第42話 レベリング
「ほんまや。しかも1/6の重力やで!」
「あれ?このガラスの向こうの景色ってどっかで見た記憶が……」
「ああ、それな!」
「あ! 私も同じ事思ってた。」
「あれ? 何だっけ? あ!!!! 判った。」
「「あ!」」
「「「チーム佐野助のサイトだ!!」」」
「え? あぁ!!」
「マジか!」
バレてしまった。
まあ、今更だったので、肯定し、大まかな流れを話した。
「マジかぁ……。」
と呟く前田。
それはどっちの意味だろうか? 俺がチーム佐野助だと言う事か、それとも他国や日本の置かれた状況についてか?
そんな事を考えていたら、
「あ、いや、日本がそこまで侵略されてるとは、本当に思ってもみなかったからな。
しかも、良い様に世論を誘導されてたとはな……。無知って怖いな。」
と前田が慌てて捕捉してくれた。
「だな。しかし、もしチーム佐野助が活動せず、そのまま魔物まで出て来てたとしたら、何かヤバかった気がするね。」
と凛太郎も同意する。
「え? ちょっと待って、私達って、中学2年じゃん。
そして再来年には受験なんだけどさ、もしかして、魔物が出現すると、高校受験どころじゃ無くなるんじゃないの?」
とさっちゃんが、ハッとした表情で聞いて来た。
「うん、可能性は大いにあると思ってる。
そもそも、受験とか学校とか言える様な状況じゃ無くなっているかもしれないし。
だからと言って、こんな魔法の話をして、世界中が信じると思う? 無理だよね。
それに、誰彼構わず、助ける気は無いんだよね。
下手に教えたりすると、逆恨みされたり、他国から大事な人を害される事もありうるし。
国民を助ける方法を考えるのは、国の仕事だよ。
俺は一応情報を提供しただけ。ただの中学生だし。」
と答えると、
「「ただの中学生じゃないだろ!!」」と男性陣2人から突っ込まれた。
装備を全員に配り、パーティーを組んで、レベル上げを開始した。
第1階層に入り、双葉の時と同じく、俺がメインでスライムを討伐して行く。
1匹目のスライムを見た時の、全員の興奮具合は凄かった。
「うぉーー、生スライムだーー!」
と前田が騒ぎ、
「「「キャァーー! 可愛いーー!」」」
と女性陣が黄色い声(今でも使うのかな?黄色い声って?)を上げる。
そして、スライムに慣れて来た頃合いを見謀り、順番に1匹ずつ討伐させた。
最初はおっかなびっくりだった女性陣も、短槍で核を破壊し、徐々に慣れていった。
第2階層では、案の定、一見可愛いホーンラビットに目尻を緩める女性陣が、角で突っ込まれ、ギャーー!と叫んでいた。
「だから、油断するなって言ったよな?」
と窘めると、「おのれ……ウサギめ!!!」と大変怒っておられた。
上達し始めたウォーターボールを使い、弱らせて首筋に短槍の一撃で仕留めたりして、徐々に役割分担によるパーティー戦を熟す様になった。
無論、男2名も負けじと奮起し、なかなか良いペースで階層を進んで行く。
しかし、大量に湧いて出るモンスターハウスは、流石に荷が重かった様で、俺が助け船を出しながら、何とかクリア出来たのだった。
こうして、第2階層を終え、全員のレベルは4まで上がったのだった。
「まあ、初回だし、あまり無理すると、気付かぬ内に疲れで動きが鈍って、怪我する事もあるから、今日はここまでにしような。」
「「「「「了解であります!」」」」」
と敬礼する5名。
そして、地球に戻りそのまま朝まで眠るのだった。
◇◇◇◇
朝目覚めると、全員まだ眠ったままだったので、また1人で朝ご飯の準備に取り掛かる。
今朝は、パンとホーンラビットのシチューと、ミノタウロスのローストビーフ、それにサラダだ。
昨日同様に、フライパンを叩いて、全員を叩き起こすと、多少眠そうにしているが、体調は良さそうだった。
「おはよーー。」
「おはー。」
「何か早起きすると、夏休みの気がしないなぁ……」
等とぼやきながらも、全員が集合し、頂きます。
