第32話 蜂の巣を突いた様な大騒ぎ

 翌朝のニュースやワイドショーはもの凄かった。

 日本国中が、この降って湧いた様な話に響めいていた。


 両親はニヤリと笑いながら、

「おつかれさん。良くやった!!」

 と褒めてくれた。


 首相は夜中の内に閣僚を緊急招集し、架空のストーリーを作り上げて、朝一で発表したらしい。

 一応、自衛隊の特殊部隊による、無血救出作戦に落ち着いたらしい。


「我々日本政府は、これまで何度も根気強く○○○国へと交渉による解決を打診しておりましたが、誠意ある回答は得られず、また拉致被害者の高齢化も考慮し、今回の奪還作戦を超法規的措置として実行しました。

 我々日本国は、国民の皆様1人1人の命を、見捨てたりは致しません。

 平和を愛する日本国ですが、日本国民の命や領土を守るのは当たり前です。

 また、今回の作戦を行った、特殊部隊……チーム佐野助の隊員全員の健闘には、日本国民を代表して心からのお礼を申し上げたい。

 本当に難しい作戦の中、敵も味方も、ただの一人も犠牲者を出す事無く、任務を遂行してくれてありがとう!」

 と締め括った総理の演説は、大きく世論を動かした。


 今まで、日本国憲法の9条さえあれば、日本は安全とか寝言を言っていた新聞もTVもコメンテーターも、過去の発言が足を引っ張り、炎上していた。

 更に、超法規的措置として、自衛隊を動かしたのは、憲法にも法律にも反すると、野党からの非難が集中し、国会が紛糾したが、国民の大多数が、そんな野党の主張の異常さで目覚め、これまた炎上した。

 そして憲法改正の論調が主流となり、日本を守れる憲法に変えようと言う動きになったのだった。


 俺も兄上も

「ふふふ、そんな子供でも当たり前に判る事を、今更だよなぁ……」

 と呆れつつ眺めるのだった。


 この騒ぎは、2ヵ月以上続くのだった。


 あ、そうそう、日本国の領土を不法占拠しているお隣の国だが、今回の作戦と、世論に推されている日本の情勢を鑑みて、もの凄く焦ってらっしゃる。

 今まで、動かなかった日本が、実力行使を行い、しかも敵地を無血で救助と言う無茶を成功させた事で、「次は我が国の不法占拠している島がターゲットなんじゃないか?」と日本に擦り寄る様な行動を起こしている。

 いや~もう、本当に清々しい程の掌の返しっぷりで、大爆笑である。



 ◇◇◇◇



 さて、何とか一部の方を残し、奪還作戦を終えた俺だが、実際の所、これだけで終わらせる気はサラサラ無い。

 ここらで一つ景気付けに、日本国民に迫り来る敵の恐怖をジックリ目の当たりにして、完全に目覚めて貰う予定である。


 蜂の巣を突いて、火を点け、油を注ぐ気満々である。


 まずは手始めに、不法占拠されている島に飛び、夜中の内に、日本国旗を掲揚し、○○領とか書かれた巫山戯た石碑をサックリと取り去った。

 これを3日間連続で行った結果、不法占拠している彼の国は、大騒ぎ。

 政府も国民も、今まで世界各国で根拠の無い主張を繰り返して、自国領土と言っていたのが、嘘だとバレ、大問題へと発展していた。


 そして、ついに4日目には、島に駐留する者全てをパラライズで昏睡させ、縛り上げ、筏に乗せて比較的近い島の岸壁に結んで置いた。

 更に取って返して島に作られた建物やヘリポートを一気に取り除き、日本国旗を掲揚しておいたのだった。

 勿論、無血による奪還である。


 これには、世界中が沸きに沸いた。


 海外のニュースでは、ジャパニーズ・ニンジャ チーム・サノスケと大騒ぎである。

 ニュースに出る度に大爆笑する兄上には、ちょっと困ったが……。



 今までは、日本に対し、無理難題を押しつけて来たり、、集る事しかしてこなかった彼の国だが、ここらで対応が異常なまでに低姿勢となり、顔色を窺う様になってきた。

 まあ、チーム佐野助の行動に焦ったのは、彼の国の政府だけでなく、当の日本国政府もだったのだが、先方はそれを知るべくもなく……。

 そして、これまで丁寧な対応をして来た日本政府も、やっと正しい付き合い方を理解したのか、今までとはひと味もふた味も違う対応を取りだしたのだった。


 そして、未だに何を遣られたのか、方法さえも判らない彼の国は、二度と自国領とは言わなくなり、勿論奪還作戦の実行してこなかった。


 更に焦ったのは、(日本政府と)彼の国だけでは無かった。

 北方の我が国の領土を一方的に略奪したウォッカを愛する国も、艦隊を集結させて、威嚇をし始めたのだが、集結した全艦が、謎の故障によって航行不能となり、トーンダウン。

 ついには、まともな領土問題の交渉のテーブルへと辿り着いたのだった。



 これに日和ったのか、これまで連日の様に我が国の領海内の尖閣諸島辺りで、態とらしい国際法違反を繰り返していた国がなりを潜める。



『手段の判らぬ方法』で、圧倒的な結果を見せつけられる恐怖のもたらす抑止力は、世界に強烈なインパクトを与えた様だった。

 勿論、これは『チーム佐野助』だけではなく、先達の日本人が、世界にキッチリと日本人の気質を示して来た下地在っての事だ。

 だから、あの日本人達が、ギリギリのギリギリまで、交渉による平和的解決に拘ったが、限度を超えた為の実力行使……しかも無血! と世界から支持を受けたのだった。


 さて、日本人を拉致していた件の国だが、日本政府の発表から、一転し、上を下への大騒ぎとなり、現実に拉致して隔離していた筈の人達が消えた事で、大規模な粛正へと発展したらしい。

 一応、残留を決意した人の所には、魔動映像通信装置をコッソリ残して来ているのだが、一時的に何かコンタクトや異変が無かったかの尋問はあったが、1日も経たずに戻って来ていたのでホッとした。

 まあ、これだけで終わらせる気は無いのだ。



 そもそもだが、諸悪の根源は、やはり根元から絶たなければ駄目なのだ。

 そうする事で、残留者82名も粛正を受ける事なく、日本の地を踏める様になるかもしれないからな。




 ふふふ、ここからが、第二幕の始まりだ。

 俺は兄上と練った作戦を開始したのだった。

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