第128話 秋のレベルアップ集中月間

 平穏な夏が過ぎ、秋がやって来た。

 そう、食欲の秋。

 我が家と言うか、俺の周りには年中食欲だらけの気がするが、レベルが上がるとアイドリング時でも燃費が悪いのでしょうが無い。

 最近の変化と言うと、暫くお休みしていた母上やさっちゃんだが、子育てが一応、落ち着いた事もあり、また月ダンジョンでの訓練を再開し始めた。

 本人達曰く、食欲の秋に備えた、シェイプアップなのだそうだ。


「やっぱり、暫くやってないと、勘が鈍るわね。」

 と2人が話していた。

 しかし、最初の内は浅い階層で勘を取り戻した後は、以前の到達階層の半分辺りから、徐々に階層を上げて行くつもりらしい。

 まあ月ダンジョンの仕様なので、特に心配は無い。


 ピートと敬護もチョイチョイ、月ダンジョンに一緒に潜ってレベル上げをしているようで、2人共にドンドン実力を付けて来て居る。

 敬護に関してはまだ小学生と言う事もあり、そんな小さい子供に殺生をさせて良いのか? と言う人が居るかも知れないが、カサンドラスでは、これで普通なのだ。

 寧ろ、魔物が居る世界では、身を守る術を全く教えない方が、どうかしている。

 そう言う、綺麗事だけの時代は終わったのだ。



 さて、俺はと言うと、小豆島ダンジョンの攻略が完了したので、ダンジョン攻略は暫くお休み。

 秋の旅行先をワクワクしながら物色している所である。


 候補としては、山形の天童温泉辺りか、いっそ鹿児島の霧島温泉、それか北海道の登別温泉、あと定山渓温泉もなかなか良いな。

 週末を利用した二泊三日だから、それ程大掛かりにはしない予定だったのだが、いつのまにか、参加人数が増えてしまい、いつものパターンになってしまった。


「フフフ、まあ良いじゃ無い、旦那様。

 みんなで行くって言っても部屋は別だし、それに楽しいじゃない。」

 とさっちゃんが、俺の肩をトントンと叩いて慰めてくれた。


「いやまぁ、良いんだけどさ、結構大掛かりになってしまって、割と地味に面倒なんだよね。」


「フフフ、宜しくお願い致しますね? 添乗員さん!」



 まあ、そんな訳で色々とチェックした結果、天童温泉に決めようとしていたのだが……その日の夜中、


「やあ、久しぶりじゃのう。元気にしとったかの? まあ、ちょいちょい確認しとるけど。」

「久しぶりですわね。 幸せそうで、何よりですよ。」

 と大神様と女神カサンドラ様が夢に登場した。


「どうも、ご無沙汰しております。

 お陰様で家族との楽しい時間も取らせて頂いてます。」


「……でじゃ、 ……」

 と妙な間を取りつつ、言いにくそうな大神様。


「ん? 何か嫌な間がありますね。凄く嫌な予感がビンビンしているんですけど?」


「じゃよな。ちょっと困った事があっての。と言うか、かなり想定外の事が起きる予定なんじゃ。」

 と苦い顔の大神様。


 ポツリポツリと話出す内容を纏めると、

 ユグドラシル大陸をこちらに無理矢理持って来た時の『無理矢理』が結構祟ってしまって、どう言う理屈なのかは判らないのだが、そのユグドラシル大陸のある世界を破壊した魔動兵器が、時間差でこっちに来てしまうらしい。

