第103話 ジャンセン王国塩対応

 翌朝になり、本部へ連絡を取ると、既に日の出と共に自衛隊の救援部隊が飛び立ったと聞き、ドライスラー王達と朝食でそれを伝えた。

 昨日は、バタバタしていたので、余裕が無かったが、廊下や朝食時に見かけるメイドさん達が、滅茶滅茶別嬪さん揃いで、下手なメイド喫茶のメイド顔負けである。

(いや、俺は行った事ないからね? さっちゃん一筋だし。)


「なぁ、徳や、この王宮のメイドさん達って別嬪さんばかりじゃのぉ。

 どの子も、ドストライクじゃぞ!!」


 おいおい、何言ってるんだろうね? この爺様は。歳を考えろ!歳を!!

 どの子も曾孫クラスじゃねぇ~か!


 と心の中でボヤきつつ、 昔はここまで女好きじゃなかったんだがなぁ……リフレッシュ掛けてから、顕著に性格が変わったのかな?

 と思案してしまうのであった。


 念の為、朝食の際にジャンセン王国の事やジャンセン王の人柄についてをドライスラー王に尋ねてみたのだが、ドライスラー王国とジャンセン王国とは、取りあえずは平穏に国交があるらしい。

 で、気になったのは『ジャンセン王の人柄』についての見解だが、ドライスラー王曰く、


「まあ、あまり他国の王を悪く言うのも何なのだが、先王はそこそこに話が出来る方じゃったが、現王は……若さ故の傲慢さはあるかのぉ。まあ、何にしても警戒を怠らず、隙を見せない方が良いじゃろう。」

 と言葉を濁していた。

 ちなみに、そんな国において、大臣は優秀で、一角の人物との事らしい。

 今現在の王になって、あの国が持ち堪えているのは、大臣の手腕と人柄故と言うのが一般的な評価らしい。


 うーん、行くのが少し嫌になったな。

 まあ、一旦行ってみてから、日本政府との橋渡しをするか決めるかな。



 ◇◇◇◇



 ドライスラー王国に別れを告げ、空に飛び上がると、ジャンセン王国方面へと進路を取った。

 そうそう、昨日ドライスラー王に聞いた話だけど、どうやらこの大陸での領土意識は、現代ともカサンドラスとも違っていて、明確な領土とは、支配する城塞都市の開拓した部分を指すらしく、王国範囲内としても未開発の土地に関しての支配権ってのは無いらしい。

 まあ極論を言えば、王都から3kmぐらい離れた未開の地を、開拓しちゃえば、自分の物って事らしい。

 もっとも、最先端の都市までは、王国の範囲と考えられるので、開拓したら、王国の貴族として迎える事になるらしいのだが、実にアバウトな感じである。



 獣人の集落はそんな範囲内にも点在しているが、明確に王国には所属していないので、貴族としても取り立てられておらず、王国民としての登録も無いらしい。

 尤も、だからといって、差別や迫害を受けている訳では無く、土地は余っているんだし、お互いに干渉せず気楽にやっている結果なんだとか。


 まあ、そんな訳で、王国範囲内にはあっても、獣人達の集落に対してドライスラー王国からのフォローと言うか救済は無い。

 その為、俺と清兄ぃは、獣人の集落を見つけると、立ち寄って救援物資を渡して廻っている訳である。



 結果、ジャンセン王国の辺境都市に到着するまでに、30箇所程の獣人の集落に立ち寄った為、大幅に時間を食ってしまったのだった。

 ジャンセン王国の辺境都市、ガタンゴラス領は、ザインツ領の城塞都市よりも大きく、城壁も立派ではあった。

 俺と清兄ぃは、城門の50mぐらい手前に降り立ったのだが、イキナリホラ貝の警報が鳴り、有無を言わさぬ弓矢の攻撃による歓迎を受けた。

 光魔法のシールドを貼り、弓矢を防ぎつつ風魔法の拡声で呼びかけをしたが、その攻撃は止む事が無く、余りにもイラっとしたので、そのまま上空へ飛び上がり、スルーしてジャンセン王国の王都へと向かったのだった。


「徳や、先程のアレは流石に反撃して潰してしまっても良いんじゃないかの?

 俺達に攻撃して来るとか、1000年早いって事を判らせてやりたかったんじゃが。」

 といたくご立腹中の清兄ぃが、冷たい笑みを浮かべながら聞いてきている。


「まあな。国全体がバカなのか、あそこの領主がバカなのかは判らないから、取りあえず我慢したけど、王都でも同じなら、成り行きで考えようか。」

 と俺も黒い笑みで答えたのだった。



 カサンドラスでも当時、バカな国家は存在していて、愚王や選民意識の高い貴族による横柄な態度に激怒した事が、数え切れない程にあった。

 まあ、その都度ケジメは取ったけどな。


「でもせっかくこちらの世界に戻って来たんだから、今生では出来れば殺しはやりたくないなぁ……。一歩間違うと魔王になっちゃうし。」

 と呟くのだった。



 ◇◇◇◇



 途中何箇所か獣人の集落に寄った事で、時間を食ってしまい、途中の草原に降りたって、テントで一泊する事にしたのだった。


「なあ、徳や。どうもこのジャンセン王国は、ワシは好かんのぉ。」

 と夕食を食べながら呟く清兄ぃ。


 理由は簡単で、ちょくちょく寄った獣人の集落から、聞いた話が素である。


「ああ、あの獣人達から聞いた話の通りなら、助けるに値しない奴らだな。」


 つまり、貴族がどうしようも無いバカ貴族ばかりで、更にに遣りたい放題の支配層からのストレスの捌け口か、この国の人族は、獣人達やその他の種族を下に見ていて、城塞都市への立ち入りを禁止したり、獣人相手なら犯罪も罪を問われなかったりしているっぽい。

