第22話 ファースト・アタック
ここ数日は、いつもの訓練に座学の時間を増やし、全員に魔物やダンジョンについてのレクチャーを行った。
魔物別の倒し方や特性と、奴らの攻撃方法や注意事項等を教えた。
また、父上と兄上には、メインウェポンとして刀を、母上には、短槍を持って貰う事になっている。
母上の合気道は、実際にはダンジョンだと余り役に立たない。
接近戦で、敵の攻撃を躱したりするのには役だっても、元々敵を『決定的』に撃破する為の物ではないからである。
よって、短槍の特訓を兄上の剣術と一緒に行っていた。
父上には、暫く使って無いと言う佐々木流斬刀術を復習して貰っており、佐々木流斬刀術の訓練を再開した当初は、
「筋肉痛がヤバい!」
と毎朝起き上がるのが大変だったけど、今では動きもソコソコ様になってき、毎朝の激痛も無いそうだ。
ちなみに、全員のヤル気度を上げる為、俺は月ダンジョンのドロップ品のホーンラビットや、オークの肉を使い、肉串やステーキを母上に作って貰い、全員で食べた。
その効果は覿面で、
「アッ君!! 何、この美味しいお肉は!」
と元々大きい目を更に見開く母上や、
「美味しいよーー!!」
と叫ぶ兄上、
「うっめーー! これA5ランクの和牛も目じゃないぞ!」
と驚く父上達に、これらが月ダンジョンで手に入る事を伝えると、三者三様にヤル気を漲らせていた。
「父上、これで驚いていたら、オーガやミノタウロスの肉を食べると、昇天しちゃいますよ?」
と言うと更に「うぉーー!」と雄叫びを上げていた。
◇◇◇◇
そして、今日は金曜。
今夜、いよいよ月ダンジョンに行く事になる。
朝から家族全員がソワソワしている。
父上は、今夜は残業せずに帰宅すると宣言して、仕事へ出て行った。
母上は、
「アッ君、やっぱりお弁当とかおやつとか用意した方が良いのかしら?」
と言っていたが、そもそも良く判らないが、月に行くのは精神体なので、必要は無い筈である。
俺自身も、休憩で水以外は取った記憶が無いので、不要と伝えたら、何故かご不満なご様子だった。
ピクニック気分で行くと、大事故に繋がらないとも限らないので、若干不安を感じてしまう。
呉々もお遊びではないので、気を引き締めて欲しい所だ。
そして、時間は過ぎて夕食時となり、母上の作ってくれた、オークのトンカツで楽しい夕食の一時を過ごした。
話題はもっぱら、月ダンジョンの事で、外の景色は見られるのか? とか、重力が本当に1/6で軽いのか? とか、外には行けるのか? とかだった。
「外の景色は見えるけど、外は空気無いから、出られませんし、出ると危ないですよ。
ダンジョンの入り口の外は、重力が1/6で普通に歩くと危ないですね。
ああ、景色と言っても、月の裏側なんで、地球は見えませんよ。」
と答えると、若干残念そうだった。
うん、確かに俺も地球は見てみたかったよ。
俺が居ない間に人類が月に行っていたのにも驚いたけど、それでも月に行った人類の数少ない人の1人になれたのは、ちょっと嬉しかった。
家族も全員同じ気持ちらしく、そのワクワクが顔に表れていた。
「では、手筈通りにこれから、月ダンジョンに向かうので、このブレスレットを腕に嵌めて、寝て下さい。
何か質問事項あれば、今の内に。」
と家族を見渡すが、何も質問は無いらしい。
そして、各自がベッドに潜り込み、最初に俺が月ダンジョンの入り口前の部屋へと飛び、続けて全員を転送した。
「「うぉーー!」」
「きゃっ!」
と騒々しい叫び声を上げながら、父上と兄上が登場し、母上は可愛らしい声と共に登場した。
「あ、重力軽いから、注意してくだ……」
と言う俺の注意の言葉の前に父上と兄上が思いっきり天井に頭をぶつけてた。
「だから、あれだけ先に言ったのに……」
と俺が言うと、父上は頭をさすりながら、ハハハと苦笑いしてた。
兄上は、咄嗟に頭を庇ったらしく、手を擦っていた。
早速、2人に『ライト・ヒール』を掛けてやり、装備を付けたりと準備を開始したのだった。
「呉々も言いますが、咄嗟に飛び出したり、無闇に突っ込んだりしないで下さいね。
第1階層はスライムと言う魔物ばかりですが、侮ると、痛い目に遭いますから。
一応、罠は第1階層には無い筈ですが、下手な罠に引っかかると最下層に飛ばされたりしますから。
今の状況だと、最下層どころか、3階層でさえ危ないですからね?」
と念入りに釘を刺しつつ、ダンジョンの入り口から月ダンジョンに入る。
いよいよ、アタック開始である。
「あ、本当に地球と同じ重力なんだな。」
とダンジョンに入った途端に重く感じる身体を動かしつつ、父上が呟く。
「はい。これなら、地上と同じ動きが出来るので、指示を守って慎重に行けば、怪我無く行ける筈です。
