第89話 人類反撃の狼煙(加筆済み)
俺の開発した対魔物戦闘特化バージョンのハイブリッド・ゴーレムについて少し捕捉すると、身長約182cm、体重が89kg、筋力的な物は、大体平均的な20歳の男性の20倍~ブースト時には300倍程度となる。
頭脳となるCPUは、8Coreの3GHzCPUを使用しており、CPUの冷却には、魔石の魔力を利用した冷却で常時0℃~20℃になる様にしている。
魔石は一番流通量の多いオークの魔石を4個中、通常3個を使い、1個は予備となるが、ブースト時に4個フルに使用する。
ブーストを使わない場合は、連続稼働時間が約3ヵ月で、魔石が切れる前には、自動でメンテナンス・ベースへと戻り、交換する様になっている。
また、現地の住民を発見した場合は、即座にコンタクトを取り、必要に応じて、日本のオペレーションセンターへと通知して、ハイブリッド・ゴーレムを通しての会話も可能となっている。
更に、メンテナンス・ベースには、現地民支援の救援物資等も備蓄しているので、災悪の場合でもある程度の対応が可能となっている。
ボディーは白地に胸と腕と背中に日本の国旗を入れているので、魔物と間違われる事は無いだろう。
戦闘力に関しては、前にも言った様に、Aランク+程度だが、これは、CPUの思考速度の限界と、頭脳のソフト的な物が起因しているのだが、実は戦闘をすればする程、その経験を蓄積し、戦術的な物や動きを最適化して行く様にしているので、最終的にはSランクに手が届く程になるとは思っている。
ただ、魔法攻撃は出来ないので、通常兵器による物理的な攻撃しか出来ないのがネックではある。
まあ、作ろうと思えば、魔石を使った魔法手榴弾的な物も作れるのだが、魔物だけでなく、味方を巻き添いにする可能性もあるので、自重している。
現在、これの増産で最大のネックは頭脳であるCPUの枯渇だったのだが、あれから約3ヵ月で、株式会社CPUジャパンがとうとうやってくれた!
待望のCPUの量産に成功したのである。
従来掻き集めて使っていた、8Coreの3GHzCPUだったが、8Coreの4GHz(ブースト時は4.6GHzまで)とスマホ用の4Core2.4GHzをリリースしてくれた。
これらは、従来使われていたアーキテクチャをそのまま利用しているので、そのままCPUだけの交換でもパワーアップするし、OSやソフトもそのまま利用可能だ。
これで、新製品のスマホのリリースや、ハイブリッド・ゴーレムの増産が可能となったのである。
CPU工場のラインも増設中との事なので、これからは、飛躍的に魔動と電脳を利用する分野での躍進が期待出来る。
流石は日本! 全てのコア技術に精通し、近代の最先端の技術の土台を支えて居ただけの事はある。
俺は、もうマジで感動で震えたね。
そして、増産を本格稼働したハイブリッド・ゴーレム部隊と日本政府の特使を交えた部隊は、まず台湾へ派遣され、現地のコミュニティへと供与された。
2週間程でその効果が出始め、派遣から1ヵ月で、魔物の封じ込めに成功したのだった。
台湾は、日本からのバックアップで、台湾政府の設立に着手し始めた。
破壊されたインフラの整備も徐々に始まったらしい。
そして、日本政府は次々にアジアの各国へと支援の範囲を広げていったのだった。
◇◇◇◇
1年が過ぎ、アジア各国が人間の手に戻った所で、嘗ての同盟国であった米国本土へと支援の手を広げる事になったらしい。
と言っても、直接日本が動くと言う訳ではなく、嘗ての在日米軍が集結して、米本土へと帰還し、勢力圏を広げて行く感じらしい。
日本は、その物資的な支援や補給を担う事になる。
更にそれに対応する為、俺へは各艦船の既存動力源の魔動化の依頼がやって来た。
「はぁ~、またまた面倒な事を……。」
原子力空母はそのまま核燃料で動くので問題はないが(但しメンテナンスは最低限行っている)、問題はイージス艦等のガスタービンエンジンの魔動化である。
流石に全艦を一気に変更は時間的にも予算的にも難しいので、4艦のみの変更となった。
空母の航空機であるが、俺が以前に作った代替えジェットエンジン(ダクデットファン)へ換装してある輸送機や、レシプロエンジンを魔動モーター化した機体のみで運用となる。
