第41話 内緒の話
「あ……ごめん、注意しとくの忘れたけど、魔力使いすぎて枯渇すると、今見たいになるから、注意してね。」
とちょっと苦笑いしながら、俺が言うと、
「「「「「遅いよ(わよ)!!!」」」」」
と砂浜でグッタリと青い顔で寝転ぶ5人が、力なく叫んでいた。
頭を掻きながら、全員に魔力ポーションを飲ませ、一休みさせたのだった。
ついでに、女性陣には、整腸効果のある薬草の煮汁を冷ました物を飲ませてやった。
「一応、これ、整腸効果あるからね?」と言うと、ハッとした顔をしていた。
野営地に出して居るのと同じ型のテントを一つ出して展開し、休憩所として置いら、女性陣は中で暫く休むと言って入っていった。
「佐々木ぃ~、ここの海って何か捕れるのかな?」
と前田が波打ち際を眺めながら聞いてきた。
「船の漁師さんに聞いたら、浅瀬だと、カワハギぐらいって言ってたな。
後は、砂浜のアサリと、岩場のウニとかアワビも捕れるらしいぞ。」
と答えると、
「ほぉー!アワビか!! バター焼きにすると美味そうだな。」
と2人共、目を輝かせている。
「漁師のおじさんに捕って食べて良いって言われてるから、少し採取してみるか?」
と言うと、ウンウンとヤル気を漲らせている。
俺は、採取した物を入れる袋と革手袋とサバイバルナイフを3セット出して渡し、サンダルを靴に履き替えて岩場へと向かった。
砂浜の横にある岩場には、結構なバフンウニが生息してて、2人も慣れないながら、岩場に打ち付ける波と格闘しつつ、ウニを採取していた。
俺は、ナイフを口に咥えて、岩場の深い所に居るアワビやサザエ等を採取して廻る。
3匹程、伊勢海老も発見して、生きたまま確保した。
これで、美味しい海鮮味噌汁でも作るかな。
すると、岩陰から、太いウツボが出て来て俺の手に噛みつこうとして来た。
丸々として肉厚だったので、サクッと首にナイフを刺して、仕留めた。
ウツボを首に掛けて浮上すると、
「うぉーー! ビックリさせるなよ!! ウミヘビ?」
と前田がビビっていた。
「すまん、ウツボだよ。結構美味いだぞ!」
と言うと、
「え? 食べられるの?」
とドン引きされた。
いやいや、食うだろ! ウツボは、骨は多いが、美味しくて、コラーゲンもタップリの魚である。
よし、昼飯のメニューに加えてやろう。
前田の皿には、頭を置いてやろう。
首にウツボを掛けたまま砂浜に戻ると、テントからスッキリした顔で出て来ていた女性陣から、
「「「ギャーーー!!」」」
と悲鳴が。
「ちょっ! 何首に巻いてるの??」
と引き攣った顔で、さっちゃんが聞いて来る。
「ウツボだよ。これ、コラーゲンもタップリで、お肌がプルルンになるんだよねぇ。」
と言うと、それまでドン引きしていた女性陣が前のめりになって、怖かった。
ちょっと早めだが、昼食の準備に取りかかる。
テントのキッチンで、ウツボをサクッと捌き、骨を外し、刺身を大皿に盛り付ける。
かなり大きなウツボだったので、流石に全部を刺身にするのは量的に厳しく、全体の1/6を刺身して、1/6を唐揚げにした。
残りは、アイテムボックスに入れて、お土産にするかな。
バフンウニの一部はカットして、中身を取り出し、ウニ丼にする予定。
残りは、BBQコンロでアワビのバター焼きと一緒に焼きウニにしてやろう。
伊勢海老とトコブシは、海鮮味噌汁だな。
ご飯を飯ごうで炊いて、軽く酢飯を作り、ドンドンテーブルに並べ始めると、ワクワク顔で全員が集合した。
「マジ、佐々木の女子力半端ねぇな。」
「胃袋を掴まれてしまった……」
と男2名が五月蠅い。
女性陣は、苦笑いしてた。
そして、準備も終わり、全員で手を合わせ、頂きます。
ポン酢で食べるウツボの刺身は、非常に美味しく、プリプリとしていた。
塩を振りかけて食べるウツボの唐揚げも美味い。
そして、ウニ丼がまた美味い。
「やっぱ、新鮮な魚介類は美味いな! 特にこの味噌汁は堪らんな。」
と自画自賛すると、全員もウンウンと頷きつつ、箸が止まらなかった。
「ヤバい、また食べ過ぎたーー。」
と女性陣が嘆いていた。
午後からは、海で泳いだり、魔法の練習をしたりして過ごし、俺は岩場から、釣りをして楽しんだ。
釣果だが、デッカい黒鯛が2匹と、ヒラメが3匹で、僅か1時間半の結果としては、素晴らしい物だった。
日が暮れる前に、撤収して野営地の方へ戻り、夕食の準備となるのだが、女性陣がどうしても作ると言うので、任せる事にした。
言われて出した材料を見ると、どうやらカレーにするつもりらしい。
キッチンを明け渡し、俺がテントの外に出て来ると、
「え? 何で佐々木がこっちに出て来て休んでるの?
