第96話 城島君の才能
部員らにとって、実に有意義な合宿も、無事に終わり、久々に愛する家族と一緒の時間を過ごしている。
双葉経由の話だと、俺が率いた9名は、合宿の間に約723万円(端数切り捨て)を稼いだらしい。
清兄ぃのグループも大体似たり寄ったりで、約689万円(端数切り捨て)になったらしい。
まあ、それを使って進学するも良し、新たな冒険の元手にするも良し、新しい魔道具等の研究資金にするも良しである。
冒険者のランクもEランクからDへと上がったらしい。
まあ、全員には一応「今回無事に稼げたと油断して、舐めると死ぬぞ? 1人1人の力だけでなく、チームとして成立した結果だから、増長するなよ?」と釘を刺しておいたが、若干心配である。
俺もカサンドラスで一時期そうだったが、若い時って、割と自分の実力を過大評価して、『俺TUEEEEEーーー!』ってなりやすいからなぁ。
「アッ君、私達も海行きたいなぁ~」
とさっちゃんが、皐月を抱っこしてあやしながら、お強請りして来た。
「だよな。暫く行ってないもんな。」
「お父さん、僕も海、行きたい!」
と敬護もお強請りしている。
と言う事で、サクッと準備して、家族4人でまた無人島へとやってきた。
大きめの遮光フライシートを張って、日陰を作り、レジャーシートとソファー、それにテーブルを出して準備完了。
久々にビギニ姿のさっちゃんが、眩しかった。
敬護を抱いて、海に入ると、敬護がキャッキャとはしゃいでいて、波を引っ被って、
「わぁーー、しょっぱい!!!」
と叫んでいた。
暫く敬護と遊んだ後、さっちゃんにバトンタッチして、俺が皐月のお守りをする。
ああ、良いな~、こんな平和な休日も。
午前中散々遊んで、敬護が少し疲れた頃、昼ご飯時となり、さっちゃんが、お弁当を出して来た。
「えへへ、今朝こうなる事を見越して、作って来たんだ。」と。
「おお!今日はさっちゃん弁当か! 敬護、お母さんが、お弁当作ってくれたぞ!」
と俺が喜びながら敬護に言うと、敬護も「わーーい!」と手を叩いている。
海で食べる愛妻お握りは実に美味しい。
出汁巻き卵や、鶏の唐揚げ、タコさんウィンナー等、重箱2段に所狭しと綺麗に並んでいる。
「お母さん、おいしいよー!」
と敬護が言うと、
「ウフフ、そう、良かったわ!」
と嬉しそうなさっちゃん。
「さっちゃん、俺幸せだわ。何かこんな平穏な日々を過ごせるなんて思ってもみなかったよ。ありがとうな。愛してるよ!」
と真剣な顔でシミジミ呟くと、盛大にさっちゃんがデレていた。
が、そんな雰囲気をぶち壊すかの様に、皐月がオムツの中にヤラかし、泣き始め、慌てて俺はテントを設置して、さっちゃんはオムツ交換しに入っていったのだった。
敬護は、そんな俺達を爆笑しながら、お弁当を食べていた。
午後は、敬護と砂浜で大きな山を作ったり、城島君を真似て、魔法で砂の城を作ったりして夕方近くまで遊んだのだった。
◇◇◇◇
翌日、約束通り、城島君が家にやって来て、久々に母上と挨拶したりしていた。
「まあまあ、あの時の城島東次君なの? まあまあ、立派になって。」
と久々の対面で驚く母上。
まあ、それ以上に、母上の若さにビックリしている城島君だったが。
「え?双葉ちゃんのお母さん? え?? 全然小学生の頃、お見かけしたのと変わらないんですけど?
滅茶滅茶お若いですね? 双葉ちゃんって、お姉さん居なかったよね? えぇーーー!?」
と大袈裟に驚くもんだから、母上も上機嫌。
うむ。確かに孫が居るお婆ちゃんには絶対に見えないよな。
どう見ても、20代半ば~後半ぐらいだもんな。
「若くして、レベルが上がるとな、老化しにくくなるんだよ。」
と俺がボソッと呟くと、
「ええ? レベルアップって、そんな効能もあったんですか!」
と更に驚いていた。
そこで、
「だってさ、合宿に来ていた、清兄ぃ居ただろ?
あれ、幾つだと思う? 実は90歳代だぞ?」(まあこれは俺が『リフレッシュ』を掛けた事も大いに影響しているだがな)
「えーーー!?」と絶叫して、
「エルフかよ!」と突っ込んだり、「佐々木家恐るべし」と呟いていた。
そこで、俺はソッと城島君の耳元で、
「だから双葉も今のまま長く若い姿で居ると思うぞ? お買い得だよ」
と呟くと、急激に顔を真っ赤にしていた。
城島君を鍛冶場へと案内し、まずは、魔鉄鋼の刀の作り方を、その手順の持つ意味を説明しつつ、実際に作りながら教えて行く。
特に魔力の込め方には力をいれて説明した。
俺が部活動の指導をする様になってからは、真面目に魔力操作や魔力感知の訓練を日々行っていた事もあって、彼の魔力操作は先日の砂の城に見られる様に、実に繊細で巧みである。
ある意味、緻密な操作に関しては俺を凌駕するだろう。
基本を教えた後、実際に鉄を打たせながら、その魔力操作を見て、逐一指示を出す。
3時間程、鉄を打った後、
「佐々木さん、ちょっと思い付いたんですが、試して見ても良いですかね?」
と聞いて来たので、OKを出すと、早速、新しい魔鉄を炉に入れて熱を入れ、魔力を込めて叩き出した。
どうやら小さいナイフを作っている様だが、魔力の込め具合をみていてやろうとしている事を理解し、
「ほー!何か面白い事をやってるな。」
と思わず呟くのだった。
作業開始から、2時間ぐらい経った頃、作業が終わったらしい。
刃を付け、黒錆加工を施すと、刃にクッキリと竹と笹のマークが魔紋として現れていた。
「おいおい、これは凄いな。魔力の込め方だけでこれをヤルのか!
マジでお前、天才だな!!」
と絶賛してしまった。
刃渡り、30cm程のナイフは、これで十分売り物になる程の出来映えであった。
皮製の鞘と木製のグリップを取り付けて完成。
丁度、双葉がお昼ご飯を呼びに来たので、双葉に言って、城島君作のナイフを見せると、双葉も絶句していた。
暫く見入っていたが、双葉も
「とうちゃん、スッゴいよ!これ!!
綺麗な魔紋だねぇ~。わぁ~。これは使うのが惜しくなるねぇ。」
と大絶賛していた。
「そ、そうか? そんなに良いか? じゃあ、これ第1作目で、余り出来が良くないかも知れないけど、双葉ちゃんに上げるよ。」
と顔を赤くしながらナイフを渡していた。
受け取る双葉も顔を赤くし、「あ、ありがとう!大事にするよ。」とモジモジしながら受け取っていたのだった。
ほほーー!ヤルなぁ、城島君。フッフッフ。
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