第127話 報復

 いや、一件落着では無かった……。


 これまでは、暗黙のルールとして、政府やギルドの関係者のみで俺達の情報を押さえていたに過ぎなかったのだが、バカ共のせいで、一部のマスコミには俺達の住居や人物が割れてしまった。

 政府は、これに対して、事の重大性をやっと理解し、慌てて口止めを行ったらしいが、一度漏れた情報を止める事は出来なかった。


 特にフリーのパパラッチやライターが、これぞとばかりに動きだしたのだ。

 残念ながら、一度動き出した歯車を止める事は出来なかった。

 それらの敵対的行動を察知した俺は、直ぐにそいつらを確保して、月ダンジョンに消えて貰った。


 甘すぎたのか。

 そこで、俺達は、佐々木家や仲間である、前田達、グリード等を招集し、作戦会議を開いた。

 大々的に情報を知り得た者へ広報を行った。


「今回の政府の取った行動で、我々チーム佐野助の情報を知った奴の詳細情報は一族全員分、全て押さえた。

 既に一部の敵対的行動を取った者達には、その考えの甘さを自分の身をもって理解して貰った。

 これは、我々がこれまでに行った作戦や業績を見て貰えば、簡単に理解出来るだろう。

 今後、もしこの先、我々や我々の家族、仲間に、その漏らした情報に起因する不利益や被害が出た場合、その者の一族はおろか、所属する会社も全ての対象とし、我々への敵対行動と解釈する。

 尚、これは情報を知り得た者全員の連帯責任として、一斉に発動する。

 二度と日本には戻れないと理解して欲しい。魔境への永住をご招待しよう。

 脅しでは無い事は、旧★国、旧○○○国、旧▲国がどうなったかを知れば判るであろう。

 そして、その場合、我々は、日本から一切の手を引く。

 これは我々の助力は不要と日本全体が弓を引いたと考える事にする事にした。

 再度警告する。我々に触れるな!

