第8話 ヤマトタケルの最期
「ミヤズ姫、俺は東国遠征を果たした事を、天皇に報告しなければいけない」
「わかりました。貴方様のお帰りは待っています」
「ああ、必ずここに戻ってくる。だから、それまでこの剣は預かっていてくれ!」
なんという事でしょうか! ヤマトタケル様は幾多の戦いを共にして、ピンチを切り抜けてきた、もはや愛剣ともいえる草薙の剣をミヤズ姫様に渡したのです。
「この剣は受け取れません」
勿論、この申し出はミヤズ姫様にとって簡単に飲み込めないものでした。
「俺はもうこの剣がなくても大丈夫だ! 道中の戦いでかなりレベルアップもした。素手で伊吹山の邪神を倒してみせる!」
「しかし……貴方様の身になにかあったら」
「この剣をここに置いていくのは、必ずここに戻ってくるという誓いでもある。だから、ミヤズ姫が持っていてくれ」
「……わかりました」
こうして、ミヤズ姫様は渋々、ヤマトタケル様の申し出を飲み込み、草薙の剣を預かる事にしたのです。
さて、都に帰る前に、岐阜県と滋賀県の県境にある伊吹山へと、ヤマトタケル様は丸腰で向かって行きます。
草薙の剣を自ら手放すなんて、少々自惚れているような気がしなくもないのですが、果たしてヤマトタケル様は無事、都に帰れるのでしょうか?
尾張の国(愛知県)から美濃の国(岐阜県)にある伊吹山へとやってきました。
この山には酔っぱらい幼女で有名な伊吹萃香……じゃなくて、恐ろしい邪神が住んでいるようです。
幾多の戦いに勝利しレベルアップしたヤマトタケル様なら、草薙の剣が無くても勝てそうですが、少し不安ですね。
早速ヤマトタケル様は伊吹山へと足を踏み入れました。私達も後に続きましょう。
おや、山に入ってすぐ、白くて大きなイノシシが現れました。勿論、ただのイノシシではありません。
強力な霊気を放っています。
「む! あれは、伊吹山に住む邪神の使いに違いない。ここは、脅かして追っ払ってやろう!」
ヤマトタケル様はイノシシの向かって大きな声を出して脅かしましたね。
しかし、イノシシはビックリするどころが身じろぎ一つしません。
おや、空から何か降ってきましたね。雨でしょうか? いや、違います! 突然、
しかも、かなり激しいです!
我々、神話の旅人はこの世界の現象に干渉されないので平気ですが、雹は激しさを増していき、ヤマトタケル様の体を激しく打ちつけます。
「うわあああああああ!」
これには、歴戦の勇者であるヤマトタケル様も悲鳴を上げる事しか出来ません。
「ふん。小僧が、我を素手で討ちとろうなど百年早いわ!」
そうイノシシが言いました。
あのイノシシは使いではなく、邪神そのものだったようです。どうやらヤマトタケル様が大声を出して、威嚇した事で怒りをかってしまったのでしょう
雹に激しく打たれたヤマトタケル様はただ逃げるしか出来ず、山を降りていきました。
なんとか山を降りたヤマトタケル様が池の畔で休んでいると、冷静さが戻ってきたようです。
「どうやら俺は、伊吹山の神を見くびっていたようだ……」
自分の自惚れを反省しつつ、立ち上がり、歩き出そうとした時です。
「おかしい、身体が思うように動かない」
どうやら伊吹山の神の怒りを買ったせいで、祟を受けてしまったようです。
今まで快活だった足取りは急に重くなり、おじいちゃんのように杖をつかないと歩けない程、弱体化してしまいました。
「なんとかして、大和の地へ……故郷へ帰らなければ」
それでも、ヤマトタケル様は大和の地への旅を続けます。
弱体化してしまいましたが、無事故郷へ帰る事が出来るのでしょうか?
岐阜県を南下し三重県へと入りました。すぐに疲れてしまう病気の身体を引っ張りながら、大和の地への旅を続けました。
そして、なんとか鈴鹿8耐で有名な鈴鹿サーキットのある、鈴鹿市までやってきました。
もうすぐ故郷である大和の地がある奈良県です。さあ、ヤマトタケル様、あと少しですよ!
「俺は、もう、ダメだ……これ以上動けない……ああ、美しい故郷が懐かしい」
そんな、諦めないでください!
『乙女の床に、置いてきた我が太刀よ、あの太刀があれば』
急に
そして、すぐ、日本の勇者、ヤマトタケル様は静かに息を引き取りました。
どうやら、ヤマトタケル様と私達の旅路は、大和の地を目の前にして終わってしまったようです。
おや、ヤマトタケル様の亡骸が急に輝き始めました! 一体何が起きるのでしょうか!?
なんと、ヤマトタケル様は白鳥の姿となりました。そして、故郷の方へと飛び立っていきました。
強い望郷の想いが、彼を白鳥へと変えたのかもしれません。
さて、当初は神武天皇までの予定だった旅も、少し長くなってしまいましたね。
そろそろ現代に戻りましょうか……おや、新たな神話の扉が開きました。これは一体どういう事でしょうか?
少し中を覗いて見ましょう。
「安徳天皇、海の底には竜宮城があります。共に参りましょう」
安徳天皇とは第八十一第天皇で、二歳にも満たない幼さで天皇に即位しました。
そして幼いにもかかわらず源平合戦に巻き込まれ、その最後は祖母と共に壇ノ浦にて入水するという最後を迎えた人物です。
おや、安徳天皇の側にあるのは、草薙の剣じゃないですか!? なぜ、船の上にあるのでしょうか?
どうやら、新しい扉の先は源平合戦、真っ只中の日本のようです。
神話の時代というよりも現代に近い所ですが、何故その扉が開いたのでしょうか?
もしかしたら、草薙の剣が呼んだのかもしれません。
それでは、源平合戦の最中の日本に行きましょう!
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