第40話 魔法講習会

 ブートキャンプ2日目の朝、朝6時に起床して、湧き水で顔を洗い、朝食の準備に取りかかる。

 メニューは色々考えた結果、一般的なトーストとベーコンエッグ、ウィンナー、ポテトサラダと普通のサラダ、ザワークラウト、ホーンラビットの肉入りスープ、ホットコーヒーor紅茶という感じ。

 あ、ベーコンとウィンナーは俺がオーク肉で作った絶品の自信作を投入してみた。


「カンカンカン♪ おーーい、起きろーーー!!」

 とフライパンを叩きながら、全員を叩き起こす。

 勿論、テントの遮音を切ってから、ガンガンとフライパンを叩いたので、テントの中まで鳴り響いている。


 ゴソゴソと男性陣2人が出て来たが、女性陣は、何か中が騒々しい事になっている。

「ギャー!寝過ぎたーー!! 朝食作ってアピ作戦がーー!!」

 と少し叫び声とか聞こえる。


「おはよう。 何か冷めちゃいそうだから、先に食べ始めようか。」

 と女子テントの騒動に苦笑いしつつ、頂きますをした。


「「うっめーーー!!」」

 と朝から絶叫する前田と凛太郎。


「おい、このベーコンもウィンナーもヤバいな!!」

 と朝からテンションが高い。


 そんな声に急かされたのか、女性陣もやっと登場し、頂きますと手を合わせ、ベーコンエッグを口に入れる。


「「「!!!」」」


 声にならない驚きの表情で、目を見開き、朝からガンガンと食べ始める。


 狙い通り、ベーコンエッグもウィンナーもスープも大好評。


「いやぁ~、驚きやわ。

 アッ君は、良いお嫁さんになるで?」

 と愛子がニヤニヤ笑いながら、さっちゃんを肘で突いていた。


「なあ、このベーコンって売ってる物なのか?」

 と凛太郎が聞いて来た。


「ああ、それは俺が作ったベーコンだよ。ウィンナーもな。両方とも俺のの自家製。

 肉自体が美味いのもあるけど、ベーコンは燻す際のチップの割合とか色々試行錯誤したし、ウィンナーはスパイスと塩加減かな。

 まあ、物作るのも好きだから、趣味みたいな物だよ。」

 と答えると、全員驚いていた。


 そう、カサンドラスに居た頃は、食い物とか大味なのが多くてな、当時米が見つからず、食生活が悲しくて、結果色々試行錯誤する癖が付いてしまって、今の俺があると言う訳。

 前世の日本時代には、考えも及ばなかったなぁ。とシミジミ回想する俺。


「ヤバい、本当に食べ過ぎなキャンプだわ……。これ帰って体重計乗るのが怖い。」

 とさっちゃんが言うと、他の2人の女性陣も暗い顔をしていた。


「うーん、だけど、終わった頃には、多分体型的には丸っきり変化ないと思うぞ?

 確かに脂肪より、筋肉は比重が重いけど、その分、引き締まって良い感じになるんじゃないかな?

 ほら、昨日魔力操作を身に着けたろ? あれ結構カロリー消費するし、魔力の補充にもカロリー使うから。

 それに、今日は身体強化をマスターして、更に攻撃魔法の1つぐらいは身に着けて貰うから、相当エネルギー使うぞ。

 色々出来る様になると、身体の代謝も良くなって行くから、だから、食べても太る事は無いと断言出来る。」

 と俺が言うと、女性陣がパッと明るい顔をした。


 しかしなぁ、君ら、まだ中学生のガキんちょだろ? そもそもまだそこまで気にする歳じゃないだろう? とは口が裂けても言えない……いや、言ってはいけないと俺の第六勘が警鐘を鳴らしていた。