え? まさかあいつらが作ってるんじゃ無いよな?」
と焦った顔の男性陣約2名。
「ん? ああ、何かどうしても作りたいらしいんだ。
まあ、どうやらカレーっぽいから誰が作っても、大丈夫だろ?
それに、ああ見えて、さっちゃん、結構やるよ?」
と俺が言うと、「マジかぁー!?」と呟いていた。
まあ、俺はかれこれ10年以上の自炊歴があるからなぁ……それと比較しちゃあ可哀想だよな。
なんせ、食の質を向上させないと、マジでヤバかったから、本当に死活問題で必死だったし。
魔王討伐まで、意欲がダダ下がると、命に関わるし。
米を発見して、スパイスを集めて最高のカレーを作った時のあの喜びは、忘れられないな。
夕食が出来上がるまでの間、男3人でレベル上げの話を軽くしていた。
「なあ、佐々木、昨日の晩言ってた、レベル上げの手段って、攻撃魔法覚えたから、教えてくれるのか?」
と前田が聞いてきた。
「ああ、今夜話すつもりだった。
手段はあるが、それには本気で秘密を守って貰う必要があるんだよな。
もし、他にバレると、かなり拙い事になる。」
と俺が言うと、2人がゴクリと唾を飲み込んだ。
「まあ、一応女性陣にも聞く予定だったから、食べながら話をしようか。」
約50分後、ちゃんと美味しいカレーが食卓に並んでいた。
全員で手を合わせ、頂きます。
ちょっとドキドキしつつも、スプーンで掬って一口食べると、普通に美味しかった。
「ど、どう?」
と不安気な表情で俺を見つめる女性陣。
「うん、とても美味しいよ。なぁ?」
と他2名に聞くと、
「ああ、驚く程、美味しく出来てるよ!」
「うんうん、美味しいよ!」
と他2名も褒めていた。
「でもアッ君の料理と比べると、ちょっと引け目を感じちゃうんだよね……」
とホッとした表情をしつつも、愚痴る女性陣。
「ははは、佐々木と比較しちゃあ駄目だよ。こいつは特殊な例だと諦めるしかないから。」
と笑う前田。
「おいおい、それは何か酷い言い方に聞こえるんだが?」
とクレームを入れると、全員が爆笑していた。
男性陣は2杯ずつお替わりをして、ご馳走様となった。
「はぁ~、今日も食ったなぁ。
俺、家に帰ってから、お袋の味で満足出来るか、心配。」
と凛太郎がボソリと呟いた。
食後の片付けを終え、ユッタリとしながら、俺はレベルアップの話を始めた。
「さて、男共には少し話をしていたんだが、ステータスに表示されているレベルに関する話を少ししたいと思う。
このレベルと言う物に関しては、どうやら小説なんかで出て来るレベルの概念と同じらしい。
で、このレベルが上がると、1レベルアップする毎に、ステータスの各数値が跳ね上がって行く。
勿論、日々の鍛錬で、魔力も筋力も微量ずつ上げられるので、それも重要なんだが、レベルアップは絶対にする必要がある。」
と俺が言うと、全員が頷いた。
「で、レベルアップの方法だが、魔物を討伐するのが、一番経験値を貯めやすい。
だが、現在の時点で魔物は居ない……ただ一箇所を除きだがな。」
と言うと、
「え!?居るの?魔物?」
と目を輝かせる。
「うん、一箇所だけ魔物の居る所がある。
だが、そこに連れて行ける事は行けるんだが、これは基本一生誰にも言わず、本気で秘密を守って貰う必要があるんだ。
もし、これが他の人や、国なんかにバレると、非常に拙い。
下手すると、自分だけでなく、家族や親類、友人、恋人とか周囲の命が危なくなる可能性がある。」
とここまで言うと、全員が生唾を飲み込む。
「もし、ここで秘密を守る制約をしてくれるなら、その場所へ連れて行きたいとは思っている。
どうだろうか? 約束出来るか?」
と聞くと、
「「「「「勿論!」」」」」
と5名全員が即答したのだった。
「そうか。良かった。レベル1と10とでは、夏が終わった後の安全マージンが全然違うからな。
で、その場所なんだが、あそこだ。」
と木々の間から見える月を指差したのだった。
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