 しかも、かなりヤバい兵器で、まだ稼働と言うか、暴走していて、その状態のまま、こちらに転移してくるんだとか。


「え? それヤバい所じゃ無いんでは?」


「じゃよ。」

「ええ、そうね。かなり拙いわよ?」

 と困り顔の二柱の神様達。


「どぇーーー、どうするんですか? 既に一つの世界を破壊しちゃった兵器ですよね? そんなの来たら、地球も?」

 と聞くと、頷いていた。


「つまり、その兵器を止めろと言う事でしょうか?」

 と確認すると、


「そうなんじゃよ。止めて欲しいのじゃよ。せっかくここまでにした世界をみすみす壊されてしまうのは、忍びないでのぉ。」


「出現場所と出現日時、それにどんな兵器で、どうやって止めれば良いかは教えて貰えるのでしょうか? あ、あと出現から止めるまでの時間的猶予も。」


「ああ、その事はちゃんと事前に出来る限りの情報を教えるぞい。 のう、カサンドラちゃんよ。」

「ええ、一応、兵器の情報と止め方に関しては私の方から教えるわ。」

「日時と場所と猶予はワシから教えるでの。」

 と。


「ちなみに、今の俺らで大丈夫なんでしょうか?

 レベル的な物もですが、単に破壊なら、力業だけかもですが、例えば停止させるとかだと、俺の錬金とかの知識で間に合うのかも心配です。」


「なるほど、確かに、それは言えるのぉ。どうなのじゃ? カサンドラちゃん。」


「えーっと、そうですね。 破壊する前に一回強制停止部分の魔力回路を組み直してから破壊した方が安全確実なのですよ。

 但し、その魔動兵器の内部には、ガーディアン・ゴーレムが100体程居まして、かなり手強いのです。

 なので、単身でとなると、厳しいと思われます。

 魔力回路の組み直しは、こちらで方法と魔方陣をお教え出来ますので、徳治郎さんで全然問題無いですが……」

 とカサンドラ様が、申し訳無さそうに告げて来た。

 レベル90以上が徳士(徳治郎)の他に最低3人は居ないと、そのガーディアン・ゴーレムが100体の相手をするのは厳しいだろうと言う事だった。

 つまり、4人でガーディアン・ゴーレムが100体を相手にしている間に、別の奴が魔力回路を組み替える必要があると言う事らしい。


 えーー、レベル90以上って、清兄ぃしか居ないんだけど? あと2人か。

 叔父上が確かレベル82辺りだよな。 あれを無理矢理上げて、後は誰だ? 兄上は60代中盤、聡君は70代後半だった様な……

 あ!父上!! 70代後半だっけ?


 と頭の中で思案していると、


「ザックリじゃが、多分出現まで、一ヵ月も無い。3週間前後だと思ってくれ。

 出現すると、猶予は最大一日半くらいじゃ。

 また確定したら教えるでの。」

 と大神様。


「じゃあ、頼んだわよぉーーー……」

 と言いながら消えて行ったのだった。



 翌朝、目覚めると、直ぐに緊急事態と言う事で、チーム佐野助を緊急招集したのだった。




「だから、普段から必死にレベル上げせいと、言っておったじゃろ!

 80過ぎでもうすぐアラ90のワシがレベル98まで上げておるのに……」

 と説教をかます清兄ぃ。


「うむむ……、俺は今レベル88まで上げておるので、あと2つ3つ上げれば済むが、あと一人は、どうする?」

 と叔父上。


「お、俺か? 俺は78だな。後、最低12か。うーん、厳しいよなぁ。」

 と父上。


 聡君はレベル77だそうで。


 と言う事で、メンバーの4人目は父上か、聡君で決まり。まあ出来れば5人でも問題無い訳だから、頑張ってレベル上げを集中的にやって貰う事になった。


 え? 旅行? そんな場合じゃないからね。 中止っすよ、中止。

 これには、家族だけで無く、地球全体掛かってるから、誰からも文句は出なかった。



 とにかく、最低ラインのレベル90に満たない人達は、俺や清兄ぃが走破した、ダンジョンの第80階層以上を集中的に単独で廻って貰う事とした。

 少しでも経験値を多くしないとダメだからね。 勿論、夜中は月ダンジョンにも行って貰うし。



 こうして、佐々木家、秋のレベルアップ集中月間が始まったのであった。

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