第129話 新規参入メンバー

「うーん、届かんな。」

「ああ、父さん、俺は1つ上がって78だよ。」

 とは、叔父上と聡君親子の会話。


「父上はどうなの?」

「ん? そりゃあ、頑張ってるぞ?」

 ああ、まだ上がってないんだね。 これが我が家の会話。


 と言う事で、聡君と父上は78でタメとなっている。

 尤も、レベルだけで全てが決まる訳では無いが、レベルが上がればステータス値も上がるし、何よりも実戦の経験数が、底力を引き出してくれる。


 少し父上に発破を掛ける為、俺は父上のヤル気を滾らせる、魔法の言葉を呟く。

「敬護とさ、皐月がね、爺ちゃんのカッコイイ所を見たいって言ってたよ。頑張って!って」


「おお!! そ、そうか! フフフ、しょうがないなぁ。ジジ頑張るぞーー!」

 と頑張るとは正反対の、ニンマリと締まらない顔で力拳を作っていた。

 我が父ながらに、チョロい。


 そんな父上を見て清兄ぃが、

「フッ……こいつも、まだまだ若いのぉ~。」

 と失笑していた。



 まあ、こんな和気藹々ムードではあるのだが、実際の所、俺は多少焦りを感じていた。

 まだ開始して3日目なのだが、叔父上は兎も角、父上と聡君はこのペースでは、間に合わないのではないかと、思い始めている。

 レベル上げに必要な経験値は、ご存知の通り、レベルが上がるに連れ、より多くなっていく。

 レベルが上がれば上がる程、上がりにくくなっていく。


 俺は、経験値倍増スキルがあるので、ある意味ズルをしている訳であるが、他の人達は、ズル無しである。

 流石に、このズル無しでは厳しいかも知れない。

 一度、大神様に相談しないと駄目かもな。




「兄上、一つ相談が。」


 会社から戻って来た兄上を捕まえ、俺の鍛冶小屋へと連れて来た。


「何だい? あらたまって。」


「いや、実は今度のミッションの件だけどさ、俺達がガーディアン・ゴーレムが100体の相手をしている間に、魔力回路を組み直しが出来る錬金スキル持ちが必要なんだよね。」


「ああ、そう言えばそうだったね。

 なるほど、それで俺か。

 まあ、作戦参加は全然OKなんだけど、俺程度の腕で良いのかな?

 それに、俺、最近余りどころか、殆ど錬金から離れちゃって、社長業ばかりだからなぁ。

 流石に若干所でなく、荷が重いなぁ。 戦闘だけなら自分が死ぬか負傷で終わりかも知れないけど、そっちが一番人類に影響あるよなぁ。」

 と兄上が言う。


 うん、そうなんだよね。最近メッキリ魔道具を作ったりしているのを見かけないいし、無理だろうなぁ。


「そうなると、錬金スキル持ちを探す必要があるけど、流石にマジック・マイスターの一般社員だと、戦闘に巻き込むのはなぁ。

 誰か他に居なかったかなぁ。ガッツリ錬金に嵌まっている奴。」


「「ああーーー! 城島君だー!」」


 そうだよ! 城島君だよ。

『好きこそものの上手なれ』では無いが、奴は最初から錬金スキルと鍛冶スキルを持っていて、しかも、滅茶滅茶魔方陣の載せ方が上手い。

 俺はそれを見込んで、高校の頃から仕込んでたんだよ。

 スッカリ、マジック・マイスターに入社したので、忘れてたな。


「兄上、城島君って今、社内のどの部署なの?」


「ああ、あいつは、新人とは言え、凄いからねぇ~。 工作部の特殊部門に入って貰って、好きなだけ錬金や鍛冶をやらせてるな。

 ハッハッハ。流石俺だ!」

 と自分の采配を自画自賛する兄上。


「いや、確かに、ナイスだぞ! 兄上。

 早速ちょっと連絡してみるよ。」



 と言う事で、態々と言う距離でも無いが、電話で連絡し、会社帰りに我が家へと来て貰ったのだった。




「お久しぶりです! と言うか先週お逢いしましたね。へへへ」

 と照れくさそうに笑う城島君。

 そう、俺の策略通り、城島君と双葉は現在絶賛交際中である。


「なあ、率直に聞くんだが、城島君は今レベル幾つぐらい?」

 と聞くと、高校卒業までに、かなり頑張ったらしく、現在はレベル41だそうで。


「ほぅ、結構上げたねぇ。」

 と言うと、


「ええ、双葉が私よりもとは言わないけど、喧嘩出来るぐらいにはなって欲しいって、ダンジョンデートしてましたんで。」


「え? 何その喧嘩前提のレベル上げデート。怖いんだけど。

 双葉って、そんな感じだったっけ? ハハハ」

 と思わず苦笑い。


「そうか、でも41か。うーん、直接戦闘さえガード出来れば、何とかなるかな。」

 と俺が腕を組んで思案していると、


「えーっと、先程から独り言で直接戦闘とか、割と物騒なキーワードが漏れてますが、何かあるんでしょうか?

