第90話 進捗状況

 日本が本格的に海外復興の支援を始めてから、約3年の月日が流れた。

 その間には、前田と凛太郎の結婚や、俺とさっちゃんの娘の誕生、兄上の所の男の子の誕生、グリードとエバの男の子の誕生等々、色々と目出度いイベントが多くあった。

 日本に数多くあったダンジョンだが、冒険者の人数も増え、ダンジョン探索が盛んになり、それによってダンジョンから得られる資源が市場に多く出回り、経済も潤っている。


 魔素の影響で更に美味しくなった野菜や米等の影響も加わり、農業分野も相変わらず大人気である。


 日本の人口も増え、弾劾の日以前の人口を超えた。



 更に日本国憲法に改正が加わり、憲法学者が解析しないと理解出来ない様な文章(まあ、素の原案はGHQの素人が色々な文献からコピペで寄せ集めた原文の日本語訳文章だからなぁ。)から、憲法学者の解釈不要な、普通の日本人が普通に理解出来る内容へ変更され、更に日本の国旗や国歌に対する尊重の義務、日本国家への忠誠の義務が、国民の義務に加わった。

 この日本国憲法の改正の国民投票は、83%の賛成でアッサリとケリが付いた。


 この憲法改正のタイミングで、天皇陛下が譲位される事を希望され、戦後初めて譲位と言う形で、元号が変わる事となった。


 元号は、『平静』から『礼合』に決まり、今年の4月1日から礼合天皇陛下の御代が始まる。

 慶事続きの日本だが、これまた嬉しい事に、無人となった北方領土を正式に取り戻した。



 さて、世界の状況は? と言うと、この3年の間で米国は少しゴタゴタがあった。

 何があったか?と言うと、臨時政府が樹立され、米国全土+旧メキシコや旧カナダの一部までを安定して統治する様になって久しい頃、突然地下シェルターに避難していた、旧政府の生き残りが、しゃしゃり出て来たのだ。

 現在の米国は、『アメリカ合衆国』では無く、『アメリカ統合(連合)国』となり、各州と言うよりは、国の下に日本の都道府県制に近い地方自治がある様な感じで、嘗ての州程の権限を持たせていない。

 人口が減った事や、非常事態を一気に脱却する為に、1つの国として政府の持つ影響力を強くする為の結果として、新たな制度に変更し、国を立ち上げた感じである。

 順調と言うか、異常なスピードで復興を遂げている最中に、イキナリ旧政府の残党がしゃしゃり出て来て、武力と共に横槍を入れて来たが、一瞬で蹴散らされ、制圧されて終わった。


 現政府曰く、

「一番国民が必要としていた時に、無策に自分らだけ地下に逃げ込み、何もせず傍観し、形が整った後にノコノコやって来て、横取りしようとする腐った奴は要らん。」

 との事で、日本が事前に警告を発したにも拘わらず、無視した旧政府に激怒していた国民達も、盛大に賛同していたらしい。


 ヨーロッパ方面は一部を除き、相変わらず、微妙な状況が変わってない状況で、日本政府も初期の援助段階で断念したらしい。


 逆に逞しいのはアフリカ大陸で、文明の利器であった物は早々に使えなくなったが、部族単位での生き残りは多く、100年前の生活に戻る感じではあったが、逞しく生きている。

