とアグレット皇后との間に産まれた長男が、ハルト四世である。ハルト四世は、銀食器が大変気に入らなかったらしく、銀食器の製造に反対した。

それ以降銀食器の製造は、止まってしまったと言われている。とても興味深い話だが、これは何か聞いた事がある話だ。なんかハプスブルク家の話に似てるような。


龍太郎は、2階へ向かった。2階には当時使われていたテーブルなどがくっきり再現されていた。とても大きなテーブルだ。このテーブルに何人もの、大臣達を集め会合を行っていたのであろうか、想像もつかなかった。


「もう良くね?なんかそろそろ飽きてきたから、庭園行こうぜ」


龍太郎は、峯岸と共に、庭園へ向かった。壮大な噴水が舞っていた。美しい、水の流れは、太陽の日光が当たることで、水が虹色へと輝いていた。ほんとにここは地底なのか 。

しばらく庭園を散歩した後、バスに乗りレオンハルト最大の秘境と言われている、ロズの秘境へと向かった。ロズの秘境は、なんと美しい秘境なのだろうか。この秘境は、探検家ロズ・ナフューヘンによって発見された。


(ロズ・ナフューヘン?なんか変な名前だなーまるでドイツ人みたいな名前だな。)


ロズの秘境の頂上からは絶景が見渡せた。

レオンハルト郊外は小さかったが、大変美しく描かれ、はるか先には、先程行ったシュナイド大宮殿が見渡せる。その遥か真横に、大きなホテルがある。龍太郎は、提案した。


「今夜はあそこに泊まろうぜ。」


「いいな、でも予約してないけど、大丈夫かな?」


「心配すんな、このオールマイティパスさえあれば、俺たちは優先されるのさ、他の客なんかほっといてな」


先程ガインから貰ったオールマイティパスは、宿泊代を日本円に引き換えてくれる上にクレジットカード払いにも出来るらしい。とても便利な道具だ。龍太郎と峯岸ではロズの秘境を眺めていた時、突然うっすらとあたりが暗くなった。1人の金髪の美女が、龍太郎の前に現れた。


「ダメよ、それ以上行ってはダメ、あなた達はいずれ恐ろしいことに巻き込まれる。ダメよ。」


「えっ?誰?」


ふと辺りを見回すと誰もいなかったり 。幻覚か、確かに今金髪の美女いや、美少女がいたような。龍太郎は、峯岸に問いかけた。


「おい、峯岸、なんか今さ金髪の女がなんか俺に話しかけて来たんだけど、お前見えた?」


「いや、全然なんも見えなかったよ、幻覚じゃねぇの?」


なんて美しい美女なのだろうか。


「それより龍太郎もう6時だぜ。どっかで飯食ったらもうホテル行こうぜ。」


峯岸は、夕飯が楽しみでしょうがなかった。レオンハルトで食べた、シーフード料理をもう一度食べれるのを楽しみにしていた。その晩、ホテルで横になった。疲れが溜まっていたのかすぐ寝てしまった。

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