第148話 ドラゴンの解体

 第100階層を制覇した翌日、ドラゴンの解体作業の為、マジック・マイスターの横にある倉庫を貸して貰おうと兄上に相談した。


 すると、兄上がニヤリと悪い笑みを浮かべながら提案してきた。


「ああ、そうか。場所は手配するから、1日、いや2日程時間くれるかな? ほらこっちも準備しないといけないしね。」


 ふむ、何か嫌な予感がするのは俺だけだろうか? こう言う笑みを浮かべる時の兄上は怖い。



 一応、解体メンバーとしては、清兄ぃ達3名、父上、俺、前田、凛太郎、グリード、そしてドリュー師匠と城島君の予定である。

 早速全員に連絡を取ると、即答でOKの返事が来た。


 ドリュー師匠は別として、この世界ではドラゴンを見た事のある人は居ない。


 前田達なんかは、

「なあ、なっちゃんと、愛子ちゃんも連れて行って良いかな?」

 とかなり興奮していたし。


 ドラゴンは確かに見応えあるけどもさ、解体作業の現場って結構グロイんだけど良いのかねぇ?



 とか思ってたんだけど、意外にみんな見たいらしくて、結局いつもの旅行と同じメンバーが集まった。

 今回は更に城島君家族まで参加で、増えてるし。




 兄上から待ったが掛かってから2日後、漸く準備出来たと昼間に連絡があった。

 と言う事で、明日の朝9時から開始する事にしたのだった。




 翌朝、朝食も終わり、敬護は学校をズル休みして、我が家は全員で見に来ると言う事らしい。


 8時40分頃には、ポツポツと集まりだし、8時50分には全員が庭に揃った。

 兄上が仕込みがあるとかで、既に8時前に会社に行ったらしい。 と秘書子改め義姉上が仰っていた。


「仕込み???」


 なんだろうか? この無性に不安をかき立てる言葉は……。


 俺達は全員ゲートで会社の敷地内までやって来て、ゾロゾロと歩いて移動する。

 いつもの守衛のおじさんがニコニコ顔で挨拶して来て、

「いやぁ~、何か凄い物を討伐されたとか。流石ですねぇ」

 と敬礼された。


 守衛室から連絡が入ったらしく、兄上が飛んで来て(文字通り本当に飛んで来た)、全員を控え室へと案内している。

 何だろう? 胸騒ぎがするんだが?


「一応さ、貴重なドラゴンじゃん。だから倉庫とかじゃなくて、突貫工事で大型の無菌室作ったから。」

 とソワソワしながら言う兄上。


 で、俺達が通された控え室だが、その無菌室が一望出来る場所にある。

 ブライドを上げると、目の前にだだっ広いフラットで清潔な床と、作業台が幾つも置いてある解体室があった。


「すっげーー! なになに? この2日間でこれだけ用意したの? えらく気合い入ってるじゃん?」

 と俺が絶賛すると、


「何をおっしゃいますやら、いつもの事じゃござーせんか。ハッハッハ」

 と兄上が笑って居るが、何かあるな。


「で、オチは何?」

 と聞くと、真剣な表情に戻り、

「いやさ、せっかく世界初のドラゴンだよ? このまま解体して終わりだと勿体無くない?」

 と言う。


「ウーーン? 記念撮影でもする? みんなで。」

 と俺が言うと、


「おお、流石我が弟! 理解が早いな。」

 とニコニコ笑っている。


 ん?? とは思ったものの、言われるがままに真ん中の一段高い所に獲れたてのドラゴンを出した。頭も腕も置いてね。


「じゃあ、まずは、全員で記念撮影だな。」

 と言って何処かに連絡をすると、カメラマンが照明器具を持って足早にやって来る。

 セカセカとセッティングを行い、まずは単体を激写して回っている。


「あー、20分ぐらい、まずは撮影するから。休んでてー。」

 と。




「じゃあ、みんなで記念撮影しよっかぁ。」

 と兄上からお呼びが掛かった。


「なんじゃ、けったいな事になっとるのぉ~。」

 と清兄ぃも絶賛苦笑い中。


 これも、集合写真や核家族毎の写真等で20分程掛かった。


「ふぅ~。じゃあ、そろそろOK?」

 と聞くと、


「あー、悪いんだけど、解体作業開始はさ、11時からにしてくれない? 見物客が10時からだからさ。

 もう500名ぐらの行列出来てるらしいし。」

 と。


「おーーーい! 聞いてないよーー!」


 何かもうやる前からグッタリしちゃったよ。


 面倒だったから、午後から開始する事にして兄上に伝え、これ以上遅らせるなら、もうドラゴンを持って引き上げると恫喝して、

「だ、大丈夫だよ?」

 と了承させたのだった。



 全員、社員食堂へ行き、兄上のツケでガンガンに食い漁り、軽く宴会の様になってしまったのはご愛敬。


 結構酒が回っている一部の者達と午後1時からやっと解体作業に入ったのであった。

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