第45話 警鐘
翌朝、実家に居る全員に大神様からの情報を共有した。
日本にも数カ所に原子力発電所がある。
残りは15日しかない。早急に世界に知らせるべきか。
家族会議は紛糾した。
そして、方針が決まった。
早速、日本政府に渡した資料を補填して、チーム佐野助のサイトにアップする準備を開始した。
更に昼間ではあるが、俺は首相官邸の庭へ追加情報と魔石の入った箱を送り届けた。
ヤバいのは核兵器を持つ国々である。
下手に核兵器でも使おう物なら、完全に魔物の天国になるだろう。
火山や温泉はどうしようも無いが、核施設や核兵器は核燃料等を安全な場所へ隔離してしまえば、当面は何とかなるだろう。
そして、その夜、世界に激震が走ったのだった。
世界の佐野助ウォッチャーなる、ファン?マニア?がアップした資料を見て、SNSで一斉に発信し始める。
それを追う様に、日本政府からも公式な発表があり、世界各国が驚いた。
しかし、核兵器を持つ国々や、原子力発電への依存度が高い国は、原子炉を止めなかった。
チーム佐野助のサイトでは、月ダンジョンの魔物の動画を上げ、魔物の力を見せたり、銃では死なないどころか、ダメージすら受けない様子をアップした。
だが、残念ながら、これらはCGとして受け取られてしまい、真に受けている一部の人は笑われる始末だった。
チーム佐野助がやって来た事を考えれば、もう少しは真剣に考えてくれると思っていたのだが、残念な限りである。
そんな中でも、日本政府だけは、早急に原子炉を止め、足り無い電力は火力発電で補ったり、輪番停電で難を凌ぐ方針に切り替えた。
TVでは、これまで肯定的だったチーム佐野助へ、批判の声を上げるコメンテーター等が、ワラワラと湧いて出ていた。
そんな中、俺達は日々届く中古の発電機を魔動化し、備蓄していった。
ブートキャンプに参加した5人の所へも各1台を配布しておいた。
なんせ、兄上、聡君、それに父上と叔父上の所為で、俺は来る日も来る日も、日に30~35台前後の発電機を改造しているのである。
大型の中古発電機を2台仕入れたらしいが、流石に工具が足り無くて、分解出来なかった。
と言うか、それに構う間に20台の小型を増やした方が得策と言う事になっている。
大型発電機をバラす為の工具セットは、別途買ってくれる事になったで、先にこの小型を仕上げてしまう様にと言いつかった訳である。
仕上げても、仕上げても、日に何十台と送られてくる中古発電機……。
「ねぇ、兄上と聡君、もしかして、これ、今も買い足してないよね?
もういい加減飽きたんだけど? 俺、バイト料請求するよ?」
と言うと、2人は横を向いて口笛を吹いていた。
まあ、でも意図は分かっているので、半分は冗談なんだけどね。
そんな訳で、俺と兄上は、現在もまだ実家のご厄介になっている。
父上、母上、可愛い双葉は先にゲートで自宅に帰って行った。
俺としては、前世で生まれ育った、思い出深い実家なので、別に苦ではないのだよ。
居るだけならね。
既に、通算200台ぐらい改造しているんですよ……毎日。
最近やっと、兄上と聡君も分解を手伝ってくれる様になったので、ペースも上がり、少しは楽になったけど、飽きるんだよね。
やっと、残りの小型発電機が10台を切った頃、兄上が悪い顔をしながら俺に聞いて来た。
「ねえ、あつし。ちょっと相談なんだけどさ、バイクって、これと同じで魔動化出来たりするの?」と。
あー……今度はそう来たか……。
グッタリとした顔で振り返り、
「まあ、出来る事は出来るけど、かなり大変だよ? バイクって、エンジンとミッション一体化してるからね。
それに失敗するかもしれないから、折角の新車が台無しになるかもよ?」
と言うと、
「そうか! やっぱり、出来るんだね? 大丈夫だよ。一応それ用に中古買ったから。」
と兄上が10台のオフロードバイクを庭出して来た。
「あんたは、悪魔か!!!!」
と俺の叫び声が、空しく鳴り響くのであった。
頭に来たので、サクッと小型発電機を終わらせ、大型発電機2台に取り掛かった。
これは、予定よりかなりややこしく、簡単にはいかなかった。
兎に角、エンジンが大きいし、重い。
バラす部品点数も滅茶滅茶多くて、バラすだけで2時間掛かってしまった。
で、発電コイルを回す所の負荷がかなり大きく、かなり大掛かりな魔動モーターを作り、やっと発電出来る様になったのは、既に日が暮れた頃だった。
流石に、このサイズだと、魔石1個では容量的に保ちが悪そうだったので、オーク魔石を並列に4個取り付けた。
2台目は、1台目の作業を見ながら、兄上と聡君がバラしてくれていたので、1時間程で終了した。
2台共、同じ型だったお陰だな。
そして、翌日からは、10台の中古バイクの改造に取り掛かった。
結果から言うと、これはかなり簡単だった。
オフロードバイクばかりだったので、殆どが単気筒で、腰上……シリンダーやピストン、コンロット等を取り外し、蓋をして、フライホイールの方に魔動モーターの円盤を取り付けた。
1台目が完成し、早速兄上が試乗したが、満面の笑みで戻って来た。
「あつし、これ凄いよ!! 音も無く、滅茶滅茶パワフルだよ。」と。
まあ、そんな感じで残りの9台を仕上げ、俺も乗り方を習って、チョロッと周辺を試乗したが、滅茶滅茶面白かった。
バイク免許取りたいな。
まあ、そんな感じで忙しくしていたお陰で、世間からのチーム佐野助批判の声からは遠ざかっていた。
寧ろ、その為に、こうして忙しく働かせてくれたのかな? と内心兄上と聡君に感謝の気持ちを持っていたぐらいだ。
そう、兄上が『株式会社マジック・マイスター』を設立したのを知るまでは……。
「兄上……流石に悪どいです。」
と俺が非難の目を向けると、
「褒めるなよー」
と笑ってた。
そんな不毛な日々を過ごしていたが、全人類への『弾劾の日』は刻々と近付いてきて、残り僅かとなった。
ネットでも賛否両論で、日を追うにつれ、チーム佐野助への非難の声が増えて来ている様に思える。
そうして、俺達の警鐘を舐めて掛かった奴らが、驚愕で震える日がとうとうやって来てしまったのだった。
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