勿論、米国から持って来たオスプレーも20機程返還する事になったらしい。
原子力空母はどちらかと言うと、ハイブリッド・ゴーレム軍団の輸送艦となっていて、空いた格納庫には、ス○ーウォーズのドローン軍団の様に整然と並んで座っている。
ハイブリッド・ゴーレムには、日本の国旗と米国の星条旗を並べてペイントしてある。
更に、本土の復興に必要不可欠な魔動式の重機等も含まれていて、既に空母と言うよりは、出稼ぎの土方部隊の運搬船の船内と言った状況にも見える。
そうそう、ハイブリッド・ゴーレムと言えば、多少ソフト的にアップデートがされた。
落下傘による降下に対応する様になった。これにより、輸送機からの空中散布が可能となったのである。
「いやぁ~、なんか色々と大掛かりで大変だなぁ。」
と人事の様に呟いている俺だが、俺は俺でかなり色んな事をオーダーされて、家族とマッタリ過ごす時間を削られていたりする。
特に大変だったのは、国産のC-2の魔動化であった。
輸送機だけに大型で、積載重量も大きく、フルに満載した状態でも短距離離陸が可能な様にして欲しいとの無茶なオーダーが入った。
現在の魔動ダクデットファンだけだと出力的に弱く、その為に苦肉の策として、風魔法によるアフターバーナー的な補助動力を追加した。
これにより、最大出力は大幅にアップし、0スタート時でも爆発的な加速が可能となった。
そして、その魔動エンジンを備えたC-2改が再生産される事も決定している。
既存の機体をC-2改に魔改造した物は、今回の米軍の空母にも1機供与されている。
ただ、C-2改は本来海軍用の機体では無い為、着艦用のフックや脚部の強化がされていない。
計算上では、2回ぐらいのカタパルト発進には耐えうるが、それ以上は前輪が壊れる可能性がある。
その為、本土の上陸拠点となる基地の滑走路で運用する事となっている。
出航の時間となり、汽笛と共に、大勢の在日米軍の兵士達が甲板から涙を流しながら手を振っていた。
港では自衛隊のブラスバンドの演奏と、大勢の日本国民達が日本の国旗と星条旗を振ってお見送りをしていた。
俺もさっちゃんも、敬護も、ピートも、そしてグリードとエバとマリーもこの一団の中に混じって、手を振っている。
グリードに聞いてみたのだが、
「いや、俺は既に日本を第二の祖国と心に決めて、忠誠を誓っているからよ。だからもう日本人なんだよ。だから日本人としての任務なら受けるが、彼らと共に米国の復興を米国人として行う事は無いな。
まあ、申し訳無い気もするが、これが正直な気持ちだ。」
と言っていた。
うん、そうだな。本来帰化するとはそう言う事だよな。と俺も納得し「すまない。」と謝ったのだった。
◇◇◇◇
出航から半月ちょっとで、空母達の艦隊は西海岸へと到着し、作戦行動を開始した。
まずは、西海岸の海軍基地に寄港して、併設されている滑走路の整備を始める。
再度出港して、全速力で航行しつつ航空機を全機発艦させ再度港に停泊させた。
発艦した航空機は無事に整備された滑走路に着陸し、翌日から、西海岸を起点に周囲のコミュニティへとハイブリッド・ゴーレム部隊を送り込み始める。
同時に発見したダンジョンにバリケードを建設し始める。
何度か野盗集団との交戦を撃破し、地域の野盗集団を壊滅して行ったのだった。
日本からも、俺のゲートで数回増援のハイブリッド・ゴーレム部隊や物資類を送り込み、3ヵ月ぐらいで全米の約半分まで人間の生存域を取り戻したらしい。
また、旧都市部や工業地帯の奪還も進み、徐々にではあるが、人々が集結し、一部の工場の再稼働も始めたとの事……やはり米国の生産力は恐ろしいな。
これ以降の支援等のやり取りに関しては、C-2改等の輸送にバトンタッチし、完全に俺の手から離れたのだった。
日本政府の次なる目標としては、ヨーロッパ方面に支援の手を伸ばす計画らしいが、余程の事態が起きない限り、俺はノータッチで良いと言う事にして貰った。
「これで、やっと家族とマッタリとした時間を過ごせるな。
危うく、敬護の成長の瞬間を見逃すところだったな。ハハハ。危ない危ない。」
と俺がさっちゃんに笑いながら言うと、
「もうアッ君てば、子煩悩なんだから。でも、私の事も忘れずに構ってよね?」
と釘を刺されてしまった。
ハッハッハ、勿論じゃないか!