ホーンラビットのシチューも、ミノタウロスのローストビーフも大好評で、朝からお替わりする奴が続出した。
「そうそう、何か不思議ねんけど、今朝は身体が軽いんよ。
レベルアップのお陰なん?」
と愛子ちゃん。
「あ、それ俺も思った。なんか凄く良い感じだよな。」
と凛太郎も同意する。
「ははは、その通りだよ。レベルアップすると、身体の代謝も細胞の活性化もあるから、調子良くなるんだよ。
まあ、燃費と言う面では、悪くなるかもだけどね。」
と答えると、3杯目を食べてる女性陣が、ハッとした顔をしていた。
え? 3杯目って気付いてなかったのか。
「大丈夫。太らないからね。」
と言うと、ホッとした表情になり、またガツガツ食べていた。
「しかし、本当にこのシチューもローストビーフも肉が美味いな。」
と前田が言うので、
「実は、このシチューの肉は、ホーンラビットの肉を使ってるんだよ。
こっちのローストビーフはミノタウロスだな。
昨日のベーコンとかウィンナーは、オークだよ。
魔物の肉って、大抵レベルが高ければ高い程、美味しいんだよ。
理由は、どうやら肉に含まれる魔素の量にあるっぽいんだけどね。
それに、俺らの身体も、魔素を必要としているから、凄く効果が出るんだよ。」
とぶっちゃけると、えらく驚かれたが、逆に喜ばれた。
何本か、ホーンラビットとオークの肉で串焼きを作って食べさせてみると、美味しさで顔が緩んでた。
「ダンジョンって良いな!」
と前田と凛太郎が吠えていた。
「まあ、余談だけど、レベルが上がって来ると、身体をベストな状態に保つ様になるから、ある程度歳とってても、若返り効果があるんだよな。」
と俺が言うと、
「あ!もしかして、アッ君のお母さんもレベル上げてるの? いつ見ても若い頃のままなんだけど?」
とさっちゃんが指摘して来た。
「あ、うん。そうだよ。」
と言うと、俄然女性陣がヤル気を漲らせていた。
それから、昨日同様に、砂浜で魔法の練習を開始する。
魔法属性で2グループに分かれ、火魔法グループは、さっちゃんと前田と愛子ちゃん。
風魔法グループは、なっちゃんと凛太郎。
全員、昨日よりも習得が早く、発動も早くなっていた。
午後からは、3属性目をバラバラに教え、さっちゃんと凛太郎が光魔法を、なっちゃんは聖魔法を練習した。
他のメンバーは、それぞれの魔法の練習をしていた。
あと、武術面では、一応全員に刀の握り方や、振り方等をレクチャーし、剣術の触り部分を教えた。
短槍の使い方も簡単に説明した。
そして、夜、夕食を食べ終わると、また月ダンジョンへとやって来た。
今日も第1階層から始めるのだが、自発的に5人だけで廻らせ、俺はオブザーバーとしてパーティーから抜けておいた。
第一階層開始から直ぐに全員がレベル5に上がり、第2階層のモンスターハウスを難なく終わらせた頃、レベル6まで上がった。
「キャァー! 順調だわ。」
と喜ぶさっちゃんに、
「駄目だよ、浮かれると怪我するから。調子良い時こそ、気を付けないと。」
と前田が窘めていた。
やるじゃん、前田!
そして、第3階層に降りて来たのだが、初めて見る生ゴブリンに、女性陣がドン引きしていた。
「く、臭いわよね?」と。
やはり5人とも人型の魔物を殺すのが、ちょっと苦手っぽかったのだが、1匹やると、吹っ切れたかの様に、蹂躙し始めた。
この5名の順応力は、なかなか素晴らしい……魔力の総量が少ない事を自覚し、出来るだけ刀や短槍で進んでいる。
そして、第3層を5人だけで制覇し、全員がレベル7になったのだった。
「佐々木、今日はここぐらいまでが良いと思うんだ。どうだろうか?」
と凛太郎が聞いて来たので、頷き、地球へと戻ったのだった。
この分なら、明日の夜でギリギリレベル10まで行けるかもしれないな……。
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