安全第一で行きましょう!」
「アッ君、頼りにしてるわよ!」
「あつし、宜しくな!」
軽く、身体をほぐしつつ、俺を先頭に父上、兄上、母上の順で前進すると、
「あ、あの角を曲がった直ぐに、スライムが1匹居ます。
前に教えた通り、スライムは核を壊せば、殺せます。
相手が攻撃をして来る前にやっつけて下さい。
最初は父上から、順に1匹ずつ行きましょう。」
と俺が角の近くまで行き、スライムをおびき出して来て、準備万端で待ち構えていた父上が、サクッと核を斬って粒子に変えた。
「ほぅ~、本当に粒子に変わって消えて行くのか。
面白いもんだな……。」
と父上が呟く。
その後も、順調に兄上、母上とスライムを撃破して行き、6巡目辺りに差し掛かる頃、出て来るスライムが、3匹に増えた。
そして、その3匹も問題なく、連携してやっつけ、先へと進んで行く。
ダンジョンに来て、1時間ぐらい過ぎた頃、
「どうですか? 疲れてませんか?
少しだけ休憩入れましょうかね。
緊張の連続だと、気付かぬ内に疲れが溜まったりしますから。」
と言って、全員に水の入ったコップを配り休憩を取る事にした。
「ダンジョンって不思議だよね。洞窟なのに、ちゃんと道が見えるくらいに明るいし。
やっつけた魔物は、光の粒子になって消えて行くし。」
と兄上が水を飲みながら呟いている。
「そうよね。しかも、やっつけた魔物はまた時間が経てば、現れて来るんでしょ?
攻撃さえして来なければ、スライムって、何か可愛い気がするんだけどね。」
と母上。
いやいや、スライムって可愛いかな? 確かにゼリー?とか言う物に似て、プルプルはしてるけど、可愛いのか?
と内心突っ込む俺を余所に、母上はお気楽な感想をブツブツ言っていた。
休憩を終え、更に先へと進み、例の隠し部屋を全員で攻略し、宝箱から、装備一式が出て来た。
「ほう!これが宝箱か!!
へぇ~、不思議だな。これって毎回出て来るのか?」
と父上が目を輝かせていた。
「まあ、普通のダンジョンだと、当たり外れもあるし、宝箱型の罠の可能性もあるから、注意が必要なんですがね。
ここは、神様達が俺達に配慮してくれているので、地球では手に入らない、装備を出してくれているんだと思います。」
と言うと、父上、母上、兄上が、上を向いて手を合わせ、お礼を言っていた。
流石、こう言う反応をする所は、俺の愛する家族だな。
そして、少しモンスターハウスで休憩を入れて、先へと進むのだった。
休憩を適度に挟んだものの、全員が危なげない戦いを続け、それから約2時間強で、第1階層の終点に到着し、全員が無事にレベル2に上がったのだった。
「「「おおお!(きゃぁー)レベルアップした!」」」
と3人ほぼ同時にレベルアップの知らせが頭に響いたらしく、声を上げていた。
それぞれのステータスは、下記の通り。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:佐々木誠二
年齢:32歳
種別:人族 Lv:2
職業:---
状態:正常
HP:60/60
MP:33/33
筋力:65
俊敏:54
頭脳:92
運 :66
武術:佐々木流斬刀術
魔法:火 初級
風 初級
闇 初級
ギフト:ステータス
スキル:魔力感知
魔力操作
身体強化
称号:
加護:
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:佐々木奈津子
年齢:29歳
種別:人族 Lv:2
職業:---
状態:正常
HP:50/50
MP:40/40
筋力:48
俊敏:36
頭脳:87
運 :75
武術:合気道 佐々木流槍術
魔法:水 初級
風 初級
土 初級
光 初級
聖 初級
ギフト:ステータス
スキル:魔力感知
魔力視
魔力操作
身体強化
称号:古の血をひく者
加護:
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:佐々木清士
年齢:7歳
種別:人族 Lv:2
職業:---
状態:正常
HP:43/43
MP:36/36
筋力:29
俊敏:26
頭脳:48
運 :32
武術:
魔法:火 初級
水 初級
風 初級
ギフト:ステータス
スキル:魔力感知
魔力操作
身体強化
称号:
加護:
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして、第1階層を終えたので、階段を降り、第2階層を一度見るだけ見せて、今夜のアタックは終了したのだった。
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