 まあ、俺で役立つなら、何でもやりますけど。」

 と男前な事を言ってくれる城島君。


「ああ、すまん。 そうか、何でもやってくれるのか! ありがとう! 助かるよ……人類と言うか世界が。」


「え? 人類? 世界?? 何かちょっとスケール感が、俺の思ってたのと、乖離が大きいんですけど………。

 いったい俺は何をやれば良いんでしょうか?」

 と困惑気味の城島君。


「まあ、そうだな。双葉と付き合って、何れは結婚も考えてくれてるんだろ?」

 と俺が聞くと、顔を真っ赤にしながら、「勿論です。」と頷く城島君。


「そうか、義弟よ! 実はお前に俺らのチームの一員になって欲しい。

 これをやろう。」

 と俺は、チーム佐野助のトレードマークとなっているフェイスマスクを取り出した。


「…………」

 フェイスマスクを受け取り、固まってしまう城島君。


「えぇーーーーー!? こ、これって、チーム佐野助のフェイスマスク!?

 えええ? あつしさん、えーーーー?」

 と暫く騒いでいたが、


「………なるほど、色々と今までの疑問の答えが貰えた気がします。

 なるほど、道理でなぁ~。 え?でも、俺をチームに?? どう言う事でしょうか?

 おれ、レベル41ですよ? 戦闘力としては、全然なんですが………。」

 とチームに勧誘して来た理由を聞いて来た。


「実は、俺達が知る中で、お前しか適任者が居ないんだよ。

 それに、一般人を巻き込む事もおいそれとは出来ないしな。

 もし他に漏れると、完全にパニックが起きる。 復興し始めた他の国も全てだ。」

 と前置きしてから、大神様から予告のあった内容を説明して行った。

 そして、ある程度以上の錬金の腕が必要な事も説明した。


「なるほど、理解しました。

 でも、そんな大役、本当に俺で良いでしょうか?」

 と城島君が不安気に聞く。


「確かに大役ではあるんだが、恐らく、現在の人類の中では、俺の次の位置に限りなく近いのは、お前だと俺は思っている。

 兄上も昔は錬金に嵌まって居たんだが、もう何年も錬金から離れてて、流石にこの大役には、不安が残る。

 俺が出来れば、それに超した事は無いのだろうけど、ガーディアン・ゴーレムが100体の相手をしないといけないし、そっちまで手が回らない。」


「判りました。その大役、命に代えても果たしてみせます!」

 と城島君が堅い決意を表す様に、俺とガッチリ握手した。


「よし、と言う事で、明日から、お前もレベル上げな! 今回直接戦闘は無いかも知れないが、レベル上げが一番成功への近道だろう。

 錬金の熟練度上げも同時に必要だし、忙しくなるぞ!」

 と言うと、若干ゲッソリした様な顔になっていた。


「だけど、まだ40代だろ? 俺らよりはレベルが上がり易いじゃん。

 父上とか、聡君居るだろ? 今必死でレベル90代にしようと、毎日必死だぜ?」

 と言うと、


「まあ、確かにそれに比べれば……。

 あ!でも、会社はどうしますか?」


「ああ、そんなのは、兄上に言って置くから安心してレベル上げに専念しとけ。

 明日は、朝の8時に、俺の家に集合な。

 あーー、面倒だから、いっその事、こっちに暫く泊まるか? 双葉の部屋でも良いが。」

 と俺が言うと真っ赤な顔をして、


「あ、いや、もし泊めて頂けるなら、普通に客間とかでお願いします。」

 と言っていた。


 俺は、早速、城島君を連れて、母屋(実家)へと行き、兄上達も呼んで、城島君のチーム佐野助への参入を話したのであった。

 双葉が、ちょっと頬を赤らめて、嬉しそうにしていたのが、初々しかったな。

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