 尤も、そんな人族に遅れを取る程、獣人達の戦闘力は低く無く、寧ろ力や俊敏さでは、圧倒的に獣人が上である。

 なので、滅多に暴力や性的な被害に遭う獣人は居ないらしいのだがな。


「まあ、日本も今は食料とか諸々余っている訳じゃないから、無理に助ける事は無いしな。

 どうせ放っておけば、自滅するか、何処かに侵略するだろうな。」


「となると、問題は何処にこいつらが侵略を仕掛けるかじゃな。」



 取りあえず、定時報告で本部の方へ、ジャンセン王国に関する情報を報告し、警戒を促した。

 決して日本の位置を教えない様にと。

 更に明日王都に行った時の状況によっては、『自衛の為に』反撃してしまうかも知れない事も通達しておいた。

 それを横で聞いていた清兄ぃは、面白そうにクックックと声を漏らし、悪い笑みを浮かべていた。


 通信を終えた後、清兄ぃが、

「なあ、徳や、面白いから、ここら辺に別荘建てねぇか?

 城壁も立派な奴を。開拓した者勝ちなんじゃろ?」

 と清兄ぃ。


 ふむ……、確かに面白い案ではあるな。


「フフフ。じゃあ明日の流れ次第で、考えようか。フフフフフ。」



 夕食後、風呂に入って、さっちゃんの声を聞き、ついでに父上にも明日の流れ次第で、ここに別荘を建てる事を伝えておいた。

 サイズ次第では、城壁作るのを手分けして手伝って貰う可能性あるからね。


 まあ、そんな事を考えていたら、少し気が楽になり、あれ程明日の王都が嫌だったのが、逆にワクワクし始めたのだった。



 ◇◇◇◇



 早朝、朝食を済ませ、早々に王都へと飛び立った。

 一晩明けてもワクワクしている。


 やっぱ、人間無理に感情を抑え込むのは体に良くないなぁ。

 遣り返す事を前提であれば、どうにでも出来るからな。

 もし、もしだが……喧嘩をふっかけて来るのであれば、誰に喧嘩をふっかけたのかを教えて遣れば良いんだからなぁ。

 ハッハッハ。



 そして、2時間ぐらいの飛行時間で、やっとジャンセン王国の王都の城門前に到着したのだった。


 城門の50m手前に降り立ち、直ぐに風魔法の拡声を使って日本国の特使である事を伝えたのだが、一斉に攻撃を受けた。

「ホントにこいつら、正気かよ……。」


 そして、城門の上の騎士曰く、


「ただちに武器を放棄し、投稿せよ!食料他所持品の一切合切を提供せよ!これはジャンセン王陛下のご命令である。」

 との事。


「清兄ぃ、ヤル気らしいから、取りあえず殺さない程度にデカいのをお返ししとこうぜ!」

 と俺が伝えると、


「ほうじゃの。せっかくあちらさんから、理由を作ってくれたのじゃ。ちゃんとお返しせんとなぁ。ガハハハハ!」

 と豪快に笑っていた。


 俺は拡声を使い、一方的に通達した。


「おう、おめーら!日本と俺らをなめるなよ! 誰に向かって喧嘩をふっかけたのか、判らせてやるよ!」と。



 俺と清兄ぃは、分散し、それぞれの位置から魔力を練り、ファイヤーランスやアイスカッターを城壁や城門に向かい放った。


「「チュッドドドーーーン」」

 と炸裂音や城壁が崩壊する音が辺り一面に鳴り響いた。

 更に攻撃の手を緩めず、次々と城壁を破壊して廻る。

 城壁の上の兵士や騎士達は、城壁から放り出され、骨折したり怪我をして、地面や壊れた城壁の石の上で呻いている。


 しかし、俺達はお構いなしに、更にドンドンと城壁を破壊し、とうとう外周の半分以上の城壁を破壊した。


 最初の攻撃以降、先方からの反撃らしい反撃も無く、1時間半ぐらい一方的な攻撃を続け、最後には南門を残すだけの状態となったのだった。

 そしてついでに、王城の城壁も全部ぶっ壊して遣ったよ。

 ハッハッハ!!! ざまぁ~。


「ハッハッハ! いやぁ~、これだけヤレれば、スッキリするのぉ~。

 久々に大々的に魔法を使ったわい。」

 と上機嫌の清兄ぃ。


 俺は、本部に無線通信を入れ、交渉決裂……と言うか交渉すら無く、イキナリ攻撃を受けた事を告げ、『やむなく』城壁に対して報復攻撃を『チョコッと』だけ(残して)仕掛けたと報告したのだった。

 フフフ、上手く伝わったかな?

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