 朝食が終わり、片付けも終えると、身体強化についての授業を始めた。

 昨日の流れで、完全に魔法習得に前のめりになっている為、真剣に聞き入っている。


「~とまあ、そんな感じで、イメージを込めて魔力を回す訳だ。

 すると、こんな事も出来る様になるぞ。」

 と軽く身体強化を使って、真上に5m程ジャンプすると、驚きの声を上げていた。


 魔力操作を開始し、全身に魔力を回し始める5人。


 練習開始から10分もしないうちに、

「あ、出来たかも。」

 とさっちゃんが小さく叫び、跳く飛び上がった。


 すると、さっちゃんが2m程の高さまでジャンプしてしまい、自分で跳んでおきながら、アワアワと焦っていた。


「おー、出来たな。それだよそれ!」

 と褒めると顔を真っ赤にしながら頭を突き出してきた。


 ああ、ヤルのか……と、幼稚園の頃と同様に頭を撫でてやると、喜んでいた。

 女性陣2人は、そんな様子をニマニマしながら見て居たが、また真剣な表情になり、身体強化に集中し始める。


 残りの4人も、更に10分程で、全員が身体強化をマスターした。


「おー、サクッとマスター出来たね。

 まあ、色々と熟練度を上げないと、本番でなかなか焦って使えない事もあるから、そこら辺は日々練習するとして……、せっかく綺麗な海に来たから、少し海で泳ぐか?」

 と言うと、ヒャッホーと全員が歓声を上げたのだった。






 全員が水着に着替え、上にTシャツや短パン等を履いて、俺のリックに荷物を纏め(と言う感じでアイテムボックスに収納し)、砂浜へと移動を開始する。

 3人でゴニョゴニョと話ながら歩いている女性陣の会話を、俺の耳がキャッチ感じだと、どうやら女性陣は、この日の為に水着を新調したらしい。


「(わぁ~、緊張するわぁ~。この水着派手じゃないかな?)」

「(大丈夫やって。 とても美味しそうだと思うで?)」

「(食べ過ぎで、お腹出てないか、ちょっと心配)」

「(ああ、それは言える。せっかく新調したのに、お腹ポッコリじゃあ、かっこつかないわね。息を吸い込めば、お腹は引っ込むわよ!)」


 ふむ……整腸効果のある薬草混ぜた昼飯でも食わせてやるかな。




「さて、砂浜に到着したんだが、軽く先にみんなが持って居る水属性の魔法についてレクチャーしたい。

 海には水が豊富だから、水魔法を練習するにはイメージが湧きやすいし、もってこいの場所なんだよ。」

 と言うと、女性陣からは、えーー!? と軽いブーイングが出たが、無視した。


 そして、俺は実演しながら、魔力を掌に集め、水の玉をイメージして、ウォーターボールを出して見せた。


「「「「「おぉーー!」」」」」

 と言う歓声と共に拍手が鳴り響く。


 さっきのブーイングも忘れたかの様に、それぞれ魔力操作で掌に魔力を集め始める。

 ほぅ、さっちゃん凄いな。

 もうかなりの量の魔力が制御出来て居る様で、掌が少しボワンと魔力で光っている。(魔力感知が無い人には見えないんだけどね)


「来る、来るよ! 出たー!! ウォーターボール!」

 と10分ぐらいで直径5cmぐらいの水の玉が浮かび出た。


「よし、さっちゃん、それをそのまま飛ばすイメージで、海に向かって撃ってごらん。」


「テャーー!」

 と可愛い掛け声と共に、テニスボールぐらいのウォーターボールがヒョロリと飛んでいった。


「おーー!凄いな!出来たな。」

 と俺が褒めると、また頭を出して来たので、撫でてやるとはにかみながら、喜んでいた。


 さっちゃんの成功に、触発されたのか、更に5分ぐらいすると、次々と感覚を掴み、全員がウォーターボールを会得したのだった。


「まあ、まだ殺傷能力と言う面では、難しいが、これを訓練して行くと、滅茶苦茶な威力が出る様になる。」

 と見本で砂浜に撃ち込むと、


 ドッパーーン! と音がして、砂浜に大きな穴が開いたのだった。


 全員、その威力にポカーンと口を開けて呆けていたが、一瞬遅れて、「「「「「すっげーー!」」」」」と叫んでいた。

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