第6話 ステータス発動

 そして、待ちに待ったこの日、11月16日、俺は4歳の誕生日を迎えた。

 兄上は、既に小学生となっていて、俺の英才教育の結果、秀才と呼ばれているらしい。

 物覚えが良かったとは言え、本人の努力の結果であるので、そう言う努力が出来る才能に恵まれたのは、やはり清兄ぃの血筋のお陰だろう。

 仮に俺の血筋では、悪ガキに育つ事だけは、自信があるが。


 そうそう、この4歳の誕生日を、何故心待ちにしていたかと言うと、カサンドラスでは、4歳になると、制限が外れ、一定条件を満たせば、自己の性能を数値や文字に出来る『ステータス』が解禁されるのである。

 まあ、転生したこの世界でそれが可能かどうかは、微妙であるが、このステータスが使えるのと使えないのとでは、今後の成長にかなりの変化があるのだ。

 そして、俺の生まれた午前10時37分が過ぎた。


『ステータス』と心の中で呟くと、頭の中で『ピロン♪』と言う聞き覚えのある音が流れた後、脳裏に久しぶりの画面が浮かんだのだった。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 名前:佐々木徳士(佐々木徳治郎)

 年齢:4歳(30歳)

 種別:人族  Lv:1

 職業:---(勇者※)

 状態:正常

 HP:50/50(1261※)

 MP:152/152(2085※)

 筋力:18(1527※)

 俊敏:21(1319※)

 頭脳:158(2368※)

 運 :84(1008※)

 武術:佐々木流斬刀術 アンドレフ体術

 魔法:火 初級(Ex級※)

    水 初級(Ex級※)

    風 初級(Ex級※)

    土 初級(Ex級※)

    光 初級(Ex級※)

    闇 初級(Ex級※)

    聖 初級(Ex級※)

    空 初級(Ex級※)

 ギフト:言語理解

     アイテムボックス※

     経験値倍増※

     魔力回復倍増※

     体力回復倍増※

     物理攻撃軽減※

     魔法攻撃軽減※

     ワールドライブラリ※

 スキル:鑑定※

     隠密※

     気配感知※

     魔力感知

     魔力操作

     身体強化

     並列処理※

     思考加速※

     錬金※

     鍛冶※

     テイム※

 称号:神風の勇者

    異世界の神に愛されし者

    偉業を達成した者

 加護:カサンドラス神の加護※

 備考: ※ 制限中

    ( )隠匿

    

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 何と!驚いた事に、転生前のステータスの大部分を継承しているらしい。

 が、※印が付いていて、グレー表示になっている物が幾つもあり、制限が掛かっていると言う事らしい。

 ふむふむ、つまりレベルか、年齢かその他の条件が揃うと、制限が外れて利用出来ると考えて良いんだろうか?


 だが、ここでふと気が付いたのが、レベルアップに関してである。

 通常、レベルアップは、コツコツとした通常訓練や戦闘による経験値が上限に達すると、レベルアップとなる。

 カサンドラスでは、訓練の他に、魔物の討伐等によって、経験値を稼いでレベルアップをしていた。

 だが、ここは日本、魔物は存在しない。ついでに言えば、ダンジョンも存在しない。

 強力な魔物を倒す事で、多くの経験値を得られるのだが、この世界ではそれが出来ないと言う事だろう。


 じゃあ、山にでも入って、猪や熊でも狩る?と一瞬考えたが、そんな程度だと大した経験値は得られないだろうな。

 カサンドラスの魔物でない普通の熊でさえ、こちらの世界とは全くもって戦闘力が違う。

 カサンドラスの熊は、こちらの熊の3倍くらいの強さがあったのだ。


 うーん、これは早々に詰んでないか? と内心嘆くが、とにかく出来る事をコツコツ努力するしか無いと、思い直した。

 せめて、制限の解除条件が判ればなぁ・・・。

 もしくは、ギフトである、ワールドライブラリが利用可能となるだけで、かなり状況が好転する。


 この『ワールドライブラリ』と言うギフトだが、これは勇者として召喚される際に、女神によって送られる勇者専用のギフトの1つである。

 ワールドライブラリと言う、世の全ての理が記載されている、膨大な量の書庫から、必要な情報を抜粋し、脳裏に知らせてくれるギフトであった。

 これのお陰で、異世界からやって来た者でも、最短で戦闘力を高めたり、生きて行くのに必要な情報を得られるのである。


 当然、それにはこの制限中のスキルやギフトの解除条件も含まれるであろう・・・と言う事だ。



 あと、1つ不思議と言えば不思議だったのが、この『ステータス』

 何故か、兄上は発動しなかったのであった。

 魔力があって、魔力操作まで出来て、更に身体強化まで使えて、年齢が4歳を超えていても、発動しないとは、驚きであった。

 これも『ワールドライブラリ』さえ制限が外れてしまえば、解決の糸口が見つかる筈なのだがな。

 と言う事で、兄上の為もの早く『ワールドライブラリ』が使える様にならないと・・・と気ばかり焦るのであった。



 話は変わるが、来年の4月から兄上の通った幼稚園へ通う事になっている。

 実際の所、俺自身は幼稚園とやらに興味が無く、全く行きたいとは思っていない。

 話によると、別に義務教育ではないらしいので、出来ればその無駄な時間を図書館だとか、公園での鍛錬とかに当てたいぐらいである。

 流石にこの歳で、幼児に紛れてお遊戯とかは勘弁して欲しいのだが・・・。


 と言う事で、来年の幼稚園の事を思うと、結構・・・いやかなり憂鬱な気分である。

 出来るなら、小学校もすっ飛ばして、中学校から始めたいぐらいなのだがな。


 ちなみに、既に公園デビューと言う物は済ませてある。

 綺麗な公園で昔懐かしい遊具を発見した時は、懐かしさとか思い出が蘇り、その後、訓練代わりに身体強化を使いまくって走り廻ったり、木に登ったりして遊んだ。

 だが、これはちょっとやり過ぎだったらしく、他の子の母上からはかなり白い目で見られ、陰口で『野生児』と言われてしまっていた。

 まあ、他の子供らにはウケが良かったのだがな。

 どうやら、最近の子供は、俺の子供の頃の様には遊ばないらしい。

 理由は『危ないから』だとか・・・いやいや、危なさを知ってこそ成長するってもんだろう? と反論したいのだが、何でも危険な物は子供の廻りから排除して廻るのが正しいとされているとは、一体何処のバカが音頭を取っているのやら。

 きっと、子供の頃に、まともに遊ばなかった、頭でっかちの奴が幅を利かせているんだろうな・・・と思ったものだ。


 そんな事もあって、同世代の幼児達が集まる幼稚園が、更に窮屈で無駄な時間に感じてしまうのであった。

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