 逆に魔物や魔素が増えた事で、食糧事情が良くなった!? とかで、農業も盛んになり、生活も安定しているらしい。




 俺の近況はと言うと、敬護が4歳になり、少しずつ鍛錬を始め、俺も驚く程のスピードで実力を付けている。

 娘の皐月(さつき)は2歳となり、可愛さ爆発中である。

 兄上の所の光一(こういち)君と仲良く日々遊んでいる。

 あ、そうそう、皐月と光一君だが、誕生日は1日違いで、光一君が先に生まれた。

 日付が代わった頃、後を追う様にさっちゃんが産気付き、無事に難なく生まれた。

 2人の時間差だけで言うと、約4時間違いぐらいで、微妙に惜しい感じ。

 両方共に、母子共に安定しており、家族全員連日のおめでたで、沸きに沸いたのだった。


 ピートは小学校に入り、現在3年生で、美少年である事や、俺らが鍛えた事で、運動神経も発達し、レベルアップによる頭脳面も発達して、優秀で、クラスでは人気者である。

 流石は我が弟だ。

 美少女となった双葉は、中学を卒業して、高校へ進学し、毎日の様にラブレターや告白を受け、かなりウンザリしている様子だ。

「彼氏でも作れば、収まるんじゃないの?」

 とさっちゃんが提案したらしいが、双葉曰く、

「え? だってみんな軟弱なんだもん。 兄様達を超えるのは無理としても、ソコソコ頼りになる人じゃなきゃ、嫌よ!」

 と返したらしい。


 それを聞いたさっちゃんは、

「双葉ちゃん、流石にその比較対象は、過酷過ぎると思うわよ? 確かにアッ君は最高の男性だと思うけど。

 妻の私が言うのもなんだけど、何気に人類最強のトップ10に君臨しているお兄さん達だからね?」

 と苦笑いしながら返すと、


「そうなのよ、それよ、それ! 身近に余りにも強烈なのが多過ぎて、有象無象が目に入らないのよ。

 せめて、私ぐらいの力は持っていて欲しいのよ。

 あ~……ある意味、私って恋愛的には不幸な境遇かも……。」

 と嘆いていたらしい。


 双葉の心を射止める男は、現れるのだろうか? だがしかし、最低限と言っている双葉の実力は既にSランクであったりする。

 現在、俺達の身内や仲間以外のSランク冒険者は存在しない。



 双葉が高校生になって、冒険部に所属する様になり、俺や父上、兄上が時々講師として呼ばれる様になったんだが、3年生でさえ、良くてEランク程度。

 ゴブリン3匹をパーティー単位で相手に出来る程度だ。

 ハッキリ言って、ピートの方が10倍以上強い。

 幼い頃から月ダンジョンで実戦で鍛えているピートと比べる方が間違っているか……。




 双葉の高校には、冒険部の他に、鍛冶錬金部と言う面白い部がある。

 まあ、そんな訳で俺はそこへも講師として時々お邪魔している訳だが、ここには俺が目を掛けてる、凄く面白い奴が居る。


 城島東次(きじま とうじ)君と言うのだが、彼は面白い。

 鍛冶と錬金の才能があって、卒業後は、是非マジック・マイスターに入りたいと言っている。

(と言うか、俺と兄上の間では、既に内定しているのだが)


 彼の発想は非常に面白く、独学でゴーレムを生成して、動かす事に成功していた。

 そこで、俺が色々とアドバイスや考え方のヒントを与えると、次に行った時には、その成果をちゃんとフィードバックさせて、見せて来る。

 現在、彼の一番ネックとなっている部分は、レベル不足による魔力不足であった。

 そこで、俺は休日に時々、ダンジョンへ連れて行き、レベリングを行ってやり、現在21まで上がっていたりする。


 戦闘力こそ低いが、魔法適正や錬金や鍛冶に関しては、非常に素晴らしい物を持って居るし、控えめな性格ではあるが、主張すべき点は主張し、思慮深い。

 頭の回転も早く、顔も悪く無いと思う。双葉とくっつくと面白いコンビになりそうなんだがなぁ。



 そして、もうすぐ夏がやって来る。

 学生達は夏休みに突入する訳だ。

 冒険部は合宿でダンジョンに数日通う事になるらしい。

 鍛冶錬金部は特には無いが、使いたい者は、夏休み中も、学校内の鍛冶場や錬金室を使って良いらしい。

 城島君は特に予定が無いらしいので、俺がダンジョンとかに誘う事にしている。


 この夏で、多少進展があると良いのだがな……。

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