しかも、現在さっちゃんのお腹の中には、第二子が育っているのだ。
まあ、まだ3ヵ月なので、お腹が目立つサイズではないんだけどね。
敬護の弟になるのか、妹になるのか、実に楽しみである。
そして、別に示し合わせた訳でも無いのだが、兄上夫婦にも待望の赤ちゃんが秘書子ちゃんのお腹に宿っている。
同じく3ヵ月との事で、お互いに予定日を確認して思わず兄上と俺は大爆笑してしまった。
予定日の誤差が3日であった。
「これって、もしかしたら、同じ日に生まれる可能性もあるよね?」と。
さて、目出度いと言えば、聡君。
前回伊豆高原ダンジョンツアーに同行していた彼女と目出度くゴールイン!
結婚式は、厳かな神式で素晴らしい結婚式だったのだが、最近はダンジョンの深層でも見せない様な緊張の表情で、動きまでガチガチであった。
新居は近所の土地を買って、建てる事にしたらしい。
新婚旅行は、何と、俺の買ったあの無人島に行きたいと言う事で、ニンマリと笑いながら承諾した。
そうそう、あの無人島だけど、あれから少し手を入れて、ロッジを数軒建てたりして、身内の隠れリゾートとして活躍している。
「なぁ、聡君、どうせなら、沖縄のゴージャスなリゾートホテルとかに泊まった方が良いんじゃない?」
と聞いてみた。
すると、何やら赤い顔でゴニョゴニョ言っていたが、要約すると、
「二人っきりで、ムハーっと楽しみたい!」って事らしい。ハッハッハ!
まあ、気持ちは判るので、生暖かい目で、微笑んでおいた。
この分なら、佐々木家の本家の次世代が誕生する日も近いかもね。
◇◇◇◇
米国の現状報告だが、人口は激減してしまったものの、何とか全土を掌握し、臨時政府の樹立まで漕ぎ着けたらしい。
兄上の所には、マジック・マイスターの米国支社を出して欲しいとの要請もあり、本格的に海外支店及び現地生産の話が進んでいる(らしい)。
同時に日本航空機工業にも同様の話が出ているとの事だった。
まあ、俺が開発した飛行機も、広大な面積を持つあちらの国の方が、需要は大きいだろうからな。
日本政府が支援を開始したヨーロッパの方だが、各国の幾つかのコミュニティへ支援を始め、徐々にではあるが、人類の生存エリアを増やしている様である。
ただ、中世と変わらないレベルまで落ちた所からの復興となる為、米国以上に時間は掛かりそうである。
一つ気がかりなのは、ヨーロッパの所々のコミュニティではカルト教団の様な所があって、実に身勝手な理論で住民を掌握している怪しい所がある事だ。
カリスマ性はあるのだろうが、その教団トップが好き勝手する為の教義を擦り込まれて居て、そんな奴らの勢力が増してしまうと、救いようが無い。
下手に大神様のお怒りを煽る結果にならなければ良いのだがな。
一応、首相へは厳重に釘を刺しておいたが、実際は微妙な所である。
『助ける相手』選びは慎重に行って欲しい物だ。
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