 もし、我々の真剣度を試したい者が居れば挙手してくれ。

 体験ツアーにご招待しよう。但し戻る事は出来ないが。」

 と盛大に脅した。


 この発表は、マスコミ各社で大騒ぎとなり、散々荒れたらしいが、結局一日でシーンと静まり返った。

 制裁の一部に俺達が日本から手を引くと言う事の意味とそれが招く結果を理解した政府が、マスコミ各社等に日本全体の生活が成り立たなくなると言う事実を説明したらしい。

 つまり、俺達が手を引いた場合、この先の国の発展は無くなる。

 株式会社マジック・マイスターが無くなれば、全ての電力供給やダンジョンのバリケード等、生活そのものが崩壊する。


 改めて、事の重大性を政府や各省庁レベルまでが理解した結果、丸坊主シリーズは全員辞職と言うか、懲戒免職等の重い処罰となった。


 幸いにも、子供らに影響は出なかったものの、今後は安心出来なくなった。


 実際の話であるが、全てを止め、何処かに引っ込んで暮らすと言う話も出たのである。

 それはユグドラシル大陸でも、何処かの無人島でも何でも良い。

 必要な資材や食料は、全部買い占めて持って行けば良いだけの話である。

 しかし、そうなると、我々大人は良いが、子供らが可哀想と言う事で、思い止まったのであった。



 と言う事で、完全にやる気を喪失してしまい、現在ダンジョンアタックも中止して、家で家族とマッタリ暮らしている。

 マジック・マイスターの方も、政府関連やマスコミへの出荷を押さえ気味にしたりしている。


 俺達が行動を抑制している影響が、微妙に経済にも影響を及ぼしているらしいが、知らん。

 俺は、1~2年は活動しない事にしているし。

 せめて、我々サイドの最年少が赤ん坊ではなく、敬護ぐらいであれば、もう少しマシだったのだが、3歳未満だからなぁ。

 敬護なら、ある程度の脅威に対しても、対処出来るし、自分の身も守れる。



 自慢では無いが、俺達の供給していた魔石はこの国の消費量の1/3近かった様で、備蓄分で補っていたらしいが、その備蓄が尽き掛ける頃、日本政府が焦り始めた。

 日本政府がこの経済悪化や備蓄の減少の原因が、俺達の活動停止や生産抑止にある事に気付いたらしい。


 前任の後を継いだ首相から、会談の申込みがあったのだが、

「いえいえ、我々の様な者にそんな会談など。」と丁寧にお断りした。


 すまんな、俺は割と根に持つ性格なんでな。


 バカなマスコミが、政府批判とか色々やらかしていたが、政府がこの経済の停滞の原因の一端が、マスコミにもある事を会見で話し、シーンとなってしまった。


 俺達は、週末の度に、彼方此方へと旅行し、温泉に浸かったり、美味しい土地の物を頂いたりして、楽しく過ごしていた。


 一般的には全く働いて居ない様に思える俺達だが、実は、裏で彼方此方のダンジョンをちょいちょいアタックしていたりした。

 だって、暇だったし。

 幾ら家族大好きであったって、家に籠もりっきりとかは俺の性分ではない。

 魔石や素材だって、急に物を増やすなんて出来ないから、活動してない風を装って、ちゃんとストックを増やしている。



 半年が過ぎた頃、断末魔に近い政府からの電話に出た俺は、会合を了承した。

 内閣の官僚や、各党の代表、各省庁の事務次官や主立った立場の者達を一堂に集めた会合である。


 そして、首相以下全員からの謝罪から始まったその会合の席で、条件を出した。

「まず、気に入らないのは、各省庁の構造と言うか風習と言うか、利権とかを確保しようとする自己愛だらけの体制ですよね。

 そして、何か問題を起こしても全く責任を取らない。国を運営していると言う自覚が足りないんじゃないですか?

 幾ら頭が良くても、人格的に欲塗れの奴は採用しちゃ駄目でしょ。

 今の各省庁の職員でそんな欲塗れの奴以外は殆ど出世してないんじゃないでしょうかね?

 それを一新して頂きたいですね。

 その天下り先としか思えない利権団体、本当に必要でしょうかね? ぶっ潰しちゃっても何の問題も無いのでは?

 各省庁の官僚達の性格や資質や考え方まで全て適性検査して、処分するなり、上に上げるなりして、全改革して欲しいですね。

 あとは、国会議員もですが、やはり選択して先導した結果には、全部責任を持って頂かないとね。

 権力には責任がつき物なのに、何故か政治家だけは、有耶無耶ですよね。

 それは法律を作るのが政治家だから、自分らを罰する法律には温いんですよねぇ。

 マスコミに対しても同じですよ。報道の自由を履き違えてますよね。

 これもBTOとかあやふやな物とか、ウサ臭いメンバーで構成されてる『知識人』も変ですよ。

 そんなの『知識人』を選ぶ側の思惑次第でしょ。

 国民を舐めすぎなんですよ。」

 と俺が言いたい放題言うと、シーンとなった。


「仰りたい事は重々理解致しました。

 まあ、これまでの政治家なら、これから前向きに検討致します とかで言葉を濁すシーンではありますが、首相として断言致します。

 それらの事を全て、改革または、解体や適正の見直しなど、全てを私の任期内に終わらせる事を約束致します。

 その為にも是非、口約束の段階ではありますが、以前の様に活動して頂けないでしょうか?」

 と言う事で、取りあえずは信用して、活動再開を約束した。


「その代わり、抵抗する省庁の官僚達は確実に居るでしょうから、そいつらの名前や詳細を私に教えてくれれば、こちらで対処しますので。」



 結果、3日後には、イキナリ経済に活気があふれ出した。

 俺達が裏でストックしていた魔石等を4回に別けて市場に出すと、一気に魔石不足や素材不足が解消されていったのだった。

 はぁ~、何かドッと疲れるなぁ。


 首相は、約束通り、色々と精力的に動き出した。

 本来であれば、かなり抵抗を示す筈の各省庁であるが、これに関しても『不思議』と大きな抵抗はなかった。


 別に、俺らの思い通りに無茶したいとも、裏で牛耳りたいとも思わない。

 住みよい日本であれば、それで良い。


 しかし、少なからず、変な欲や悪意を持った奴が居て、そんなのに限って変に権力や利権を欲しがる。

 それして日本人が知らぬ間に、着々と自分の欲塗れの王国を作り出して行く。

 幾ら日本人に危機感が無いとは言え、あんまりである。

 前回、糾弾の日以前に日本に蔓延っていた元凶の第三勢力は日本から叩き出したが、今回はそれに漏れたゴミの一掃と考えたい。


 平常に戻った事で、さっちゃんも少しホッとした様に見えた。

 やはり口にはしなかったが、心配していたらしい。

 すまないねぇ~、気苦労を掛けて……。





 -------------------------------------------------------------------------------------------

 若干、当初の内容から急遽変更致しました。

 こっちの方が面白そうだったので。

 ご提案ありがとうございました。m(__)m

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る